表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おもいあい。  作者: 瑠璃ヶ崎由芽
第9章『さおさき』
116/117

14話「新たなる一歩」

 ついにこの時がやってきた。わたくし沙希さきがようやく会える時間がやってくるのだ。私は未だかつてないぐらいに緊張していた。こんなに緊張するのは初めてかもしれない。全生徒の前に立って話をするのも、生徒会選挙でアピールした時だって今の比じゃない。今のほうが遥かに緊張している。今は一応朝の生徒会の仕事の時間だけれど、気がそぞろでもう頭の中は沙希のことでいっぱいだった。早く会いたい……そんな焦るような気持ちが私の心を支配する。もう一秒だって待ちたくない。愛しい大切な沙希の顔を見たい。彼女の笑顔が見たい。


「――ッ! 来た……?」


 そんな思いの中、教室の外からこの教室に向かって足音が聞こえてくる。それに呼応するように、私の胸の鼓動も高鳴っていく。そしていよいよ教室の扉が開かれた。


「お姉さまッ!」


「沙希ッ!」


 その瞬間、私たちはお互いの名前を呼びながら、すぐさま走っていき、そのまま抱きしめあった。


「会いたかった……ホント、会いたかった」


「私もよ、沙希……もう二度と会えないんじゃないかと思ったわ」


 時間にすればたいした期間ではないけれど、私たちにはもはや永遠のように長く感じられた時間だった。だからこそこの再会がこの上ないほどに嬉しく感じられた。そして同時に言うことの聞かなくなっていた体もすっかりと元通りの体になっているがわかった。あれだけ苦しめられたこの病気も後もあっさりと治ってしまう、しんなあっけなさを感じていた。


「はい、お姉さま。私もそう思いました」


「ねえ、沙希。聞いて? 私ね、沙希のことが好きなの」


 でも病気はこれだけでは終わらない。だから私はこの恋患いに終止符を打つべく、沙希に私の想いを告げる。


「これはもちろん単に、幼馴染とか友達とかそういうのではなく、1人の人として、恋愛感情ありで、あなたのことを愛してる」


 嘘偽りのない真実の言葉を沙希にぶつけていく。


「お姉さま……!」


「だから沙希。聞かせて頂戴?あなたは私のことをどう思って?」


「はい、私もお姉さまのことが大好きです!この世界中の誰よりも!」


 私の大好きな笑顔で、そう答えてくれる沙希。その笑顔を見て改めて、私は沙希が好きなんだと実感する。昨日まではいくら状況的にそうだと思っても、確信のようなものが持てていなかった。でもこの瞬間、私は自信を持って言える。沙希を愛していると。


「沙希!」


 私は沙希の名前を呼びながら、沙希を引き寄せてギュッと抱きしめる。もう絶対に離したくない。会えなくなるなんて嫌だ。あの夢で見た沙希が消えてしまう悪夢。沙希が私の傍からいなくなるなんて絶対に嫌だ。そう強く強く思う。


「お姉さま……」


 その思いが伝わったのか、それは定かではないけれど、お互いに顔見つめ合う体制になり、じっと顔を見つめ合う。そしてゆっくりと沙希が目をつぶる。まるで心が繋がっているかのように私のしようとしていたことを沙希も思い、それを待つ体制となる。もう胸が破裂してしまいそうなほど高鳴り、沙希を抱きしめている手が震えている。生唾を呑み込み、私は覚悟を決め、ゆっくりと顔を先の方へと近づけていく。そして数秒して、唇と唇が触れ合った。


「「ひゃああああっ!!!」」


 周りから聞こえてくる音など気にならないほどに、沙希との物理的な繋がりをこの胸に噛み締めていた。お互いにはじめてのそれ。柔らかく、温かく、幸せを与えてくれる。


「ごほん……あー……えーと……盛り上がっているところ悪いんだけど……みんないるからね?」


 それからしばらくして唇を離し、お互いにちょっと恥ずかしがりながらも見つめ合っていると、気まずそうにしながら先生が咳払いをして割って入ってくる。


「あっ! あぁ、あああ、えと、その申し訳ありません……」


 沙希との2人の空間に没頭しすぎて生徒会のメンバーがいることを完全に失念していた。先生の言葉で我に返り、顔を赤く染めているメンバーたちを見て、私も急に恥ずかしくなってきてしまう。あんな人に見せられないような恥ずかしいことを、まるでショーのように見せつけていたなんて……考えただけで顔から火が出そうだった。たぶん沙希も同じようだったみたいで茹でだこのように赤く染まっていた。


「で、これで晴れて病気は治ったということで、めでたしめでたしなんだけど……西風ならいさん」


「はい……?」


「あなたに10月の藤堂さんが引退するまでの間、生徒会の仕事を手伝ってもらいたいの。生徒会長補佐として。それなら大好きなお姉さまとも一緒にいられるし、どうかしら?」


 先生がそんな提案をする。こうすればたしかに生徒会で忙しくなっても沙希と一緒にいられる。


「はい喜んで!」


 沙希も異論はないようで、快く引き受けてくれた。


「ただし!

さっきみたいに生徒会に支障をきたすような行為は慎むこと。みんな顔真っ赤にしてるわよ……」


「はい、十二分に頭に入れておきます……」


「それと、末永くお幸せにね」


 こうして私たちの恋患いは終わりを迎えた。振り返ってみると、今回は何から何まで『最初からこうすればよかった』の繰り返しであった。あとから反省したところで、それは結果論に過ぎないけれど、今後に活かしていければなと思う。でも結果良ければすべて良しという言葉もあるのだし、今はこの得られた幸せを噛み締めていたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ