9話「お姉ちゃんで遊ぼう!」
お姉ちゃんの私に対する思いを探ぐるため、今日からいよいよ本格的に動き始める。
まずはお昼の時間。今日は例の件で取られるということはなかった。どうやら昨日でそれは終わったみたいで、今日が本番らしい。たぶんどこかで亜弥ちゃんの手料理を食べていることだろう。
そんなおかげもあって、今日はお姉ちゃんを独占することができた。でもそれは結局、亜弥ちゃんの問題が解決にしたに過ぎない。
それに、ついに今の今までお姉ちゃんとの2人の時間でも、あの不安がよぎるようになってきた。だからこそ、昨日襟香ちゃんに教えてもらったように、姉妹のその先に行ってしまおうと思う。そのためにもまずお姉ちゃんの気持ちを確認しなくては。
今日は昨日バレたということもあって、まあ亜弥ちゃんが来るということはないだろうけど、あえて人気のない教室に変えた。昼食も食べ終え、一息ついているところに私はいざその確認を始める。
「ねえ、ちょっと訊きたいことがあるの、こっち向いて」
「え、ええ……?」
お姉ちゃんは何がなんだかわからないまま、私の方へと向き変える。
「お姉ちゃん、好きな人いる?」
そして直球でいきなり核心に迫るようなことを訊いていく。
しかももしこれで私のこと好きだとしたら、ものすごく意地悪なそんな質問を投げかける。
「え、え? 何、どうしたの急に?」
対して、突然の恋バナに困惑している様子のお姉ちゃん。
「いいから、答えて」
理由を訊いてくるお姉ちゃんに対し、私は強引に押し切る。
ぶっちゃけこれで答えてくれなければ、一か八かの賭けをしなくてはいけなくなる。それだけは避けたい。だって、それで好きじゃなかったら、逆に私たちの関係は永遠に終わってしまうから。
そんなのは嫌だ。一番望んでいない結末なのだから。危険なつぼみは今のうちに摘んでおきたい。
「い、いい、いないわよ」
私の心配をよそに、お姉ちゃんは普通に答えてくれた。
だが、お姉ちゃんは嘘をついた。いくらなんでも私たちは姉妹、嘘を見抜けないはずがない。
まあそれ抜きにしても、お姉ちゃんの嘘はわかりやすい。そう言った後に、唇をギュッと口の中に入れるクセがあるから。
「へーいるんだー」
でもそうなると、確実に誰か一人に恋心を抱いているということがわかった。これは面白くなってきた。もっとお姉ちゃんで遊んじゃおう!
「ちょっと、ちゃんと聞いてた? 私はいないっていったでしょう?」
「うん、私に嘘は通用しないよ。いるんでしょ?」
「うっ……ううぅ……はい……」
翻弄されているお姉ちゃんかわいい。
ああ、ダメだ。私の悪戯心がくすぐられてしょうがない。もっともっと困らせたくなってくる。あれ、私って意外とS……?
「それは誰?」
とりあえずその意中の人を単刀直入に訊いてみる。
「そ、そんなの言えるわけ――」
「じゃあ、ヒントちょうだいよ!」
予想通りに、言ってはくれないとわかったので、私はヒントという名のお姉ちゃん遊びを続行することにした。いわば、この間の襟香ちゃんの答え合わせに近い感じ。
「ひ、ヒント……?」
「その人は、私の知っている人?」
まずは知り合いか他人かということだ。
後者であれば、私の知らないところで出会いがあったということになる。でも、四六時中一緒にいるわけだから、十中八九前者だろうけど。
「は、はい」
予想通り前者であった。これは本当、嘘はついていない。ということは私の知っている人。一応、これが私だったとしても条件は満たすはず。
「その恋は実ってないし、破れてもいないよね?」
まず実っているのは確実にない。もし答えが私以外の人だったら、私に隠れて付き合っているということになる。
でも、くどいけどずっと一緒にいる私がわからないなんてことはまずありえない。それに今までそんな素振りはまるでなかった。だからありえないと言ってもいいだろう。
後者の方は、仮に破れていたとしたら、これまた一緒に生活している私が気づかないはずがない。だからまだ実ってもいないし、破れてもいないという結論に至るわけだ。
「どうして相手もわからない由乃がそんなこと言えるのよ」
「なんとなくそう思っただけ、答えて」
なんて曖昧な答えで返事する。
「はい、当然実ってはいませんしーたぶん破れてはいないと思いますぅー」
若干やけくそ気味にそう答えるお姉ちゃん。それでも嘘はいっていない。
だとするならば、後者からもう襟香ちゃんカップルや亜美ちゃんカップルの線は消えた。となると……もうかなり人数は絞られてくる。
「その好きな人とは付き合いは長い?」
「は、はい」
これも正解。そうなれば、もう当てはまる人はごくわずか。
さあ最後の、確実に分かるであろう究極の質問をしよう。
「……それは私?」
私は自分を顔をお姉ちゃんの耳元まで寄せ、そうそっと囁く。
「うぇッ!?」
ビンゴ。
ふふ、ふふふ。どうしようニヤニヤしてしまう。嬉しくて仕方がない。私とお姉ちゃんが同じ想いだったなんて、これほどまでに幸せなことはないだろう。
よし、これで答えは導き出せた。あとは――
「ね、ねえ、由乃、最初から分かってて――」
困惑しながらも、そう質問しようとするお姉ちゃん。
だが、私はそれを自分の手で口を抑えることで遮る。そして――
「ねえ、お姉ちゃん。今日の夜に寮の屋上に来て。話したいことがあるの」
再び耳元で優しく囁く。なんかこれすごくエロいし、制圧感がたまらない。すっごく快感を覚える。
「……ええ、わかったわ」
流石にこれには恥ずかしさが爆発したのか、照れてしまってるお姉ちゃん。耳までまるでタコのように真っ赤にして。
ああ、かわいいかわいい。もう私は大満足だ。可愛いお姉ちゃんも見れたし、弄って欲求は満たせたし。
さあ、後は本番を待つだけだ。私が私のために、関係を進展させよう。




