第一話 新世界の神になりました:前編
俺、小鳥遊開士が、フェイト・ウィアートルとして異世界に転生してから、十五年が経った。
……うん、転生してた。やっぱり、あの後俺は死んでしまったらしい。
ロマン溢れる、剣と魔法と能力の世界に、公爵家次男として生まれたのだ。
ちなみに、この世界は一応中世ヨーロッパを基にしているのだと思うんだけど、ところどころ現代の地球にも匹敵、或いは上回っている部分がある。だから、この歳になるまで、あまり不自由せずに暮らせた。
仕事中は格好いいが、基本的には脳筋で親バカな父、エリオット・ウィアートル。
おっとりしているがキレると怖い、見た目美少女な母、エミリエット・ウィアートル。
苦労人で常識人な優しい兄、アルフォンス・ウィアートル。
仕事できそうな綺麗系の美人のくせに、すぐに手が出る暴力魔な姉、ユーフェミア・ウィアートル。
使用人のセヴァスチャンやミリー。
そんな、暖かくも面倒臭い家族たちに囲まれて、今まで過ごしてきたのだ。
そして、俺は明日この家を出る。
勿論、捨てられるって言うわけじゃないぞ?
我が家の伝統で、子供のうち一人は旅に出ないといけないんだ。なんでも、守るべき民達を身近で見ておけってことらしい。
そして、このルールが貴族の面倒臭い役目から逃げるいい口実になったので、15歳、この世界での成人年齢に達した俺が行くことになったのだ。
内政チートやら現代知識チートやらを元中学生ができるわけないしな。
残る可能性である、俺TUEEEEをしようかなと思っている。
それで、その俺TUEEEEができるかどうかって言う問題があるんだけど。
いや、たまにいるじゃん? 転生者で、きっとチートを持ってると思ったらスペックは一般人と変わらない、みたいな人。
でも、俺はそうはならずに、多分無双できる。
俺の一族って、代々ほぼ全員が化け物みたいな戦闘能力を持っているらしいんだ。
……なんとなく、微妙に根拠に欠けているような感じもするが事実であり、何十人も英雄を輩出している名門なのである。
だから、俺もおそらくチートレベルだと思う。
さっきから、多分とかおそらくとか煮え切らない言い方をしているが、これには理由がある。
実は俺、まだ自分のステータスを見たことがないんだ。
ん? ああ、そうそう。まだ言ってなかったな。
この世界には、ゲームみたいなステータスがあるんだ。自分の力を数値化したものだな。
このステータスなんだが、人族は15歳にならないと、自分のステータス見ることができないらしいんだ。その年になるまで、能力値の情報が確定してないとかなんとかで。
他の五大種族である、魔族、獣族、竜族、霊族は生まれた時から見れるらしいのに。
差別だー。
で、今日15歳の誕生日を迎えた俺は、初めて自分のステータスを見ることになった。
まあ、でもその前に。先に平均的なステータスを確認しておこう。その方が、どれだけチートか分かりやすいだろうしな。
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山田太郎 人族 15歳
状態:通常
称号:商人の子
レベル:1/100
HP:100/100
MP:100/100
能力値
攻撃力:下級
防御力:下級
敏捷力:下級
魔法力:下級
抵抗力:下級
魔法適性
火:下級
水:0
土:0
雷:0
風:0
光:0
闇:0
無:下級
スキル
下級
【暗算:下】
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普通の商人の子とかだと、こんなのもの。
状態は、状態異常を表している。
称号はその時の自分の行動とかを表してるらしいんだが、これについては研究は進んでおらず、大したことはわかっていない。
レベルは生き物を殺すと上がる。レベルが上がると能力値や魔法適性が上がったり、新たなスキルを覚えたりする。
HPとMPはまんまゲーム。HPは残りの生命力を表していて、ゼロになると死ぬ。MPは魔法やスキルを発動すると減る。時間経過で回復。
能力値は、まあそのままだし、あんまり説明する必要はないか?
あえて言うなら、魔法力は魔法の威力で、抵抗力は魔法防御力というところか。
能力値の場所に書かれている『下級』っていうのは、大まかなランクだ。
下級<中級<上級<将級<王級<帝級<神級
という順番に強くなっていく。
下級は一般人。中級は低位の兵士や冒険者くらい。上級はベテランかな。
まあ、ここまでが人の領域。
ここからは人外の領域に入っていく。
将級は、都市では最強クラス。王級は国家の最強クラス。帝級は英雄、種族最強クラス。
そして、最後。神級は文字通り神話クラス。
後、スキルっていうのは魔法とはまた違った特殊能力らしいんだが、能力の幅がありすぎて正直よくわからん。
さて、と。
長ったらしい説明はこれくらいにして、そろそろチートのお披露目と行きますか。
いやー、期待が高まるなー。
俺の予想だと、ステータスの平均は王級以上だと思うんだよね。つまり最初っから無双状態みたいな?
うん、フラグじゃないから。これだけ色々言っといて全部下級とかじゃないから。
よし、じゃあいくぜ。ステータスオープン!
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フェイト・ウィアートル 人族 15歳
状態:通常
称号:異世界からの転生者
レベル:1/∞
HP:∞/∞
MP:∞/∞
能力値
攻撃力:神級
防御力:神級
敏捷力:神級
魔法力:神級
抵抗力:神級
魔法適性
火:神級
水:神級
土:神級
雷:神級
風:神級
光:神級
闇:神級
無:神級
スキル
神級
【代行神】【能力作成:神】
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……はい?
…………。
…………。
…………。
…………。
…………。
…………はい?
えーっと、ナニコレ? 何これ?
∞って確か無限っていう意味だよね。
あー、はいはい、成程。そういうことね。
いや、どういうことだよ!?
え、俺ってHPMP無限なの!? 死なないの!?
全能力値神級って何!? ただの神話の住人じゃん!
というか、何気に全属性魔法だけど、なんか他のやつのせいであんまりチート感がない。
更に、下の方を見てみると神級スキルが二つも!!
確か神って、神級スキルを1つ以上持っている者のことなんだよね。つまり。
俺って神なの!? レベル1なのにな!!
意味が分からないよ。わっとどぅーゆーみーん?
……いや、マジで何が起きてんのこれ。
実は俺、人族史上最強って呼ばれてる初代ウィアートル家当主と同じくらい強いんじゃ。
う、うん。とりあえずHPMPや能力値は保留にしておいて、スキルの方を先に見ておこう。2つとも全く知らないものだし。
◇◇◇◇
【代行神】神級スキル保持者を視認した場合、その人物が所持している神級スキルを獲得することができる。
◇◇◇◇
ん?
んん?
え、何このチート。バカなんじゃないの? コピー系ってことだよな。最強じゃん。
あ、でも神級スキルだけか。そもそも神級スキル持ってる人がこの世に存在しているかどうかすら怪しいし、使えるかは案外微妙だな。
えーと、次はもう1つのを見てみよう。
◇◇◇◇
【能力作成:神】帝級以下の全てのスキルをMPを消費し自由に作り出すことができる。
◇◇◇◇
ファッ!?
さっきのスキルの穴を埋めるようなチートきたんだけど!?
何、自由に作れるって?
あ、でも、【代行神】とは違ってMPを消費するのか。だったら高い階級のスキルは相当MP消費が激しいだろうし、あんまり作れないか。こっちも微妙だな。
って、そういえば俺にはさっき保留したアレがあるじゃん!
MP:∞/∞ ←アレ
つまり、どれだけでも作れるってことだよな……。
どうする、俺? やっちまうか?
フフフ、ここまできたらチートの極致というものを見せてやろう。
【能力作成:神】よ。無限のMPを消費し、作成可能な全てのスキルを作り出せ!
《帝級以下全スキル作成——成功しました》
お、おお。なんかあっさりできたな。
って、そういえば、今スキル欄を見たらとんでもないことになってるんじゃ……。
《【剣武帝】【槍武帝】【弓武帝】【拳武帝】【盾武帝】【槌武帝】【杖武帝】【鎧武帝】の所持を確認——【武器神】を獲得しました》
《【火魔帝】【水魔帝】【土魔帝】【雷魔帝】【風魔帝】【光魔帝】【闇魔帝】【無魔帝】の所持を確認——【魔法神】を獲得しました》
な、なんか来たんですけど!?
え、神級スキル増えたんだけど。
◇◇◇◇
【武器神】全ての武器を完全に操ることができる。攻撃力上昇補正。
◇◇◇◇
【魔法神】自分が放つ魔法の威力上昇補正。消費MP量減少。
◇◇◇◇
《帝級以下全スキルの所持を確認——【帝級神】に統合しました》
ふぇ?
帝級神って何?
◇◇◇◇
【帝級神】帝級以下の全てのスキルを自由に作り出すことができる。
◇◇◇◇
ああ、【能力作成:神】の上位互換か。こっちはMP消費なしでいけるんだな。
まあ、正直俺から見たらどっちも同じなんだけど。
……もしかして、今のスキル作成って無意味だった? いや、そのおかげで【武器神】と【魔法神】は得られたんだから、意味はあったか。
あ、そうだ。今だったらスキル欄結構スッキリしてるかな?
って、待って。そういえば、【帝級神】あるなら【能力作成:神】って完全にいらない子じゃん。
これどうしよう。別にこのままでも困ることはないが、なんとなくスッキリしないな。
なんかこう、スキルポイントみたいなものに還元できたりしないだろうか。
《帝級スキル【能力進化:帝】による再利用が可能です》
うおッ!? なんか脳内に声が響き渡ったんだけど、これは?
そういえば、スキル獲得の時のアナウンスに似てるな。じゃあ、これもシステムか。
えーと、【能力進化:帝】だって?
◇◇◇◇
【能力進化:帝】神級スキルを母体にすることにより、帝級スキルを神級スキルに進化させることができる。
◇◇◇◇
ああ、なるほど。これはいいな。
よし、今度はこのスキルで進化させたいものを探すか。