歌仙「初雪の巻」
歌仙「初雪の巻」(流出子(流)・冬泉(泉)・いづみ(い:和泉))2016/11~2017/01月
一枚目の表―――――――――――――――――――――――――――
発句【冬】(初折) 初雪や犬も炬燵で丸くなり(流)
脇 【冬】 ともに眼の冬霞む頃(泉)
第三【雑】 楽の船京の調べをひゞかせて(い)
四 【雑】 夜空煌めくスペースデブリ(流)
五 【秋】(月) 月影の千々にくだけて帰り来ぬ(泉)
六 【秋】(折端) 秋蝶追へば森の入口(い)
一枚目の裏―――――――――――――――――――――――――――
一 【秋】(折立) 敗荷に大粒の雨転がりて(流)
二 【雑】 七面前でビー玉はじく(泉)
三 【雑】(恋) 恋人も早替わりする立役者(い)
四 【雑】(恋) 背中合はせではにかんでゐる(流)
五 【雑】(恋) 橋は落ち君は無名に巴塚(泉)
六 【雑】(恋) ゾンビになればなほも捜して(い)
七 【夏】 森巡りふうと吐く息 木下闇(流)
八 【夏】(月) 壺の底から夏の月見む(泉)
九 【雑】 沸沸と五右衛門風呂の煮え滾り(い)
十 【雑】 阿片塗れの満鉄利権(流)
十一【春】(花) 下貼りに繚乱たりし悪の華(泉)
十二【春】(折端) 蜂迷ひこむスカートのなか(い)
名残り(二枚目)の表――――――――――――――――――――――
一 【春】(折立) 物言はぬ人形の首に春ショール(流)
二 【雑】 アンドロイドが長考に入り(泉)
三 【雑】 トイレットペーパー予備の見当らず(い)
四 【雑】 ワインボトルのポテンシャル型(流)
五 【新年】 はつむかしつひに埃を払はざる(泉)
六 【新年】 姫始にも駄賃せがまれ(い)
七 【新年】 皺まさり淑気に満つる妻の顔(流)
八 【雑】 涙流して宴して(泉)
九 【雑】 最後まで塩対応のホテル側(い)
十 【雑】 知らぬ神より馴染みの鬼か(流)
十一【秋】(月) 十字路にしづしづと月降りてきて(泉)
十二【秋】 撰ばれてある恍惚の秋(い)
名残り(二枚目)の裏――――――――――――――――――――――
一 【秋】 蓑虫の揺れを見に来よ風の中(流)
二 【雑】 香のみ残りて麤皮むなし(泉)
三 【雑】 赤鼻のひとを屋敷に引取れば(い)
四 【春】 石鹸に映る生霊の影(流)
五 【春】(花) 花の庭ごっこ遊びのまま老いて(泉)
挙句【春】 かの世の亀はとことはに鳴く(い)
――――――――――――――――――――――――――――――――