表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おもいあい。  作者: 瑠璃ヶ崎由芽
第2章『あみまり』
28/117

12話「作戦会議」

Φ


 わたくし襟香えりかさんたちの部屋へと向かっていた。

 帰ってきた亜美あみさんの様子がおかしかったので、襟香さんに何か事情を知っていないかと訪ねに来たのだ。

 私は一呼吸入れてから、インターホンを押す。


「あれ、由乃よしのちゃん? どうしたの?」


 しばらくして、扉が開くと、そこには襟香さんと亜弥あやさんの姿が。そして私を見るやいなや、襟香さんが不思議そうな顔をしてそう訊いてくる。


「いえ、先程亜美さんが泣いて帰ってきまして……しばらく私に泣きついた後、そのまま眠ってしまわれたので、結局事情が訊けずじまいでして。もしかするとまりさん関係で何かあったのではないかと思い、伺った次第なのですが……」


「そうなの、由乃よしのちゃん! 実はまりちゃんが謝ったはいいんだけど、亜美ちゃんがそこで偉そうな態度をとっちゃって、それがまりちゃんの逆鱗げきりんに触れたみたいで……」


 襟香さんは事情を端的に説明をする。

 どうやら今回の原因は完全に亜美さんにあるようですね。


「なんと、そんなことが! これは大変な事態になってしまいましたね……」


「うん、まりちゃんもカンカンで、謝る気が全く失せちゃったみたいだし」


 それもそのはず。自ら謝りに行ったというのに、そんな態度をされてしまえば、謝罪の念より怒りの方が上回ってしまう。

 しかもまりさんの方は恐らく、元の生活に戻るために仕方なく譲歩したのでしょうから、余計に怒りが増していること容易に想像ができます。

 このままでは、お二人の関係が永遠に終わってしまうかもしれない。私の脳裏にそんな嫌な予感がよぎる。


「……ここはひとつ、私たちがお節介をしましょう。お二人とも、少し時間を頂けますか?」


 そんな最悪の事態にならぬように私たちの手で止めなければ。

 それが例え『お節介』と言われようとも、お二人の関係が終わってしまうことを避けたいから。


「うん、大丈夫だけど?」


「では、私と由乃ゆの、襟香さんと亜弥さんで作戦会議をしましょう。そうですね、どちらかの部屋では当事者がいて分が悪いですから、コミュニティルームへ行きましょうか」


「うん、わかった。すぐに行くから待っててね」


 私はそれに相槌あいづちをうち、一旦自分の部屋へと戻り、部屋で心配そうに亜美さん見守っていた由乃ゆのにも事情を説明して、連れていく。そして、すぐさま1階にあるコミュニティルームへと、足を運ぶ。


「――さて、皆さんが集まった所で、今回の件について私といたしましてはこれを穏便おんびんに解決し、お二人には以前のような関係を取り戻してほしいと考えています」


 コミュニティルームに集まったところで、私は自らの考えを皆さんへ伝える。


「うん、やっぱりこのままだとよくないよね」


「そうそう、まりりんたちは互いがいないと生活が成り立たない関係だしね。もう既にその兆候が出始めちゃってるし」


 皆さんも私と同じ思いのようで、私の意見に賛同してくださる。


「はい、ですので今回の件について、私に指揮をお任せいただけないでしょうか?」


由乃よしのちゃんにはなにかいい作戦があるの?」


「いえ、作戦と言えるほど大層なものではありませんが、先程の2度目の喧嘩については、完全に原因は亜美さんにあります」


「うん、そうだね」


「どうしてそうなってしまわれたのか。それは亜美さんにはまだ謝る気がなかったからではないでしょうか。ですから、一方的に謝られ、その結果自らが正しかったんだと勘違いし、あのような結果になってしまったと考えます」


 あれほどまでにまりさんのことをけなし、自分が正しいと豪語していた亜美さんが謝る気があったとはとても思えない。

 でも、それではまりさんが納得いかない。それが根本的な原因。

 言ってしまえば、まだ準備の整っていていない段階で、まりさんは謝ってしまったということ。


「あーみんの性格を考えると、そうだろうねー」


「ですから、今度はお二人がちゃんと共に謝罪する気にさせた上で、仲直りをしてもらうのです。それを私たちで説得する、というのが作戦です」


「でも、お姉ちゃん。それって可能なの? 亜美ちゃんに関しては全く謝る気がなかったし、まりちゃんに至ってはもう謝る気なんてさらさらないと思うけど」


「まず亜美さんに関してですが、先程も言ったとおり、今回のことでこたえたのか、泣いてらっしゃいました。余程まりさんに酷いことを言われて辛かったとみえます。ですから、わずかにでも反省する気持ちが生まれているのではないでしょうか。そこをつけば亜美さんは大丈夫だと思われます。ただ――」


「それでも、まりちゃんは……厳しいよね……」


 由乃ゆのは神妙な面持ちで、そう言った。

 たしかに由乃ゆのの心配どおり、亜美さんほど単純には行かないとは思う。襟香さんから聞いた様子で判断しても、それは容易に想像がつく。


「ええ、まりさんは謝る気でいたのにも関わらず、あのような結果になってしまわれました。更に加えて、今回の件で悪いのは亜美さんの方だとわたくしは考えます。なので説得には難航するかと……」


「でさ、由乃よしのちゃん、具体的にはどうするの?」


「はい、まずは襟香さんたちがまりさんに説得を試みてください。もちろん一筋縄ではいかないでしょう、それでもめげずに説得し続けてください。その間に私と由乃ゆので亜美さんを説得しようと思います」


「了解。できるかどうかわからないけどやってみるよ」


「もし亜美さんの説得が終わってもなお、まりさんの説得が難航するようであれば、わたくしたち四人で説得に入ろうと思います」


「わかった。よし、作戦実行だね!」


「はい、まりさんたちの関係が修復することを祈って頑張りましょう」


 皆さんの思いが1つに固まり、強い結束となった。これで是が非でもまりさんを説得しよう。

 そのためにも私が指揮なのだから、色々なパターンでまりさんを説得する方法を考えなくては。

 まりさんたちのためにも、私たちのためにも、ここは一丸となってまりさんの心を動かそう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ