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おもいあい。  作者: 瑠璃ヶ崎由芽
第4章『きょうすず』
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8話「好きな人と2人きりで……」


Φ


 常葉ときわ杏奈あんなは胸がドキドキしていた。

 今日からいよいよめぐみが考えた作戦を実行していく。自分の好きな人と結ばれるために、好きな人とイチャイチャしなければならなくなってしまった。

 その期待と不安で、どうしても私の胸が高鳴ってしまう。そしてその作戦の始まりとして、まず好きな人と2きりで登校する。涼香すずかを誘うためには、言い方は悪いけどめぐみは邪魔。だからメッセで前もって私が来たことを知らせ、めぐみには先に登校しておいてもらう。

 というような流れで今私は凉香すずかとめぐみの部屋の前で立っていた。


「すーはー……よしっ」


 いざ部屋の前に立つと、いよいよ本番なんだと緊張してきてしまい、携帯を持つ手が震えてしまう。

 なので私は心を落ち着かせるために、一度深呼吸をしてからめぐみにメッセージを送る。すると、しばらくもしないうちに返信が来て、そして少しして部屋のドアが開いた。


「おはよー、常葉さん」


「お、おはよーめぐみ!」


「あれ、ちょっと緊張してる?」


 やはり表情に出ているのか、めぐみがそういって私を心配する。


「う、うんまあ」


「まあ、好きな人と2人きりだもんねー気持ちはわかるかも。でも、ちゃんと作戦通りにお願いね」


「了解」


 そう言うと、めぐみはいつものように学校へと向かっていく。その後姿がいなくなるのを待ち、そして私は部屋のインターホンを押す。すると何も知らない涼香が玄関のドアを開け、現れる。


「え、と、常葉さん!?」


 その意外な人物に、驚いた様子の涼香。そしてすぐに顔を赤く染めていく。

 それがまた可愛くて仕方がなかった。その可愛さに身悶えそうになるけど、ここはあくまでも普通にと自分の気持ちを押さえつける。


「あのさ、今日一緒に学校行かない?」


 そして私はいつもの感じで、涼香に変に悟られないようにしながら彼女を誘う。

 好きな人を誘うというのはこんなにも恥ずかしいものなのか、と思えるほどに私の顔は火が出そうなくらいに熱かった。こうやって涼香を誘うのも初めてだし、2人きりなんてもっと初めて。だからこそ恥ずかしさや緊張、そんな色々な感情が混ざって私の心の中を支配していた。


「え、ええ、いいけど……」


 対する涼香もさっき以上に顔を赤く染め、耳も赤くなっている。そして動揺しているのか、目線が右に行ったり左に行ったりと泳いでしまっている。でも、涼香はちゃんとその誘いに乗ってくれる。


「ホント!? よし、じゃあ早く行こうよ!」


 その瞬間、パァッと私は満開の笑顔を咲かせ、子供みたいにはしゃいで涼香にそう言った。もちろんここで断られるなんて全く思っていないけど、それでもこうして誘いに乗ってくれるのがとても嬉しかった。

 やっぱり好きな人と一緒に登校できるんだもん、嬉しくないはずがないよね。


「じゃ、じゃあ、準備するから少し待ってて――」


 それから涼香は部屋へと戻って、学校へ行く準備へと向かった。そして涼香がいなくなったのを確認してから、私は『ふー』と1つ大きく息を吐いた。

 とりあえずは第一関門は突破したみたい。でも言っちゃった、誘っちゃった。その事実が急に私の胸をドキドキさせていく。

 これから2人きりで肩を並べて一緒に学校へ行くんだ。あぁーやっぱり緊張してくるぅー

 そんな思いを抱きながら、私は涼香が来るのを待っていた。そしてほとんどすぐぐらいの時間で涼香が戻ってきて、いよいよ学校へと行くことに。


 2人きりで一緒に歩く通学路。でも、こんなにも好きな人と歩くことが難しいとは思わなかった。緊張でなんだかぎこちなくなって、いつもの歩き方を忘れてしまう感じ。そしてじゃあ同じ境遇なはずの涼香はどうなっているかと目をやると、やっぱり涼香も涼香で緊張しているようで、動きがどこか固かった。そんな緊張している姿も私にとっては眼福。可愛らしい姿だった。思いっきり抱きしめたくなる可愛さ。愛くるしくて、愛おしい。でも今それをやってしまったら、涼香が大変なことになってしまうのであえてしないでおく。

 あぁー……でもホント、涼香可愛いなぁー……あっ、おっとと、そんな涼香の可愛さに見()れてる場合ではなかった。私にはやらなければならない使命があったんだ。めぐみから課せられた、あんまり露骨すぎるのじゃなくてさりげない感じの好きアピールをするという無理難題。もはやその要求してくるものがどんなものなのか私にはわからないので、自分なりのアピールをしてみることにする。


「そ、そういえばさっ! 涼香って料理するよね?」


「えっ!? ええ、それがどうかした?」


「私、食べたことないなーって思ってさ。だったら交換っこしない? まあ私のは唯作だけど」


 私は覗き込むように涼香の方を見ながら、そうおねだりをしてみる。


「え、ええっ!? で、ででで、でも、そそんな人に食べてもらえるようなものじゃ……」


 そんな大胆発言に、動揺しまくる涼香。

 そんな姿がまた可愛いこと可愛いこと。あたふたしてて、どうしていいかわからない感じ。

 ああ、やっぱり私はこの子が好きなんだなぁとしみじみ思う。


「いいって、うちのも昨日の残りもので大したものじゃないし、条件は一緒でしょ?」


 ごめんなさい、唯。あなたが丹精たんせい込めて作ってくれたものをけなして。

 恩をあだで返しているようなものだもんね。でも許して、涼香との恋を実らせるためには必要なことなの。いつか穴埋めするから、たぶんね。


「……うん、じゃ、じゃあ」


「やったー! 楽しみだなー涼香の弁当!」


 私は好きな人のお弁当を食べれることに、ちょっと大袈裟おおげさに喜ぶ。

 でも、嬉しいという気持ちはホント。好きな人の作ってくれたものだものそりゃ嬉しい。もちろんそれは私のために作ったものではないし、特別な思いが込められたものでもないけれど、でもむしろそういう普通の、日常の中のものを共有できるというが嬉しい。


「あぁーハードルあげないでぇ……」


 喜ぶ私に対して、困り顔をしている凉香。

 あぁーもうすっごいかわいい!もう全部忘れてひたすらにむぎゅーってしたくなる。


「ふふ、はいはい。じゃあさ、今日のお昼……2人で食べようよ!」


 そんな凉香に胸キュンしつつ、この話の流れで私は意を決してお昼を誘ってみることにした。もっともっと今まで以上に2人きりになるためには、やはりお昼は外せない。


「ええ!? ふ、ふふ、ふたりきりで!?」


 その誘いに、朝の時みたくとても驚いている凉香。

 もちろんこれは私からしてもそうだけど、涼香からしてみればこれは好きな人と2人きりのお昼だもん。今こうして一緒に登校しているものとは、またちょっと違う意味を持つと思う。私だって、そんな初めてドキドキしちゃうもん。


「うん! そうだなー……学食だと唯やめぐみがいるだろうから、どこか空き教室でも行こっか」


「と、常葉さん……とお昼……2人きりで……」


 その光景を想像したのか、顔をいつも以上に真っ赤にしてうつむく涼香。

 はあ……なんてかわいいのだろうか、その姿を見るだけで心が温かい気持ちになる。もう愛くるしくて仕方がない。私は本当に幸せだ、こんなかわいい人に好かれて、両思いだなんて。


「ダメ?」


 私はそのうつむいた顔を覗き込むように、ちょっと甘い感じで言ってみる。

 なんか、こんなやりとりがすごく恋人のそれっぽくて、何かいい。でも変な感じ、まだ恋人ではないけれど、相手の気持ちを知っているこの今の私の状況。恋人らしいことしたって、涼香は私のこと好きなんだから、別に構わないわけだ。それで嫌がられるわけでもないし、たぶん涼香的には嬉しいんだろうし。

 だから、ってことではないんだろうけど、どこか大胆になってしまう。


「うぇっ!? だ、ダメじゃないです……」


 私のそれに、思わず目を逸らして恥ずかしそうに受け入れてくれる。

 よっぽど今のこの状況が恥ずかしいのか、体が若干縮こまっているような気がする。


「よし、決まりだね! 楽しみだなぁー!」


「ああ、またそれ言う……!」


 どうやら私の意図とは別の意味に捉えられてしまったようだ。


「ん? ああ、もちろん涼香のお弁当も楽しみだけど、涼香との2人きりの時間が楽しみだなぁーって意味だよ?」


 お互いにめぐみと唯がいる関係上、どうしても2人きりになれる時間というのは少ない。あっても3人がせいぜい。だからというのもおかしいけれど、好きな人と2人きりで過ごす時間がこの上なく楽しみ。

 だってその時間は誰も知ることのない、2人だけが共有している時間だから。


「えっ!?」


 その言葉に鳩が豆鉄砲を食ったような顔で、こっちを見つめる。よっぽど驚いたのだろう、足を止めてしばらく見つめている。


「だ、だって2人きりってなかなかないじゃん……?」


 そんな綺麗な瞳で見つめられると、流石さすがに私も照れてちゃう。


「そ、そうね……」


 思わずその言葉に、言い返しが浮かばず黙ってしまう。

 そのせいで、なんとなく2人の間にはこそばゆい空気が流れていた。でもこの空気は嫌いじゃない。

 だって、涼香とこんな恋愛らしい恋愛をしているんだもの。今まではただの友達って感じだった。彼女も動かないし、私も攻めることはしなかったから。むしろ、めぐみのおかげできっかけができたと言ってもいい。こんな機会を与えてくれたんだ、精一杯私ができることをしよう。

 そして、ゆくゆくは涼香と幸せな関係になろう。そう決意を改め、私はこの時間を大切に堪能していくのであった。

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