12話「親友との時間」
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朝、目を覚ますと目の前にはめぐがいた。昨日散々泣いて泣いて、挙句の果てには夜も涙で眠れず、結局私が一緒に布団に入ってあやすまでになった。
それほどまでに、めぐが私が告白を決意したことが嬉しかったみたい。だからこそ、今日はちゃんと常葉さんに告白しよう。自分の想いをちゃんと自分の言葉で告げよう。私はそう決意する。
そんな折、時を同じくしてめぐも目を覚ましたようだ。
「お、おはよ、めぐ」
そのめぐに、私は恐る恐る挨拶をし、次の言葉を不安な気持ちで待つ。
もうよりは戻ったとはいえ、その後泣いたまま寝てしまったため、有耶無耶になったまま今を迎えている。だから本当に私たちは元の、大切な親友に戻ったのかと不安だった。
「おはよーすず」
その言葉を聞いた途端、私の心にたちこめていた暗雲がパアッと消えてゆき、心が晴れ渡っていく。
たしかに昨日の仲直りした時にもう『すず』と呼んでくれてはいたけれど、こうして日常の中でごくごく自然に使われていることがとても嬉しかった。私はこの言葉で、私たちは元通りになれたんだと、確信する。
「うん、おはよう、めぐ!」
私は満面の笑みで、もう一度挨拶をする。
元の関係に戻れたという事実が嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
「昨日は……なんかごめんね。結局一緒に寝てもらちゃって」
頬を指で掻きながら、気まずそうにしてそう話すめぐ。
「いいのよ。でもあの時のめぐ、なんか子供みたいで可愛かった」
いつもはクールなめぐが、あの時に限っては子供みたいで頭を撫でられずには入れられないほどに可愛かった。
「ちょっ、からかわないでよー!」
珍しく恥ずかしがって、そんなことを言うめぐ。こんな他愛のないやりとりが、なんだかとても嬉しい。
「ふふ、ごめんなさい」
「もーう、それはそうと、今日こそは頑張ってね!」
「ええ、頑張るわ!」
「ねえ、今日は2人きりで登校しましょうよ!」
「なんかすず、今日はやけにテンション高いね、どうしたの?」
「だ、だって仲直りできて嬉しいもの!」
「ハハハ、そっか。それもそうだね、しばらく2人で何かするってのもなかったしね。わかったよ、じゃあ常葉さんたちにお断りのメール入れておくね」
「ええ。じゃあ私は朝食の準備ね!」
そういって私は足を弾ませ、キッチンへと向かう。
まるで昨日までのことが嘘のように、私たちは元の日常を取り戻していた。その事実が嬉しくて嬉しくて。そんな必要ないのに、朝の食事にも力が入っていた。
◇◆◇◆◇
「――ねえ、めぐ」
久々に2人で登校する最中のこと。私はふとあることを思いつき、めぐを呼ぶ。
「ん? どうしたの?」
「常葉さんへの告白の約束を、今度は私から取り付けに行ってもいい?」
前回はめぐがしてくれた事を、今度は私が1人の力でやってみたかった。
「え、いけるの? 大丈夫?」
その言葉に、めぐは心配そうに私の様子を窺う。
「うん、頑張ってみる。というより、ここでくじけるようじゃ本番で告白なんて無理でしょ?」
これが出来なければ、告白なんて到底ムリ。それに告白前の練習みたいな感じで自分を試してみたい。
「そうだね。でも偉いね、すず。昨日までとは見違えるようだよ!」
「めぐのためだもの!」
「そ、そっか。うんわかった。じゃあすずに任せるよ」
「ええ、任せなさい!」
そんな大口をたたいてはみたものの、実際にはずっと不安だった。でもめぐと約束したんだもの、頑張らなきゃ。
それを糧に自分を奮い立たせ、決意を改めつつ、私は学校へと向かった。