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おもいあい。  作者: 瑠璃ヶ崎由芽
第6章『つぐひな』
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18話「愛が実る……?」

 それから寮に戻ると、既にひなが先に帰ってきていた。


「あ、おかえりー」


「ただいまー、先輩に言ってきたよ」


 部屋へと入り、ひなとそんな挨拶を交わした後、今日のことを報告をする。


「大丈夫だった?」


「うん、大丈夫。ちゃんと解決したから」


「そっか、よかったね」


「うん、でもごめんね。私のせいでこんなことになっちゃって」


 全ては私のせい。私が選択を誤ってしまったから。悲しませまいと選んだ答え、それこそが悲しませる原因となった。なんとも皮肉な話だ。


「ううん、仕方ないよ。愛実つぐみはすっごく優しい子だから」


「それ、先輩にも言われた。私ってそんなに?」


 これだけの認識があれば、私はやはり『優しい人』なのだろう。


「うん、優しいよー! 私の知ってる人の中で一番って言っても過言じゃないぐらいにね!」


「それは流石さすがに過言じゃないかな……? でも、今回はそれがあだとなったんだから、これからは反省するね」


 傷つけないことも大切だけれど、時には傷つけることも大事。それを踏み出す勇気、それをかなでから教えてもらった。今回のことを教訓にして、肝に銘じておこうと思う。


「え、それって厳しくなるってこと? 嫌だなー」


「なにそれ、ふふふ」


 そんなおかしなことを言うひなに笑ってしまう、私。

 でも前までだったら、こんな会話もできなかったのだ。改めて、元通りになれて嬉しさがこみ上げてくる。


「……ねぇ、愛実。ちょっと私の隣に来て」


 ひなは手招きしながら、私を呼ぶ。 


「え、なに?」


 それに言われるがまま、私はひなの隣に座った。

 次の言葉、それに何が来るのか、とても気になってしょうがなかった。ひなの顔つきからも、ちょっと真面目な話っぽいし。


「なんか、ね。私、先輩への気持ち、冷めちゃったみたい」


 何を言うかと思えば、自分が思っていたよりもすごいことを言ってきた。


「え!? あんなに好きだったのに?」


 だから私はその発言に驚きを隠せなかった。あれほど先輩のことを好きだったのに、何があったのだろうか。


「まー先輩への想いはどちらかと言うと、憧れや羨ましいって気持ちが強かったからねーどうせ先輩は私のこと好きじゃないんだし」


 どちらかと言えば、高嶺の花みたいな存在だったのだろうか。同じテニス部で先輩はエース。料理もできるし、勉強もできる。そんな先輩を見て、ひなは『私もああなりたい』みたいに思ったのだろうか。それを彼女は『恋』としてとらえた。でも本来は『目指すべき目標』だった。それをひなは今日こんにちまでに気づいてしまったと。


「でも、そんな簡単に想いが消えちゃうものなの?」


「恋ってそんな曖昧あいまいなものなんじゃない?」


「そ、そうなのかなー」


 私にはその感覚がよくわからなかった。

 私は今もなお、ひなのことが好きだし、それは自信を持ってそう言える。私のそれはそんな不安定なものでもないと思う気がする。


「でね、この言葉を自分で言うのも何なんだけどさ、まだ愛実の恋は実るチャンスあるよ!」


 「ちょっ、それ、自分で言う!?」


 思わず、大きめな声が出てしまった。

 想われる立場の人が『恋が実る可能性があるよ』なんて言われるなんて思ってもみなかった。まさか自分の好きな人から自分の恋路を応援されるなんて、なんか変だ。


「だから『何なんだけど』って一言添えたじゃん」


「うぅーひなのいじわる! 今日の夕食、ひなの苦手なの入れるから!」


 そんな冗談めいた意地悪をひなにしてみる。


「あぁーダメ! ごめんて!」


 実のところ、私はそのお言葉に甘えてみようかなって気持ちもある。

 『恋が実るチャンス』をひながあると思っているということは少なからず、『結ばれてもいい』気持ちがあるということだ。だって、実るチャンスなんて結局は自分次第、私の気持ちがわかっている今はひなの気持ちに依存してしまうのだから。

 それにさっきひなが言っていた『恋は曖昧』を考慮すれば、曖昧なものなのだからひなの気持ちが私のさじ加減でいくらでも揺れ動くのだ。もうこうなったら意地だ。ひなの気持ちを私に向けさせてみようじゃないか。

 そう強く私は決意し、私たちはいつもの日常へと戻っていった。

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