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おもいあい。  作者: 瑠璃ヶ崎由芽
第4章『きょうすず』
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3話「期待、そして落胆」


Φ


 私は自室で今か今かとすずの帰りを待っていた。

 屋上へと2人で行くところまでは確認したが、それ以降は邪魔になると、先に帰ってきたのだ。だから、まだ結果はわかっていない。

 でも、流石さすがに屋上で2人きりになれれば、いくらあのすずでも告白してくれるだろう。だから、今から楽しみで楽しみで仕方がなかった。たぶんすずは大喜びして、満面の笑みで帰ってくるだろう。いや、むしろ嬉しすぎて泣いて帰ってくるかもしれない、ないしは私を見てすぐに嬉し泣きをするとか。

 そんな色々なすずの表情が頭の中に浮かぶ。ああ、早く会いたい。早く帰ってこないかなぁ。などとすずの帰りを待ち焦がれていると、玄関のドアが開く音が聞こえてきた。


「お、帰ってきたなー!」


 私はあくまでも平静へいせいよそおうため、いつも通りの、自然体な私に戻る。

 それからすぐに部屋のドアを開ける音がしたので、私はすぐさまにそちらへと目をやった。


「あ、あれ……?」


 思わずそうつぶかずにはいられなかった。

 だって帰ってきたすずの表情は、私の予想していたものとは違い、どう贔屓ひいき目で見てもくもっていたのだから。


「け、結果は……?」


 その表情にさっきまであった期待や喜びは一気に消え失せ、不安と心配が心を独占する。

 もしかすると、あの朝の常葉さんに抱いた期待は間違っていたのかもしれない。もしかすることなんてなかったのかもしれない。常葉さんがすずに好意を抱いていると思った事自体が私の勘違いで、ホントは別の誰かを好きだったのかも。だとすると、今のこのすずの表情も納得できるけど。

 それを払拭ふっしょくするためにも、恐る恐る私は告白の結果をすずに尋ねる。


 ――するとなんということであろうか、すずは首を横に振ったのだ。

 まさかフラれたのかと思ったが、よく表情を見ていくと、にしては表情に悲しさや辛さ、苦しさというものは含まれていない気がした。どちらかというと、なにかしでかしてしまった時の子供のようなバツが悪い表情をしていた。

 ということはまさか……


「ね、ねえ、まさかとは思うけど……『告白できなかった』なんてこと……ないよ……ね?」


 そんな最悪のシナリオが頭をよぎり、私は恐る恐る彼女にそんなことを訊いてく。

 できればこんなこと訊きたくなかった。だってこの質問をするのは怖くてしょうがないんだもの。もしかすると最悪なパンドラの箱を開けてしまうかもしれないのだから。


「う、うん、そのまさかです……」


 すずは気まずそうに、そんな望まぬ答えを返してくる。

 なんてことだ、まさかすずが期待を裏切ってくるとは、しかも悪い方向で。

 やはり予想したとおり、その質問はパンドラの箱を開けるのと同義だったようだ。


「はぁ!?」


 私は心の底からの『はぁ!?』を言い放つ。

 だってそうだろう。屋上で2人きりで、話があると呼んでおいて、それで告白しなかったとはどういうことなのか。むしろどこをどうすれば、告白しないで帰ってこれるのか。

 だいたいそもそも、私は告白しなければ『友達をやめる』とまで宣言したはず。

 それだけ追い詰められた状況下でもなお、告白できないのはなぜなのか。

 頭の中が疑問だらけで、パンクしてしまいそうだ。


「はぁー……まあいいや、とりあえずそこに正座!」


 すすの不甲斐ふがいなさに、呆れるを通り越して『怒り』が沸々と煮えたぎってきた。

 とりあえず、すずを私の前に正座させる。説教タイムの始まりだ。


「は、はい……」


「はぁー……」


 そのあまりにも残念な結果に、自然と私の口から大きな溜息が漏れ出した。もう頭が痛くなりそうだ。

 だって、私はこれだけ追い詰めてやれば、いくらあのすずでも告白すると思っていた。

 それなのにも関わらず、すずは見事にその斜め上へといった。

 ホント、この子はヘタレだ、ヘタレすぎる。


「ごめんなさい……」


 すずはうなだれて、私に謝罪する。

 だがしかし、すずは完全に反省しているわけではなかった。おそらく心のどこかで、私が許してくれると浅はかな希望を抱いている。それに腹が立った。


「で、なんで告白しなかったの? せっかくチャンスだったのに」


 とにもかくにも、理由を訊かないことには始まらない。とりあえず私はすずの言い分を聞いてあげることにした。


「だって、常葉さんったらキラキラした目で見つめてくるのよ? 私、恥ずかしくて……」


 そのことを思い出したのか、すずの顔が赤くなっていく。それほどまでの心をときめかせる、キラキラした目だったのだろう。


「で、恥ずかしくて告白できなかったと……」


 すずはそれにうなずく。


「はぁ……」


 どうしようもないくらい、大きな溜息が出た。呆れ返ってものもいえない。

 恥ずかしいからという理由だけで告白できないでいるのなら、仮に付き合ったり、結婚した場合、どうなってしまうのだろうか。まともに生活することができなくなるのではないのだろうか。

 この子の将来が今からとても心配で、不安だ。


「まあ、過ぎたことはしょうがない。所詮ヘタレなすずにはムリだったわけだし。じゃあ、そういうことだから、明日から私たちはただのクラスメイトね」


 本来ならこうなるはずじゃなかったのだが、こうなってしまっては仕方がない。

 約束は約束だ。約束は守るためにあるもの。交わした約束はちゃんと守らなければいけない。

 だから明日から私はすずと友達をやめる。


「えっ!? 冗談でしょ? 冗談……よね?」


 やっぱり予想どおりの反応を見せた。

 流石さすがに何年も一緒にいれば、なんとなく考えてることがわかる。そうやって泣きつけば、許してくれるだろうと考えているのだ。いつもなら許していたかもしれない。でも、今日という今日は絶対に許さない。許してはならないのだ。

 だから、私は心を鬼にしてこういった。


「ううん、本気。明日から本当に友達をやめる」


 私は真剣な眼差しで彼女を見つめそう言った。

 絶対に甘やかさない。ちょっとでも隙を見せると、すぐにそこに漬け込んで甘えてくる。そして、うやむやにしたままにする。それで許されるはずがない。


「いくらなんでも強引すぎない……? ねえ、考えなおしてよ!」


 すずもすずで引く気はないようで、必死に抵抗している。

 やはり彼女も彼女でここまで引かないということは、それだけ私のことをかけがえのない友達と認識してくれているということなのだろう。そのことは純粋に嬉しい。

 でも、だからといって許しはしない。当然、考えなおしもしない。もう今日という今日は決めたのだ。


「ダーメ! 約束は約束!! 今日はまだ友達でいてあげるから」


「そんなぁ……」


「それでも友達でいたいんだったら、約束通り常葉さんに告白すること! しない限りは絶対に考えなおさない!」


 私はきっぱりと彼女にそう宣告した。

 だが、すずもすずで頑固なようで、その後も何度か、考えなおすように迫ってきた。ならばと、私も私で頑固者になり、決して意思を変えようとはしなかった。

 これぐらいしないとすずはダメなのだ。すずは最初から勝負することを諦めている。片思いのままでキレイに終わらせようとしている。そんなのズルだ、現実から逃げている。それから脱却するためにも、私が心を鬼にしなければならないのだ。

 正直な話、自分でもバカなことをやっているということはわかっている。結局、自分にも痛い目を食らうことは目に見えているからだ。でも、それほどのことをしてでもやらなければならないのだ。そうしなければ――

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