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リアクター  作者: 3号
17/21

守りの意志

ブクマありがとうございます!


元気でます!!





「あーもう、倒れてくださいよ!」


 三度響く発砲音。身体の正中線沿いに銃弾を受けたスターの巨体が石畳を揺らして沈む。

 虫にも人にも似たその巨体を足先でつついて死亡を確認し、夕日は泣きそうな顔で無骨なリボルバー拳銃を手に横の先輩へと泣きついた。


「九渚三位、このままじゃ死んじゃいますよ!」

「黙って処理しろ夕日さん! ったくあの女の子に聞いたとおりに商店街を重点的に張り込んでいたのが正解だな!」


 話しながら振るうは刃渡り十五センチ程のサバイバルナイフ。そのナイフはスターの甲殻に鋭く突き立つと、横一文字に切り裂いた。

 だが、それでは浅い。

 傷口から流れる血を意に介さずに振るわれる豪腕を背後への跳躍で避わし、九渚は大きく息をついた。


「やっぱり解放無しじゃ厳しいか」

「九渚三位、許可は貰っていませんよ?」

「そんなもん事後承諾だ。じゃないと人命に関わる。いいから君も解放しておけ責任は俺がとる」

「はい!」


 背後からの元気のいい返事。それに微かに笑うと九渚は巌のような顔を更に鬼のようにしかめ、ナイフで自分の左腕を一気に切り裂いた。


「俺の血を吸い目覚めろ「刃山童子」! 叩き斬る刃をよこせ!」


 瞬間、刃が脈動した。

 左腕から流れ出る血は重力に逆らい刃へと集約し、やがて一本の巨大な武器を作り上げる。

 対策員、対スター用兵装「血装」。

 適応者の血を捧げることで発動し、スターを切り裂くに足る戦力を提供する武装。

 蠢く血は先に至るにつれて広くなり、波紋には血管のような脈動が広がる。

 時間にしておよそ数秒。その間に九渚のナイフはその刃渡りを刀ほどにも伸ばした無骨な鉈へと変貌を遂げていた。

 先程裂いた左腕の傷は塞がっており、左拳を開いて閉じてと調子を確かめると、おもむろに九渚は右手一本で鉈を一閃した。

 九渚に襲いかかろうとしていたスターが一体、脳天から股下までを割断されて躯と化す。

 そのまま刃を跳ね上げて、横で子供を庇う母親を狙おうとしていたスターの上下を分断する。


「こちらは対策局です! 子供を連れて避難してください!」

「は、はい!」


 子供が必至に手を伸ばすのを見るに、今斬ったスターは子供の知り合いだったのだろう。後味の悪い光景に舌打ちが漏れ、誤魔化すように鉈を構え直す。

 スターを討伐し人を守ると決めたときに、この後味の悪さは覚悟していただろうと自分に言い聞かせて。

 しかし、誰しも自分の様には割り切れないのも理解している。


「きて「巴姫」! お願い力を貸して!」


 まるでボウガンの様に変貌した銃を発砲し、逃げる人を守ろうとする夕日の足が微かに震えてるのを九渚は見逃さなかった。


「夕日さんは民間人を援護しつつ退避! ここは俺が受け持つ」

「そんな九渚三位! 一人でなんて」

「先日訓練終わったばかりの新人じゃ足手まといだ退避しろ!」


 正直この展開は夕日には早すぎる。

 当初の予定では集団戦どころか、夕日に戦わせるつもりもなかった。件のスターを討伐する現場に同席させて、覚悟を固めさせるつもりだったのだ。

 そう考えると震えつつもスターに反抗できている夕日はとても優秀な後輩だ。

 だからこそ、今は危険から遠ざける。


「民間人護衛も大事な任務だ。頑張ろうという想いは汲むが今は退け」

「九渚三位・・・・・・」

「あと戦闘中にそれは長い。九渚でいい。ほら退け退け!」

「はい九渚さん!」


 夕日はぴしっと敬礼をしつつ、民間人を先導して後退を始めた。

 あの素直さ、鍛えたら延びそうだ。そう考えたら先が少し楽しみになる。

 しかし全てはこの状況を乗り越えたらの話だ。


「中心のスターを、打つ!」


 幸い、影響を受けてスターになったばかりの個体は、僅かな期間ながら周囲に影響を与えない。

 自分を作り替えるのに集中しているからだと対策局側は判断しているが、この状況なら中心のスターを排除すれば暫くは新規発生はくい止められるだろう。

 眼前に立ちふさがる牛の頭部を人に付けたようなスターの胴を凪ぎ、鳥のなりそこないのようなスターの羽を叩き斬る。

 と、そんな九渚の目に兄弟だろうか、小さな少年が幼い少女を守ろうとスターに棒きれ一本で威嚇している姿が飛び込んできた。

 このままじゃ子供が危ない。その場を飛び出し子供の方に駆け寄ろうとする九渚だが、その足を先程羽を斬り飛ばしたスターが掴んで引き留めてくる。


「邪魔だどけぇ!」


 反射的にその首を跳ねるが間に合わない。

 少年の棒を何にも驚異に感じていないスターが右手を大きく振りかぶり、兄弟に向かって振り下ろす。

 だめだ、間に合わない。

 兄弟の死を覚悟した九渚だったが、それはスターの腕が宙を舞うという予想外の結果によって覆された。


「大丈夫?」


 呆然とした九渚が見たのはフードを目深に被った人物が、ナイフの一閃でスターの腕を斬り飛ばした瞬間。

 呆然とする九渚をよそにその人物は泣きそうな少年の頭に手を置いて何事か問いかけると、急加速でその場より飛び出し「keep out」のテープで囲まれている路地へと飛び込んでいった。



続きは明日ー

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