12話「妹の抱える思い」
麻衣ちゃんが寮に戻ってきて、お姉さまのこと、この禁断症状について大体の話を教えてもらった。お姉さまに心配をかけてしまったことは心苦しいけれど、また新しい希望が生まれた。先生という強力かつ、確実な協力者が出来たのだ。これで明日は確実に会えると思う。もう今からそれが楽しみでしょうがなかった。
「――2人って付き合ってなかったんだね、私てっきりそうだとばかり思ってた」
夜、麻衣ちゃんと他愛もない話で盛り上がっている最中、麻衣ちゃんがそんなことを口にした。
「えっ!? 私たちってそんなふうに見えてた?」
その言葉に思わず顔が緩んでしまう。やっぱり大好きなお姉さまと私の関係が認められることは素直に嬉しい。それは周りも認める仲の良さの証拠なのだから。それにちょっと自分では客観的に、あくまでもお嬢様に対する執事、長年一緒にいるけれど、それだけの関係という不安もあったから。
「もう沙希ちゃん、顔がニヤニヤしてるよー」
たぶんお姉さまに見せられないぐらいのだらしない顔になっているかもしれない。いけない、いけない。
「えへへーごめんごめん! 私としては昔からこんな感じだから、そう言われるのが意外で嬉しくて」
「でも、沙希ちゃんは関係を進めようとは思わなかったの?そんなに好きだったら、告白して恋人になればよかったのに」
「うん、まあ私としてはお姉さまともっともっと深い関係になりたかったけど、お姉さまが自身の想いに気づいてないってわかってたから……」
意外と完璧そうに見えて実は恋愛ごとに疎かったり、ちょっと抜けてるところがうちのお姉さまにはある。それを一番近くで見て知っていたからこそ、あと一歩を踏み出すことができなかった。たぶんその一歩さえ踏み出していれば禁断症状になんか悩まされなかっただろう。でもその一歩はたった一歩でも、私にとっては途方もなく長く、険しい道のりのよう思えていた。
「気づかせるのは?」
「しなかったかな。『安心』っていうか『保証』っていうか、お姉さまは絶対に私以外の人に恋愛として興味がないってのは分かってたから、まあそれに甘えちゃってた部分もあったのかなぁー」
それに今の関係でも十分に他の誰にもない『特別』が私の心を満たせていた。だから傍にいて一緒にいるだけでも私としても十分だった。結果論に過ぎないけれど、鈍感なお姉さまに消極的過ぎた私がいけなかったのかもしれない。
「そうだね。いつまでも曖昧な関係で居過ぎてるから、神様が怒って恋患いにさせたのかもね」
「ふふふ、そうかもねっ」
「でも明日会えることだし、元気になっていつもの日常に戻ろう!」
「うん!」
いずれにしても明日で全ての決着がつく。そうなれば、私とお姉さまは元通りの元気な状態になれる。そしていつも通りの日常へと帰っていくのだ。でも正直なところ、麻衣ちゃんの話もあったからか、その日常へと戻ってしまうことに、どこか残念に思うところがあった。結局のところ、会っただけではこの禁断症状は治らない。完治する事はできないのだ。だから日常へ戻ったところで、また再びその禁断症状がやってくるのは確実。それはまるでイタチごっこのように、発病と病気が治るのを繰り返すだけ。ならいっそ、それを理由にしてもいいからお姉さまとさらなる深い関係になれたいいのに――




