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おもいあい。  作者: 瑠璃ヶ崎由芽
第5章『ゆいめぐ……!?』
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7話「日常の中での『あなた』」

 その翌日の放課後。私はいつものように図書委員だった。常葉ときわさんは私に気を遣ってくれているのか、それともただ単に自分の欲求を満たしているだけなのか、今日も常葉さんとすずの『2人だけ』で下校した。

 となると、当然彼女がやってくる……と思っていたのだが、なぜかゆいはこなかった。もう先に1人で帰ってしまったのだろうか。でも、なんとなく本当に感覚的でしかないが、それはないと思う。それに1人で帰るのであれば、私じゃなくとも、常葉さんあたりに言うはずだ。だから何故か図書室には来ないけれど、私のことを待ってくれているんじゃないかと考えた。

 だとすると、待っている場所は『あそこ』しかないと思った。なので私はその真相を確かめるべく、自分の教室へと向かった。


「やっぱり……」


 思った通りだった。教室の扉のガラスからひょいっと中を覗くと、そこには唯がいた。相変わらずなぜか私の席に座って。

 でも、今回は眠ってはいなかった。ここからではよくわからないが、何かい物をしているようだ。私は邪魔をしないように、こっそりと扉を開け、抜き足差し足忍び足で唯に近づいていく。そして前みたく唯の前の席に座り、こっそりと唯の観察を始める。

 唯の手つきは慣れたもので、いともたやすく縫い上げていく。

 そんな彼女に感心しつつ、視線を唯の顔へと移していく。その目はまさに真剣そのもの、そんな彼女を私は観察する。目キレイ……まつげも長いし……肌も白くてキレイ……邪魔しちゃ悪いとはいえ、なんか触れてみたくなる、そんな気分に私はなっていく。


「……気づいているよ、めぐみ」


 そんな折、呆れたような顔をして、ジト目で私にそう言ってくる唯。


「あ、やっぱりか」


 彼女は私の行動に気づいていたようだ。まあ、気づかないわけないか、いくら集中していたとしても。


「もう、人のことじっと見て……」


 唯は頬を赤らめて、ちょっと怒ったような口ぶりでそう言った。


「いいじゃん。見てたいんだもん」


 なんて本心混じりの、子供の言い訳みたいな返答をする。


「むー……好きにすれば?」


 そんな言い訳にほとほと諦めたのか、唯はそう言って作業を再開する。本人の許可が出たので、私も私で観察を再開する。

 その真剣な眼差しをしっかりと私の目に焼き付ける。やっぱり見られているのが恥ずかしいのか、徐々に顔が赤く染まっていく。それが可愛くて、愛おしくて――それをもっと近くで見たくなって、顔を唯の方へと近づいていく。そして――


「ちょっと……近い近い! それに、なんで目つぶってるのよぉ……」


「あっ……えと……ごめん」


 唯の言葉で我に返り、目を開けた時には唯の顔がまさに真ん前にあった。

 唯の方はこれでもかというほどに、耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうにしている。私もほとんど無意識のことだったので、自分でも恥ずかしくなってしまい、言葉を失う。

 それからしばらくの間、私たちは無言のまま、互いに顔を合わせずに過ごしていた。


「……帰ろっか」


 沈黙の空間にしびれを切らした私は、帰ることを提案する。

 これが今一番の最善な選択だろう。このまま黙ったままいては、下校時間になってしまうし。その私の言葉に唯は静かにうなずいて、縫っていた物を片付け始める。

 私は再び唯を見ながら、それを待ちつつ、考え事をしていた。



 やはり私の中で、『唯』という存在が変わっているような気がする。

 最初はただの友達、いやそれ以下の知り合い、もしくはクラスメイト程度にしか考えていなかったのかもしれない。でも、今は違う。それだけはハッキリと言える。

 だけれどそれが唯の、私に求める関係のものと同等なのか、と言われると自信がない。私にとってはかつて、すずがその対象であった。だからそれを参考にすれば、何か糸口がつかめるのではないかと思って考えてみたけれど、結局よくわからない。とりあえず言えることは最低限、友達以上の感情を唯に抱いているということだけ。もっともっと唯を観察して、この気持ちを確かめなくては。そんな意思を持って、私は気合いを入れ直しつつ、唯と共に下校することにした。





◇◆◇◆◇





 それから私たちは肩を並べ、通学路を歩いていた。

 さっきのことが後を引きずっているのか、なんとなく口数が少ない私たち。気まずい感じの空気というのも私は苦手だし、これでは一緒に帰っている意味がないので、さっきの観察……というか実験のようなものをしてみようと思う。

 まず初めに、さり気なく自然に唯の手を取って握ってみる。これ、実は唯が読んでいた本のとあるシーンの再現だったりして。


「な、なな、何!? て、手なんか繋いじゃって」


 気持ちいいぐらいのお手本な反応を見せる唯。

 若干、唯で遊んでいるみたいになっているが、私は至って真面目だ。


「いやー……そのー寒いなって思って」


 手をつなぐ理由、そんなものは全く考えていなかったので、小説通りの返しをしてしまう。


「今、5月だけど?」


 そんなミスマッチなセリフに、唯は怪訝《けえgん》そうな顔をして突っ込む。


「はははーまあいいじゃん。手繋いで帰ろうよ」


「うぅー……はい」


 唯、可愛いなぁ。ダメだ、そんな顔をされてしまってはどうしてもいじわるしたくなってしまう。

 そもそもこれは、あまりやりすぎると唯に自分の気持ちをもてあそばれていると勘違いされかねないのだから、慎重に執り行うべきなのだ。だから、あまり過度にしすぎてはいけないのだ。そう自分の心に言い聞かせ、その悪戯いたずら心をしずめる。


「さっきの、何作ってたの?」


 悪戯心を鎮めきった私は、とにかく自然な会話を努めようと、さっきの縫い物の話をする。大方その作っていた物の予想はできていた。唯と言えば、アレだろう。


「えっ!? え、えーと……ぬいぐるみ」


 その予想通りの答えをしてくれたはいいが、その口ぶりがどこか言いにくそうな感じだった。何か私に言いづらいことでもあったのだろうか。


「ああ、やっぱりそうなんだ」


「うん」


「じゃあさ、出来たら一番に見せてよ!」


 唯の作ったぬいぐるみを、他の誰でもない私に一番に見せてほしい、そう心の中で思った。

 たしかに唯の作ったぬいぐるみに興味があったことには違いないが、こういう独占欲的な発想をする私って……やっぱり……?


「ッ……いいよ?」


 そんな私の発言にとても驚いたような様子をして、その約束を交わす唯。


「よし、決まり。約束だからね?」


「うん」


 それから私たちは他愛もない話でもしながら、寮へと帰宅した。

 結局、今日一日ではハッキリとした答えは出なかった。だが、まだ始まったばかり、そう焦ることはない。これから時間をかけて、だけどなるべく早めに、答えを見つけよう。

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