2話「交差する2つの思い」
文化祭まであと1週間と差し迫った頃。いよいよ学園は文化祭ムードに包まれ、本格的に生徒会も文化祭の仕事で忙しくなりだした。もちろんその長であるお姉さまはきっともっと大変なことだろう。その影響もあってか朝、お昼も生徒会の仕事に追われ、会おうにも会えない状況が続いていた。体育祭の前例もあって、私はこの状況に焦りを感じていた。このままでは危ない。体育祭の二の舞になりかねない。これ以上続くと、間違いなく『禁断症状』が出始めるだろう。そう思い、私は放課後の校門前でお姉さまをひたすらに待つ、という作戦に出ることにした。生徒はみんなこの校門を通るし、仕事が終わるのを待っていれば多少なりともお姉さまと会える時間は作れるだろう。
「――ありがとね、一緒に待っててくれて」
お姉さまを待つのを、ルームメイトの麻衣ちゃんが一緒になって待ってくれることになった。校門で1人で待っているというのは正直退屈で仕方がないから、話し相手がいた方が時間を長く感じなくていい。ただ『会いたい』というそれだけの事なのに、こうして一緒になってくれるのはホントに感謝しかなかった。
「いいよーそれに1人より2人の方が見逃す確率も減るだろうしさー」
「うん、そうだね。せっかく待ってるのに見逃しちゃったらただの時間の無駄だもんね」
「――ねえ、前から聞こう聞こうと思ってたんだけど、その症状(?)っていつ頃からでるようになったの?」
「えーと、たしかそれかなって思うのは小学校ぐらいから出てたよ。特にわかりやすかったのは私が6年生と、中学3年生の時。ちょうどお姉さまがいない時期だね」
「でも、それって1年まるごとでしょ? どうしてたの?」
「これもあくまで予想でしか言えないんだけど、たぶんあの頃って症状が出るまでに期間が長かったように思うんだ」
昔はだいたい1週間ぐらい会わない日が続いても何ともなかった。お姉さまがテストとか行事とかが重なって、もっと長く会えなくなって初めて症状が出るほどだった。それを踏まえると、やっぱりどんどんと短くなっている気がする。
「ふむふむ」
「土日とかも予定がない限り会ってたりしたからだと思うんだけど、だいたいあっても年に1、2回ぐらいしかそういう症状は出なかったんだよねー」
学校が別で会えないとしても、土日なら完全に休みだからどちらか1日ぐらいなら簡単に会う事ができる。それもあったから、中学まではそこまでこの禁断症状はさほど危惧していなかった。でも高校になってから、お姉さまも生徒会に入ったこともあって会えない機会も増えたのもあるけれど、それでも1週間もしないうちに発病することが多くなっていった。
「じゃあ、やっぱり頻度が多くなってるんだーでもどうしてなんだろうねぇー?」
「わかんない。というよりそもそも、なんでこんな症状が出るのかもわかってないからねー」
元を辿れば、そもそもこの『禁断症状』と呼ばれるものがなぜ私たちだけに出ているのかもよくわからない。その原因となる何か思い当たる節もないし、周りに同じような症状が出ている人を見たことがない。調べようにも症状が抽象的すぎて、特定にまでは至らない。だから結局わからないまま今に至るという感じだ。
「そっかー大変だよね」
「でもこれが出ることによって、私たちはお互いなしには生きられないって証明されてるみたいでちょっとうれしくもあるんだよね……」
この未知の病気で、まともに生活出来ないほどまで酷い時はなってしまう。それは逆を返せばお姉さまなしでは生きられないということ。それが私たちの関係性を強固なものだと言い表しているようで、とても嬉しかった。迷惑の部分も多いけれど、お姉さまとの唯一無二のもの、他の誰にもない私たちだけのものという感じで、優越感も凄かった。
「のろけちゃってーこのこのー!」
「えへへ」
なんて他愛もないやり取りをしている事もあってか、この待つという時間はそう長くは感じられなかった。だがいくら待っても、もう下校時間ギリギリになっても一向にお姉さまが姿を見せることがなかったのだ。不安に思い、麻衣ちゃんの提案もあって念の為にお姉さまに連絡を入れてみると、今日は不運にも学外で生徒会の仕事をしていたようで、そのまま現地解散していたらしい。しかもさらに不運なことに、お姉さまは私に会うために私たちの寮に来ていたらしく、私が素直にそのまま帰っていれば普通に会えたというオチまでついてしまった。ホント、これほどまでに自分のしたことを後悔した日はないだろう。普段いっつも一緒に会えているから携帯でやり取りするという感覚がなかった。そのためこんなことが起こってしまったと……なんとも悔しくも悲しい気持ちに苛まれる私だった。もう寮に帰る頃には外出時間も過ぎているだろうし、今日は完全にお姉さまとは会えない決定だ。私は麻衣ちゃんに励まされながらも、落ち込みながら寮へと帰っていくのであった。




