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白眼の槍使い  作者: 陰月
学校編
13/94

ファナの秘密

「よし、今日から王都に移動するか。」


4年と半年が過ぎたその日、ファナが急にそんなことを言い出した。


「急にどうしたんだ?」

「いやな、来年からお前らも学校に通うだろ。だからそろそろ向こうに移動して体を慣らしておいた方がいいでしょう?」

「そうですよ」


どうやら、エリシアはファナにもう言いくるめられているみたいだ。


「はあ、分かりました。行きましょうか」

「やった」


トウコクがそう答えると横から小さな声でそう聞こえた。


(何かあるんだろうか?)


トウコクは疑問に思いながらも準備を始めた。


「まあ、準備って言っても僕は用意するものなんてないんだけどな。」


トウコクはそう言いながらも少し大きなカバンに自分の服を詰めて、リビングに行った。


「用意できましたよ」


トウコクが下に降りるとエリシアとファナはもう準備を終えて待っていた。どうやら、少し前から用意はしていたみたいだ。


「それじゃあ、行くか」


そうして、トウコクはギアアップを使って走り出し、エリシアとファナはウインドアーマーを体にまとって走り出した。


「このスピードならどれぐらいで着くんだ?」

「そうだね。このスピードなら1週間程で着くよ。」

「1週間!?もしかして、1週間野宿ですか?」

「え?そんなの嫌ですよ」


トウコクの言葉にエリシアが心底嫌な顔をした。が、その言葉をファナが否定した。


「野宿なんてしないよ!私も一応女だし。それに、王都までは結構町があるんだよ。」

「そうなんですか。それは良かった。」

「ほんとに良かったよ〜」


エリシアは泣きそうなぐらい嬉しそうだ。


「じゃあ、今日はどこまで行くんですか?」

「そうだね、今日は4つ先の町で休もう。」

「分かりました」


そんな会話をしてから数時間走っていると、道の上に魔物がいた。


「あれはなんだ?」


トウコクはこれだけ時間が経っていてもゴブリンとゴブリンキングしか狩った事がなかった。そして、道の上にいる3体の魔物は無色透明でぷるぷる揺れていた。


(なんかスライムに似てるな。鑑定してみよ。)


トウコクはそんなことを思いながらそいつを鑑定した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スライム


鑑定できません

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


どうやら、あの魔物はスライムという名前らしい。


「あのスライム誰が倒します?」

「そうだな、じゃあ、エリシアに頼もうかな」

「分かりました」


指名されたエリシアはその場に立ち止まり詠唱を始めた。


「『雷よ、我が手に集いて意を受け動け。サンダーボール・操』」


この魔法はエリシアがこの4年と半年という期間の中で簡単なアレンジを加えた詠唱だった。その魔法はエリシアの意思を受けているように動き3体のスライムを丸焦げにした。


「よし、いい感じだ。だけど、動きながら使えるようになると尚いいな。」

「はい、頑張ります」


魔物を倒したトウコク達はそれからまた数時間何事もなく走り続けた。そして、辺りが暗くなってきた頃5体の魔物が現れた。


「あれはナイトウルフだな。闇に紛れて対処しにくいのが特徴だな。じゃあ、今回はトウコクがやれ。」

「面倒臭いな。まあ、やりますけど。」


トウコクは心底面倒くさそうにしていたが、走る速度を落とすことなく攻撃を始めた。


「『バレット、連射』」


トウコクが魔法を使うと魔力の弾丸が数え切れないほど出現しナイトウルフを貫いていく。


「終わりました」

「ほえ〜、トウコク君は本当に凄いね」


トウコクの魔法を見てエリシアが褒めてくれる。トウコクはその度に顔を赤くして「それほどでも」と、言い返す。そして、それを見ているファナが「初々しいね」とからかってくるのだ。


「もう、着きそうですよ」


トウコクは話を変えるようにそう言った。


「本当だね。じゃあ、今夜はここで休もうか。」

「「はい」」


トウコクとエリシアは同時に返事をした。そして、町に入り宿を探して、泊まった。その宿はリーズナブルな値段で部屋も綺麗でとても良かった。それでも、部屋は2部屋しか取らず、トウコクとエリシアは同じ部屋で寝た。何故か慣れてしまいエリシアを助けた日からずっと同じ部屋で寝ていた。



それから5日間同じように移動をした。どうやら、この辺りは魔物の間引きがされているのか魔物と会うことは少なく、あったとしても弱い魔物ばかりだった。そして、5日目の夜も同じように宿をとっていた。


「明日で王都に着くのか。結構楽しみだな」

「そうだね。また、絡まれないといいけど」

「大丈夫だろ。そのへんの奴らよりよっぽどエリシアの方が強いって。」

「そんな事ないよ〜」


エリシアは両手を前に出し左右に振って謙遜した。


「じゃあ、寝るか」

「そうだね。おやすみ」

「ああ、おやすみ」


こうして、2人は眠りについた。



次の日の朝、宿でご飯を食べてから王都に向かって走り出した。


「そう言えば、後どれぐらいでつくんだ?」

「昼ぐらいには着くと思うけど」

「分かった」


トウコク達は走った。魔物は全く出てこなかった。


(やっぱり王都の周りは狩られているのか?)


トウコクはそんなことを思いながら走っていると王都に着いた。だが、外からは王都の街並みは見ることが出来なかった。何故なら、王都を囲って大きな壁が立っていたからである。


「でかいな」

「でかいね」

「ほら、突っ立ってないで早く来い」


ファナはそう言って門の方へ歩いていく。トウコク達はそれを追いかけるように走っていった。そして、門の近くまで来ると鎧を着た門番みたいな人が立っていた。


「ここを通るには何か身分を証明できるものを提示して頂かないと通せません。」

「王都の出入りも面倒になったな。前は顔パスで行けたのに」


ファナは誰にも聞こえないような声でそう言いながら何かカードみたいなものを見せた。それを見た門番が口が開いたまま固まっていた。


「あ、あ、貴方様があのドラゴンを討伐した、伝説の冒険者。ファナ・ブラットですか!?」

「これは面倒なことになるな」


ファナのそんな呟きも直ぐにエリシアの声で聞こえなくなった。


「ドラゴンを倒した冒険者ってファナさんでしたの?」

「ああ、そうだよ」

「そんな、黙ってるなんて水臭いですよ。」

「ごめんな」


ファナとエリシアの会話はそれだけだった。何故なら、エリシアが会えたことが嬉しすぎて言葉にならないみたいだ。


「え?ファナってファミリーネームあったの?」

「トウコク、お前がきにする所はそこか?誰だって隠すこともあるだろ。現にトウコクも隠してるじゃないか。」

「まあ、そうですけど。まあ、それなら仕方ないですね」

「トウコクは私がドラゴンを倒してたことには驚かないんだな?」

「ファナならやってそうだったからそんなのかな」

「私ってそんなふうに思われてたの!?」

「そりゃそうだろ、僕の8割の力を7割程度の力で圧倒するんですよ。むしろそれぐらいしてもらわないと困りますよ」

「そうか、なんかスッキリしたよ」

「そうですか」


トウコクはこれまででファナに勝ったことは無かった。しかも、ファナは実力を8割も出してくれない。そんなファナを見ていたのでトウコクはドラゴンを倒したと言われてもあまり驚かなかった。


「じゃあ、通らしてもらっていいかな?」

「はい、どうぞ」


ファナは門番にそう聞いてから王都の中に歩き始めた。


「待ってくださいよ」


トウコクは未だにうずくまっているエリシアをおんぶしてファナを追いかけた。そして、ファナは何の迷いもなく王都の道を進んでいく。


「今日からここに住むぞ」

「え?」


そこは宮殿のように大きな家で庭も相当でかかった。だが、ファナは何のためらいもなく家の中に入っていった。そして、ドアを開けるとそこはめちゃくちゃ綺麗で使用人がズラッと並んでいた。


「お帰りなさいませ、ファナ様」

「ああ、ただいま」


普通に挨拶するファナにトウコクは耐えきれず叫ぶように聞いた。


「ファナ、これはどういう事だよ。説明しろ!」

「分かったから。全身魔力で強化するのは辞めて。家がなくなるから。」


ファナがそう言うとトウコクは魔力循環を辞めて「じゃあ、説明して」と、少し低めの声で言った。


「この家は私が冒険者を真面目にやっている時に王都の近くに現れたドラゴンを倒した時に王様からで貰った家なんだ。それで、この使用人たちは私が居なくても毎日ここの管理をしてくれている人たちだよ。」

「そういう事なら納得しますけど。そういう大事なことは事前に言っておいてください。」

「分かりました。ごめんなさい」


トウコクはまだ少し怒りながらそう言って、ファナは反省したようだった。


「なんか今日は疲れたのでゆっくりしたいです。」

「いいよ、今日は休んで」

「お部屋でしたらこちらです」


ファナに了承をもらってから使用人に部屋に案内された。そして、トウコクは疲れてそのまま眠りについた。

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