14話「大切な親友のために……」
いよいよ放課後となった。いつかの屋上に、私『榎本涼香』と常葉さんは共にお互いに顔が見えるように対面に立っていた。
今度こそ、私はこの想いを伝える。そう意気込んではいるものの、相変わらず常葉さんをこうして目の前にしてしまうと、少し、いやかなり緊張してしまうみたいだ。
でも、あの時の弱い私とはハッキリと違う。私には今日こそ絶対に告白するという強い意思がある。私の中に新たに決意が生まれた。それもこれも全て私の一番の親友である、めぐのおかげ。めぐのためにも、私もためにもこのチャンスを絶対に逃さないようにする、してみせる。
「と、常葉さん、あのねっ! この間言えなかったことを言うために今日ここに来てもらったの……」
「うん、で、言いたいことって?」
いつもと変わらないキラキラした目。その目に私は一瞬怯む、でも今日の私は違う。絶対に成し遂げるという決意があるのだから、こんな所では屈しない。
「わ、私、常葉さんのことが……」
でも、いざ言おうとすると、心臓の音が常葉さんに聞こえてしまいそうなくらい高鳴って、さらに緊張で足も震え、一度言い淀んでしまう。
だから心を落ち着かせるため、一旦私はゆっくりと深呼吸をして、もう一回言い直す。
「と、と、常葉さんが……」
ダメ、言えない。言おうとするとどうしても、口が止まってしまう。言葉が喉らへんに支えてしまって出てこなくなってしまう。どうしても常葉さんの前だから緊張がほぐれていかない。
ああ、やっぱり私には無理なのかなぁ……――
「涼香、落ち着いて。想いは言葉にしなきゃ伝わらないよ」
そんな告白できないでいる私に常葉さんは手を握り、聞き覚えのある言葉を私に告げる。今度は別の意味を込めて。
その言葉で、心から勇気が湧きだす。そうだ、言葉にしなければ伝わらないんだ。私は伝えるんだ、この想いを、めぐのために――
「と、常葉さんのことが……好き、です!」
ようやく言えた。自分でも驚くぐらい体が震えて、熱くなっていたけれど、なんとか言うことができた。伝えられたのだ、私の想いを。
やったよめぐ、私想いを伝えられたよ。
「ふふ、やっと言ってくれた……」
常葉さんは予想外の反応を見せた。ホッと安堵した表情をして、まるで私の想いを知っていたかのようなことを言った。
「えっ? もしかして――」
「うん、気づいてたよ 涼香が私のこと好きだって。だから、ずっと前から告白してくれるのを待ってた」
「ええええ!? うそぉー……」
その言葉に、私は思わず崩れ落ちてしまう。
まさか常葉さんが私の想いに気づいていたなんて、私のこの努力はなんだったのだろう。こんなにも死にそうなぐらい緊張して、なんとか自分の奮い立たせて、ようやく言えたのに。
「ハハハ、そりゃ気づくよーいっつも私の前だと取り乱してばっかだし、顔もいっつも真っ赤かだし」
「そ、そんなぁー……」
「ふふふ、じゃあ、今度は私の番。私も、涼香のことが好きです、付き合ってください」
「……えっ? ええええ――!?」
そんな落胆している最中に、常葉さんはとんでもない爆弾を放り投げてきた。その言葉に、私は再び驚く。もう驚くとかそういうのじゃないくらいに、とてつもなく驚愕していた。
だってまさか常葉さんが私のことを好きだったなんて思いもしないもの。私は完全に一方通行の想いだと思っていたから。
「ふふ、ハハハ、やっぱ涼香って面白い! お手本みたいなリアクションするね!」
「い、いいい、いつから……!?」
「ん? 私たちが友達になった時からずっと」
「だ、だったら、常葉さんから告白してくれればよかったのに!」
「それじゃ意味がないよ。涼香から告白してくれなきゃ意味がない。もし涼香が私の気持ちを知ってたら、絶対それに甘えて告白しない。それに涼香が知らなかったとしても、今みたいにめぐみの補助を借りなければ告白できない。せっかく勇気を出して告白できるチャンスを、私が潰しちゃダメだからね。臆病者の涼香から告白してもらうからこそ意味があるんだよ」
「そうだったの……」
「まあ、告白されるのに憧れてたってのもあるんだけどねー、へへ。で、話がそれちゃったからもう一度言うね?」
「私、涼香のことが好き、ううん大好きです。よかったら、私と付き合ってもらえませんか?」
「……はい、喜んで」
それから私は驚きとやり遂げた脱力感で、しばらく立てない状態になったために、常葉さんとともにしばらく屋上に居ることとなった。
「そいうえばさ、涼香はどうして私のことを?」
「え、恥ずかしい……」
「もぉーせっかく告白できたのに、臆病なのは全然変わってないじゃん! ねえ、私たち恋人だよ? そういう恥ずかしい所も共有していこうよ!」
「う、うん、わかった……あれはね――」




