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【128】隊長、馬術代表確定する

 体力測定に合格した隊員候補たちが所属していた各部隊に招集命令を出したり、招集後の予定を立てたりなど、慌ただしく過ごしていると、陛下よりわたしに出頭命令が下された。

 陛下に個人的に呼び出される心当たりがない。だが陛下より出頭命令が下ったのだから、行かないという選択肢はない。

 だがまだ隊員が揃っていないので、キース中将の元を離れるのはちょっと……。


「理由はなんでしょうか」


 命令書をキース中将に提出し、こういった事情で抜けますと報告中。


「馬術の代表選手になったからだろう」

「ああ……それですか」


 国の代表選手になると、陛下からお言葉とかあるもんね。

 キース中将の身辺警護はエサイアスに ―― 第一副官リーツマン中尉は、大学卒業後に軍の採用試験を受けて合格した、実戦には投入できないタイプの副官。

 もちろん最低限の銃器取り扱いや、護身術は習っているが、それほど得意ではない。なので士官学校同期で、強さはわたしも知っているエサイアスに護衛を任せ、わたしはキース中将からの指示で、副官のスタルッカ(ウィルバシー)と共に騎馬で王宮へ。

 もともと騎馬で向かうよう指示されていたのだが、同行者については触れていない。王宮までの道も、王宮内も案内なしでも移動できるので単身で行ける……言いかけたのだが、単独行動は避けるよう言われていたことを思い出し黙って指示に従う。

 もともと階級的に黙って従うしかないんですけれどね!

 わたしの護衛を兼ねてスタルッカ(ウィルバシー)を伴ったのだが、さすが元貴族にして元攻略対象、馬に乗っている姿は颯爽としていて格好良い。

 軍曹がこんなに華麗に軍馬に乗っている姿って見たことない……まあ軍曹に軍馬は支給されないので、当たり前なんだが。今回は特別である。


「隊長、さすが国家の代表に選ばれるだけあって、お上手ですね」


 貴族の男は基本乗馬が好き ―― 久しぶりの乗馬にスタルッカ(ウィルバシー)の表情もとても楽しげだ。


「元貴族のスタルッカ(ウィルバシー)にそう言ってもらえるとは、わたしも中々なものだな」


 最近スタルッカ(ウィルバシー)も打ち解けてきてくれて、時と場所を弁えつつ話し掛けてくるようになった。

 音声の問題上(ボイスOFF)、話しかけて欲しくはないのだが、部下とのコミュニケーションは大事。

 これから二百名の隊員と、三名ほど派遣される事務員をスタルッカ(ウィルバシー)と共に管理しなくてはならない。さらにボイスOFF(ウィルバシー)は、敵スパイとの接触、誘導という重要な任務も与えられているので ―― 王宮までの道中、気軽に会話をし相互理解とまではいかなくても、風通しの良い部下上司関係を築かなくては……でも声は相変わらず生理的に嫌いです。それ以外は完璧なんだけどねー。

 馬を駆り大通りを抜け王宮へ。

 指示通り騎兵隊舎の方へと入り下馬する。


「クローヴィス大尉!」

「シベリウス少佐」


 下車場には出迎えのシベリウス少佐がいた。

 相変わらず声デカいなー。身長も高いし顔も厳ついし、でも良い人だよな。なんか熱い人だけど。

 そのシベリウス少佐の案内で陛下の元へ。

 通されたのは応接室で、室内には陛下とヴェルナー大佐、元同僚副官で現在侍従武官のヘルツェンバイン大佐と、第一副官となったオースルンド少佐がいた。


「プリンシラ……ではなくスタルッカ(ウィルバシー)も入れ」


 ヴェルナー大佐の指示でスタルッカ(ウィルバシー)が入室し、シベリウス少佐はもともと入室するよう指示を出されていたようなので、わたしを含め三人揃って部屋へ。

 そして陛下直々にオリュンポス(オリンピック)の馬術競技は女性も参加できることになったので、順位を元に戻しわたしを代表にするよと ―― シベリウス少佐は代表に選ばれていたので、出場規定が変わったことも知っており、


「やっと変更になり、安堵いたしました」


 代表変更を今か今かと待っていたのだそうだ。


「騒がしかったので、通達が後回しになってしまい気を揉ませたようだなシベリウス」

「はい!」


 素直な返事である。


「シベリウス」

「はい、ヴェルナー隊長」

「お前は補欠だ。今まで通り技術を磨け」

「はい!」


 相変わらず、声がデカい。

 わたしは陛下より代表任命証を手渡され、馬術の国代表となった。


「シベリウス、お前は下がれ」

「悪いなシベリウス。久しぶりにかつての副官と話をしたくてね」

「失礼いたします」


 シベリウス少佐は補欠の任命証を手に、応接室をあとにした。


「クローヴィス。座ってくれ」


 陛下の向かいの一人がけソファーに座るよう指示を出してきたのですが、なんでわたしが座るのですか? わたし、大尉! 大尉ですよ!

 

「座れ、クローヴィス」


 ヴェルナー大佐にそう言われたので、仕方なしに座りますとも。

 もちろん女性らしい座り方じゃなくて、軍人座りですよ。

 ……で、正面からまじまじと見ると、陛下は本当にお顔が整っておられます。

 乙女ゲームの攻略対象の一人なのだから、整っていて当然ですが。整っているだけではなく華があり、これぞ王族って感じですわー。


「クローヴィス」

「はい、陛下。なんでございましょう?」

「是非とも初の女性代表選手として頑張ってくれ」

「はい」


 ”あれ男だろ”という声が観客席から聞こえてきそうですが、頑張って参ります。


「ロスカネフ王国は近隣諸国に比べて、女性の社会進出が進んでいる。もちろん、まだまだの部分も多いが、これから更に社会を変えていきたい。そのためにも、クローヴィスにはオリュンポス(オリンピック)にて結果を残して欲しい。おそらく今回の大会で女性がメダル、若しくは入賞を果たせなければ、次回からは女性枠がなくなってしまうであろう。そういった意味でも、クローヴィスの責任は重大だ」


 出場するからには優勝を目指しますが ―― 国の代表じゃなくて、女性代表になってる! 見た目が男性なわたしに! でも陛下が仰る通り、首位争いに絡めないと、グロリア女王の肝いりの枠が消失してしまいそう。


「このクローヴィス、国の代表として、表彰台の最も高い場所を必ずや取ってみせます!」


 大言壮語ですが、勢いも必要だよね! 負けると思って行くヤツいないだろう!

 でも馬術は馬が大事だからね。馬と息が合わないとどうにも。今まで馬と合わなかったことはないけどさー。


「射撃も金メダルを目指してくれるか?」

「はい! 二冠を手に、ロスカネフに凱旋帰国いたします!」


 まだ射撃の代表選手になっていませんがね! 気が早いにも程がある……ですが、二種目で代表になったほうが、メダル争いに絡める機会が増えるので、とにかく代表の座をもぎ取らねば!


「期待している、クローヴィス」

「はい!」

「……リリエンタールの言った通りだな」


 いきなりなんでしょう? 陛下。

 あの……閣下がなにを仰ったのでしょう。

 陛下の表情が若干憂いを帯び ――


「クローヴィスは我が国の即位に関する法律について、詳しく知っているか?」

「ほとんど存じ上げておりません」


 馬術の話題から、唐突に話題が飛んだ! 即位とか庶民のわたしには、無関係の極というもの。

 王族の誰かが即位するんだろうなーくらいしか。


「我が国の即位に関する法律は、十三年ほど前に変更があった。それまでは、男児にしか継承権はなかったが、変更後は国王の第一子が性別にかかわらず最優先されることとなった。この法律により、わたしは王位継承権が姪であるヴィクトリアよりも低くなったのだ」


 そう言えば、そういう法律ありましたね。十三年前に変更されたんですか。……済みません、全く興味がなくて。


「この法律変更は、兄ノルトークスが娘ヴィクトリアを大切に思い変えたものだった」


 ノルトークス王ですね。

 任官式の際に拝見いたしました。陛下や先代女王とよく似た、黒髪と黒い瞳の持ち主で、やはり容姿が整っていらっしゃった。


「兄はルース皇后となった叔母のことを憂いていた。男児を産めずに追い詰められ、怪しげな男にまで縋るようになってしまったことについて。王族の女として生を受けたからには、嫁ぎ先で男児を産むのは当然の責務……その一言で片付けていいものか? そう兄は考えていた。その兄は二十二歳でヴィクトリアという娘の父親になった。この生まれたばかりの娘もいずれ嫁ぎ、その先で叔母と同じように、男児が産めなかったら追い詰められるのか? 兄は出産と引き替えに命を落とした王妃が眠る柩の側で考え、娘を嫁がせぬ方向で守ることにした。そう、女児の即位に向けて動き出したのだ」


 先代女王と先々代父王は仲よくなかったと聞いていたし、何回か二人が一緒にいるところを見たことはあるが、やっぱり噂通りっぽい感じがしたのだが、父親は娘のことを大事に思っていたようだ……伝わらなかったのか。それはそれで切ないなあ。

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