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リアクター  作者: 3号
14/21

お疲れ様です




 ネームレスの拠点であるビルは、工業地帯である東区の外れにある、一見古びた普通のビルだ。

 階層は六階建てで、周囲のビルと比べて特別高いわけでもない普通の建造物。


「中身が特殊なんです、外見ぐらい埋没させないと忍べないでしょう」


 とは紅の言だが、なるほど納得できる理由である。

 そんなビルの廊下を蛍光灯の淡い光に照らされつつ、遊と黎奈は霧華の執務室に向かって気乗りしない足取りで雑談を交えつつ歩いていた。


「それにしても驚いたわ。まさかお父さんがスターと人の中間的存在なんていうビックリな人たちに援助していたなんて」

「黎奈ちゃんのお父さんって、何やってる人だっけ」

「財閥の会長。薬剤関係だったかな」

「凄いお金持ちじゃない、それ」

「知らなかった? 遊お兄ちゃん、私これでもお嬢様よ?」

「なるほど。だから浚われたと」

「言わないで・・・・・・」


 黎奈は父親にネームレスの話を聞いて最初は吃驚したようだが、意外なほどすんなりと理解を示したという。遊の身体能力や紅の馬鹿げた行動などが決め手になったようだ。


「だから、遊お兄ちゃんも、もっと私を頼っていいんだからね!」

「ははっ、考えとくよ」


 そんなこんな話している内に執務室前。

 どこか威圧的な静けさを漂わせている扉を、遊は固唾を飲みつつ開けて・・・・・・。

 無言で閉じた。


「どうしたの、入らないの?」


 不思議そうに黎奈が聞いてくるが、これを見せちゃってもいいものだろうか。ノックしてどうにかなるのか?

 わからないままとりあえずノックすると、少しの間をあけて室内が騒がしくなり、暫くすると落ち着いたのか静けさが戻ってきた。

 呆然とする黎奈と苦笑が隠せない遊。そんな二人へと扉向こうから「は、入れ」と、どこか取り繕った霧華の声が聞こえ、開いた瞬間、黎奈が笑い崩れた。


「ふっ、あはは・・・・・・霧華さん可愛い」

「んなっ!」


 愕然とした様子の霧華。だが軋みを上げるクローゼットと何より、跳ねた髪と服装が現状を語ってしまっている。


「霧華さん、パジャマ」

「~~~~~~~~っ!?」


 ピンク色の熊さんだった。それだけ語っておこう。

 数十分後。


「見苦しい姿を、その、見せたな」 


 いつものスーツ姿に完全にセットされた茶髪と隙のない身だしなみを整えた霧華が、ばつの悪そうに頭を掻いて目を反らしている。


「最近徹夜が続いてな、一度思いっきり寝ようとそこのソファーに寝ころんだんだが、スーツじゃ寝にくくてしょうがなくて、それでな」

「えっと、分かりましたからもういいですよ」


 意外に天然な部分があると知ってしまった遊には、もう恐れる気持ちは残ってなかった。黎奈に至っては同士を見つけたように目を輝かせている。

 そういえば昔は熊のぬいぐるみをいつも抱いていたな。今も好きなのか。

 好きならば是非とも右手側のクローゼットを開けてみて欲しいところだ。モップでつっかえ棒をして取り繕っているようだが、決壊も近いだろう。扉の隙間から茶色いフワフワしたものがコンニチハしているのは、多分見なかったことにした方がいいのだろう。


「それよりもあれだ、本題に入るぞ」


 慌てたように話題を変える霧華が、机から一枚の写真を取り出した。それをまるで手裏剣の如く遊へと放ってくるので、最近鍛えられた成果を発揮してなんとかキャッチする。


「それ見てみろ」


 自分に見せてどうなる写真が多いとも思えなかったが、見た瞬間に理解した。蛸のような触腕に人の上半身。


「昨日、西区の空き地で監視カメラに引っかかったものだ。ウチの奴にデータぶっこ抜かせた」

「それハッキング・・・・・・」

「まあいいじゃないか、それなんだけどスターベーションなのは間違いがないが、遊の襲われた奴と同じなのか確認したくてな。どうだ」

「多分、同じ奴だと思います」

「そうか、ご苦労・・・・・・苦労が減ったな」

「どういう事ですか?」

「そのままだ、町に入り込んだスターはお前の例で一匹居るのは確実だ。これは違う二匹目の個体が居ないかどうかの確認だよ。奴らがいると確信したら対策員の奴らが活発になるからな。そうなったら面倒だ」


 だから早期解決したい、という事だろうか。

 確認すると返ってきた答えは是。


「私たちは半分はスターだ。例え半分とは言え人間だからと思えない場合もある。特に対策員の奴らには何時牙をむかれても可笑しくない。ならば、なるべく連中を刺激しないように問題を終わらせるのが自衛としては一番だ。何よりウチには戦えないリアクターも在籍しているからな。まあ、それはいい。戦える奴でこのスターはどうとでもする。それより遊、お前のアバターはどういった感じだ?」

「まだ発現しませんよ」


 夢の中でソレっぽい存在には何度も「遊ぼう」と声を掛けられているが、それだけだ。遊びたい訳でもないし気味も悪いので応じてはいないが、そのたびに寂しそうな気配が伝わってきて居たたまれなくなるのだ。

 そう語ったら霧華は「もう少し、素直に自分と向き合ってみろ」と、それだけ言うと遊達に退室を促したのだった。



半分はもう越しましたね〜


続きは今日の夜か明日の朝か!

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