15話「私の想いを……あなたへ」
さあ、ついに来てしまった放課後の時。
私は終会が終わった後、亜弥ちゃんと目も合わせずに、一目散で屋上へと来てしまった。もう既に私の胸は尋常じゃないくらいに、速く鼓動を刻んでいる。私は彼女が来るのを今か今かと待っていた。その間も、自分の心を落ち着けるために、何度も深呼吸をする。
「わわっ、来ちゃったよ……!」
そしてしばらくすると、屋上の扉が開く音がする。
来てしまったのだ、彼女が。私はそれに思わず息を呑む。
「待った?」
まるでデートの待ち合わせの時の恋人みたいな台詞を吐く亜弥ちゃん。何の気なしにこちらへとやってくる。私はそれに対して、どんどんと胸が高鳴っていくのを感じていた。
「ううん」
「そっか、で、話って?」
「あ、ああ、あのね――」
ダメだ、いざ告白しようとすると、どうしても緊張してしまう、口元が震えてうまくしゃべれない。でもやらなきゃ、きっと亜弥ちゃんもこんな感じだっただろうから。
「ふふ、落ち着いて、えり」
亜弥ちゃんは軽く笑って、私の手を握る。朝とは違い、そのおかげで少し私の心が落ち着きをみせる。それが私の背中を押してくれる。
「私も……私も、あ、亜弥ちゃんのことが……好きです!これが亜弥ちゃんの告白の答え、少し遅れたけど」
言えた。私の心の想いを亜弥ちゃんに伝えることが出来たのだ。これで、ようやく私たちは前に進むことができるのだ。
自然と心から嬉しさがこみ上げてくる。
「ねえ、私に気を遣ってない?」
どこか申し訳無さそうにそう問う亜弥ちゃん。
「ううん、そんなんじゃないよ。私は心から亜弥ちゃんのことを愛してる」
亜弥ちゃんの力で心が平常に戻ったからか、普段では絶対言わないような、そんな恥ずかしい言葉を口にしてしまう。
「そんな、面と向かって言われると恥ずかしい……」
さっきまでの私のように、亜弥ちゃんは照れた顔を見せる。それにまた私の心はたまらなく惹かれていた。
「でも本当のことだもん」
「そ、そうだよね」
「む、まだ信じてない」
亜弥ちゃんはまだどこか、半信半疑な顔をしている。やはりまだ心のどこかで信じきれない部分があるのだろう。
私もそうだった。私も最初告白された時は信じられなかったから。
「だってさー、私も信じたいんだけど……でも信じられなくて……今でも夢なんじゃないか、ってちょっと思ってる……」
「じゃあ、こうする」
「ん、んん!?」
私は亜弥ちゃんの肩を抱き、その唇を無理やり奪う。突然の出来事に、驚いた様子の亜弥ちゃん。私はそれを無視してキスを続ける。これは好き同士にのみ、許された特権。それを私は早速行使する。
して気づくこと、それはやはり、私は亜弥ちゃんが好きだということ。した瞬間から溢れ出すこの幸せな感情、そしてついついその柔らかい唇の感触を何度も求めてしまうこの欲求、もはや好き以外の何もでもないだろう。
最初はしどろもどろだった亜弥ちゃんも亜弥ちゃんで、感情が高ぶったのか、同じように私を求める。それで私も同じように感情が高ぶり、強く抱きしめ、無我夢中でそれを続ける。もはや私は幸せという感情に包み込まれ、まるで天国にでもいるような気分になっていた。
ああ、この心地よい時間がいつまでも続いたら、なんて思うほどにそれは私を中毒にさせた。
「……これで信じてもらえた?」
しばらくして、私はそっと唇を離し、亜弥ちゃんを見てそう訊く。その渦中の亜弥ちゃんは冷静なって、自分たちがしていたことを理解したのか、頬が徐々に徐々に真っ赤になっていき、とてつもなく恥ずかしそうにしていた。たぶん、今私の顔も同じくらいに真っ赤っ赤なことだろう。
「えり、意外と大胆なんだね……ちょっとびっくりした……でも、ありがとう、これで疑念がハッキリと確信に変わった」
私の大胆な行動のおかげで、どうにか亜弥ちゃんに納得してもらえたようだ。
「よかった」
「でもなんて言うかね、まだ実感が湧かないんだ」
「今はそう焦ることはないよ。私たちのペースでゆっくりと歩いていけばいいんだから」
十人十色といって、人にはそれぞれの人生の歩み方があるのだから。私たちの私たちらしい進み方で歩んでいけばいいのだ。そのペースが例えどんなにゆっくりであろうと、それをとやかく言われる権利はどこにもないのだから。
「そうだよね……でも、なんかごめんね」
「ん、何が?」
「私の告白のせいで、えりずっと考えてたんでしょ?私のことが好きなのかどうかって。それで色々と困らせちゃったみたいだし」
「ううん、大丈夫だよ。それに結果的に亜弥ちゃんと恋人になれたんだから、怪我の功名ってやつだよ」
「それならよかった……あの告白した時、えり困ったような顔してたからさ、すごく不安だったんだ。でもそれももう終わりだね、だって私たちは恋人になれたんだから」
「そうだね、これからは楽しいことも、嬉しいことも一緒に味わえるし、辛い時も、苦しい時も一緒に乗り越えていけるもんね」
「うん!」
私に満面の笑みを見せる、亜弥ちゃん。
「――えり大好きだよ」
亜弥ちゃんはそう言って、私を抱き寄せる。
「うん、私も」
私もそれに続いて、手を亜弥ちゃんの背中へ回す。
今、私はたまらないほどの愛を感じている。幸せという幸せが心の底から、とてつもないぐらいに溢れだしていた。もはやそれは心を満たし、溢れてしまうぐらいの幸せの量だった。それほどまでに、私は亜弥ちゃんと恋人になれたことが嬉しかった。
そして、この幸せがいつまでも、いつまでも続きますように――その願いを込めて、私はその愛しの彼女をギュッと強く強くいつまでも抱きしめていた。




