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おもいあい。  作者: 瑠璃ヶ崎由芽
第9章『さおさき』
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8話「邂逅」

 目を覚ますと、まず青空が広がっていた。とてもキレイな青色と、その空に浮かぶ白い雲たち。そこから目線を自分の周りへと向けると、辺り一面にはお花畑が広がっていた。わたくしはどうやらそこに横になって眠っていたようだ。私のいる場所だけ、円を描くように花のない地面になっていた。それははたからみると、葬儀の棺桶みたいに私の死をとむらうように周りに花が向けられているみたいだった。私は死んでしまったのだろうか、そんなことを思いながらとりあえず起き上がり、状況を確認する。すると、すぐ目に入ってきたのは、


「さき……? 沙希さき!」


 いつもの制服姿の沙希だった。いつものように元気な笑顔を振りまいて、私に微笑みかけてくれる。でもその距離は遠く、私のいる円からずっとできている1本の道の先、だいたい5mぐらい離れたところにいた。沙希を見た途端、私の体はまるで勝手に動くかのようにすぐさま立ち上がり、沙希の方へと向かって走り始めた。でも、それに呼応するかのように沙希も遠くの方へと逃げて行ってしまう。声は楽しそうに笑っているけど、今は追いかけっこなんてしてる場合じゃない。だから私は前のめりになって捕まえようと、何度も手を伸ばすけれど、あと数cmの距離がもどかしくて仕方がなかった。


「待って、沙希!!」


 大声で彼女の名前を呼ぶ。それでも沙希は一向に止まろうとはせず、遠くへ行ってしまう。さほど体力に自信のない私は、この追いかけっこはもう体力の限界で、立ち止まって膝に手をつき、肩で息をしていると――


「お姉さま、申し訳ありません。私はもう限界のようです」


 沙希は急に振り返り、悲しそうな顔をして私にそんなことを告げてくる。


「沙希……? 沙希っ!」


 沙希がそう言ったすぐ後に、沙希の体から粒子のようなものが天に昇っていくのがわかった。そしてそれと同時に、徐々に沙希の体が薄くなっていく。その光景を目の当たりにした瞬間、私は本能的に危機感を覚え、最後の力を振り絞って沙希の元へと走っていく。そしてもうその先が透けて見えるほどまで薄くなっていた沙希の体に手を伸ばし、掴もうとしたその時――

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