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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ラブメール

作者: 片腹02

閲覧ありがとうございます。

お楽しみいただけるとうれしいです。

「またか」

「また?」

 宛名のない封筒。親友は郵便受けから取り出したそれを中身も見ずにゴミ箱に入れた。

「何なに? 中身確認しなくても良いの?」

「しなくても良いよ。中身なんてわかりきってる」

 彼は素っ気なく言うと少し迷ったように視線を左右させると口を開いた。

「俺ね、ストーカーされてるの」

 つい、一年ほど前からだ。親友は宛名のない封筒を週に一度、決まった曜日に送られているらしい。

 初め、不審に思いつつも確認したところ、数枚の隠し撮り写真が封入されていた。

 気味が悪いと捨てたが翌週も続き、警察に相談したが「実害がないと調査はできない」と頼りにならず、今に至る。

 最初こそは気持ち悪くてどうしようもなかったが、最近では警察が言うように隠し撮りが送られてくるだけで何の被害もないからと、ただただ封筒を確認もせず捨てるだけの作業をしていると苦笑しながら説明をうけた。

 話を聞いて何故今まで隠していたのだだとか、相談してくれれば力になったのにだとかいろいろ言いたいことはある。しかし彼の心底どうでも良いような、明らかに無理をしている気配のない表情に僕は何と言えば良いのかわからなくなった。

 迷ったあげく、犯人を捕まえてやりたいとは思わないのか、と問えば彼は即座に首を横に振る。

「相手に興味ないし、来月引っ越すつもりなんだ」

 だから変な気を回さないで欲しいとお願いされ、僕は頷くしかなかった。

「分かったよ。余計な事は絶対にしない」

「そうしてくれ。お前に危険が及ぶかもしれないしさ」

「でも、もしなんかあったら直ぐ僕に相談してよ。今まで何も知らなかった事に凄いショック受けたから」

「あー、うん、それはごめん……」

「分かればよろしい!」

 少し安心してほっと息を吐いた。これで何かあれば親友は僕に相談してくるはずだ。

「それにしても引っ越しか。何処に引っ越すの?」

「今より大学に近いとこ。こないだ不動産屋にいったら良いとこあってさ」

「今めちゃくちゃ学校から遠いもんね」

「すっげー不便だからある意味ストーカーに感謝だわ」

 冗談を言う親友に呆れながら僕は思考する。そうか、

引っ越すのか。

「もしよかったらなんだけど、引っ越すとき手伝おうか?」

「まじか! 実は引っ越すとき声かけようと思ってたんだ!」

 有り難い、と嬉しそうに返され僕も嬉しくなった。

 ―――良かった! これでまた手紙が送れる!




***

「もしよかったらなんだけど、引っ越すとき手伝おうか?」

 そう微笑む目の前の存在に俺はストーカーまがいのことをされている。

 一年前から突如送られてきた隠し撮りの写真。初めこそは気持ちが悪かったが夜道をつけ回すようなことや写真以外のおかしな贈り物をよこすような事がなかった為、気にしなくなっていった。

 送りつけられた写真を見て「今日は写りが良いな」だとか「この服、実は似合っていなかったのでは?」だとか考える余裕すらできてきた。むしろ眺めて楽しんでいる。

 そんなある日、毎週届く写真を確認してふと、違和感を覚えた。

 ここ一ヶ月、届いた写真を引っ張りだし(もし何かあったとき証拠にしようとおもったのだ)、一枚一枚確認する。何枚も何枚もある写真には友人が写り込んでいるものが当然あったのだが一人だけ写り込んでいない人物がいることに気がついたのだ。

 そう、目の前の存在。親友であるこの男である。

 もしかすると彼が送り主なのではないか。疑惑が湧いて止まらない。

 彼が犯人だとすると何故、どうしてこんなことをするのか想像することができなかった。

 一番信用している相手であるからこそ信じがたい。これは自分の悪い妄想だと思考を消してしまいたいと何度も試みたが、一度そう仮定してしまったものが消えることはひどく困難だ。

 なんとか親友が犯人ではないという証拠が欲しくて写真を再び見直すも、彼の姿は見当たらない。だが一点、あることに気がついた。

 親友との待ち合わせをしている時の写真だけ妙にしゃれ込み、妙に表情が緩んでいるように見えるのだ。

 他の友人との写真を比べると明らかに表情が違う。親友という欲目があったとしてもこの差はおかしい。更に少し前まで付き合っていた彼女との写真と比べてみても断然、親友を待つ自分の姿が楽しそうで、嬉しそうで、幸せそうだった。

 親友を待つ間、やりとりをしているだろう携帯を見て優しく微笑む自分や待ち合わせの時間が近づきそわそわし始め髪を気にする自分。まるで初恋に浮かれる少年のようではないか!

 そうして俺は気がついた。気がついてしまった。自分は親友に恋をしているのだと、愛しているのだと。

 ストーカーに何の興味もなかったが、途端、湧き出る。自覚していなかった感情を抑えることができなかったのだ。

 どうにかして彼を手に入れたい。手に入れなくてはならない。

 ストーカーの正体が彼であれば良い。証明でき次第、逃げられないように雁字搦めにして囲ってしまいたい。無意識に口角があがる。さぞかし今の自分は悪ごい表情をしているのだろう。頭中で自分を冷笑した。

 さあ、彼を捕まえる為にまずは証明をしなくては。

 こうして早速俺は親友を家に誘ったのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ぜひ続きをお願いします..!!! あと、なろうよりもムーンライトに掲載した方が読んでくれる方も増えるし個人的にもブックマークに追加したいので検討して頂ければ幸いです
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