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おもいあい。  作者: 瑠璃ヶ崎由芽
第3章『よしゆの』
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6話「幸せな時間……」

 今日はお姉ちゃんが協力してくれるということもあってか、今少し落ち着いた気持ちの朝を迎えられた。

 流石さすがに協力があれば、ある程度の2人だけの時間が確保できることだろう。それが今から私にはとても楽しみでしょうがなかった。


「おはよーお姉ちゃん」


 私はベッドから降りて洗面所へと向かう。そしてその途中、いつものようにキッチンにいるお姉ちゃんに挨拶をする。


「あら、おはよう由乃ゆの、今日も2人で行くのよね?」


「うん、もちろん。それに『できる限り私との時間を配慮する』って言ったんだから、ちゃんと責任とってよね?」


「わかってますよー」


「ならよろしい」


 これで言質げんしつはとった。存分に有言実行してもらおう。そうすれば、この今抱えている感情もきっとどこかへ消えてくれるだろうから。


「とりあえず朝食作るから、由乃ゆのは顔洗ってらっしゃい」


「はーい」


 私はこれからのことに心を躍らせながら、洗面所へと向かった。それからお姉ちゃんの作った朝食を食べて、制服に着替えて2人きりで寮を後にする。



「――ねえ、由乃ゆの……」


 それからお姉ちゃんとの2人きりの時間を堪能していると、お姉ちゃんはどこか既視感のある言い方で、同じ話の切り出し方をする。

 

「ん、何?」


「やっぱり、この繋ぎ方は変わらないのね……」


 もはや諦めたような表情で、そんなことをぼやく。

 今日も今日とて繋ぎ方は相変わらず恋人繋ぎ。でも繋ぐ時にお姉ちゃんの方も普通に受け入れてる辺り、大概だと思うけど。


「あたりまえでしょー? 誰のせいでこうなってると思ってんのー」


 それは言わずもがな、お姉ちゃんである。お姉ちゃんのせいで今私はこんなにも不安になっているのだ。その責任はしっかりとってもらわないと。


「うー……それ言われると……」


 痛いところをつかれて、言葉をにごすお姉ちゃん。お姉ちゃんが原因であるが故に、私がお姉ちゃんに強く出れてなんかいい気分だ。


「だから私との時間を大切にしてね」


「はいはい」


「もちろん今日もお昼は2人だからね?」


 お姉ちゃんもわかっているとは思うが、一応念には念を入れて確認をとる。

 こうでもしておけば、万が一お昼を誘われても断る口実ができるだろう。


「ええ、もちろんよ」


「……ふふ、お姉ちゃん今恥ずかしいしょ?」


 今のお姉ちゃんの感情が手をとるように分かる。人の目線が余程気になるのか、周りをチラチラ見て、それで登校中の生徒と目があったのか、すぐに目をこちらへと背け、顔を赤らめている。


「当たり前でしょう!? こんなの……」


 やばい、お姉ちゃんをもてあそぶのがすごい楽しい。

 ほとぼりが冷めても、こいうことしてみようかな。まあ怒られるってのが最終的なオチなんだろうけど、ちょっと快感だからやってみたい。


「――あ、やっほー! よっしぃー、ゆーのん!」


 そんな時だった。後ろから独特のあだ名で呼ぶ聞き馴染みの声が聞こえてきてしまった。

 それに私は心が締め付けられて、思わず足が止まってしまう。


「あ、おはようございます、亜弥あやさん!」

「お、おはよー」


 振り返るとそこには亜弥ちゃんを筆頭にいつものメンバーが全員勢揃いだった。これで私とお姉ちゃんの2人だけの時間は終了。その証に、呼ばれた瞬間に即座にお姉ちゃんは手を離した。

 もちろん怪しまれないためとはいえ、その行動に私の心はさらに締め付けられた。それはもうがけから突き落とされたみたいに、絶望におとしいれられた。


「例の件で訊きたいことがあるんだけどさー、いい?」


 襟香えりかちゃんもいるからなのか、『例の件』なんていう秘密の言葉を使う亜弥ちゃん。なんとなく2人だけの秘密を共有している感じがして、やはり亜弥ちゃんに嫉妬してしまう。


「え、ええ構いませんよ」


 その頼みに、了承してしまうお姉ちゃん。その結果、結局のところいつもと変わらない登校風景となってしまった。

 お姉ちゃんと亜弥ちゃんは先頭へ行き、亜美ちゃんとまりちゃんと襟香ちゃんが2番目、わざと自ら最後尾へと下がり、距離をとる。それぞれがそれぞれの列で他愛もない話している中、私は若干の疎外そがい感を覚えながらも、黙々(もくもく)と学校へと歩を進めていた。

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