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東方半妖録  作者: 夜桜兎
紅魔郷編
2/9

人里 その壱

白鴉には同じ白狼天狗の幼馴染み、犬走椛がいた。

椛は白鴉とは違いかなりいい家柄の為、いつも一緒にいた訳では無いが時々、特訓のために模擬戦をしたり普通に遊んだりしていた。

椛はその時間がずっと続けばいいと思っていた。

その願いは白鴉自身が壊したのだが…


「おーい、白鴉ー!朝だよー!起こしにきたよー!」


返事がない。何かあったのだろうか?

ガチャ

鍵がかかっていないようだ。


「白鴉…何かあったの?」

家の中には誰もいなかった。


「え、どこ行っちゃったの…」

昔から一緒にいた為、いなくなるなんて考えていなかっただけショックは大きい。


「とりあえず大天狗様に報告しなきゃ…それで、この事を知ってそうな人に話を聞く…」


-----白鴉side・人里


「おっちゃーん、団子くれー」


「おう、白鴉じゃねぇか。お前なんでこんな所にいんだ?」


「んー、妖怪の山から抜け出した」


「はぁ?!なんで?」


「俺は半妖だからな…あの社会じゃまともに暮らすことも出来ねぇ」


「そうか…まぁなんだ、辛かったろうが相談してくれれば乗ってやるぞ」


「あぁ、ありがと。だけど大丈夫だから」

大丈夫、というかこれで良かったのだ。


「……その割には顔色悪いがな。まぁ白鴉が大丈夫だってんならいいわ」

これは俺にとって有難いことだった。


「ホントに助けが必要になったら頼らせてもらうよ」


「あぁ!任せろよ」


「じゃ、そろそろ行くわ。団子美味かった。」


「…また来いよ」


「ここの団子は上手いからな、また食わねぇと我慢出来ねぇよ」


「ありがてぇ事言ってくれるじゃねぇか。お世辞でも嬉しいぜ」


「本心だけどな、じゃそろそろホントに行くわ」

そう言って俺は団子屋を後にした。


うわぁぁぁぁ!牛鬼だぁぁぁ!


「な?!どこから来たんだ?!」

俺が行かなきゃ…《程度の能力》を使わないと間に合わないか…仕方ない。


「変化・白銀狼」

バキバキッという嫌な音が耳に残る。

この音は骨格そのものを作り替えている音だ。狼の姿なら間に合うだろうか、いや間に合わせる。

----

---

--


「はぁ…はぁ…誰か、怪我人はいるか?」


「い、いないけどおっ母が…捕まっちまった。なぁ白鴉助けてくれないか?」


「あぁ、もちろんそのつもりで来た」

勝てるまでは行かなくても紅白とか白黒が来るまでの時間稼ぎは出来るだろう。


「げひゃひゃひゃひゃ」

口に付いた2本の刃が今にも突き刺さろうと言うところだ。


「ひぃぃ、やめてくださ…」


「悪いな、牛鬼。タッチの差で俺の勝ちだ」


「イヒヒヒヒヒヒヒヒ邪魔邪魔邪魔…邪魔なんだよぉぉぉぉ!?」


「正気じゃねぇな…おい、お前らは逃げて助けを読んどいてくれ。頼んだぞ」


「お、おう!おっ母逃げるぞ」


「あ、ありがとねぇ」


「礼は後でいい!今は逃げろ!」


「あーあーあーあー、人間を食いそびれたじゃねぇかよぉ…この際お前でいいわ…いいから食わせろぉぉぉぉぉ!?」


「やなこった。てめぇは幻想郷のルールを破ってるんだ」


「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」


「聞く耳すら持たなくなったか…仕方ねぇ『炎舞・燭』」


「げひゃ?!」

当たった?!


「ど、どうだ?」


「あっちぃよぉーげひゃひゃひゃひゃ」


「効いて…無い?」


「今度はこっちから行くぜぇ?」

不味い…中級の妖術が聞いてないなら勝てる訳ない?!


不味い…不味いぞ…不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い助けて不味い不味い不味い不味い死にたくない不味い不味い不味い嫌だ不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い怖い不味い不味い不味い


ブォン!風邪を切る勢いで口元の刃が俺の横腹に食いこむ。

「ぐっ…」

回避はしたもののダメージは来る。

「かすっただけでこの威力かよ…」


「カッコつけた割にくっそ弱いなお前!げひゃひゃひゃひゃ」

早く誰か来ないのか…もう無理だ。俺には勝てない。


戦う? 勝てないのにな

逃げるのか? あぁ、逃げる。

逃げたらほかの人間が食われるかもしれないぞ? 俺が追われ続ければいい。時間を稼げれば…


1通りの自問自答をして出た回答は《逃げる》という選択だった。

こんなかっこ悪い選択…


「だっせぇな」

自分で自分が笑えてくる

だけど…俺はいつも逃げてきた。今更こんな事言ったって遅いじゃないか。最高にダサくて最高に俺らしいじゃないか


「ふっ…おい、牛鬼。こっち来いよ」

ヒュンヒュン!とりあえず逃げる。それだけだ。


「げひゃひゃひゃひゃ」


---


そろそろ…辛いな。

走りすぎて吐きそうだ


「くっ、なんでスタミナ落ちねぇんだよ…」

あ、不味い。目の前が紅白になって来た。

……………紅白?


「はぁ…まったくめんどくさいわねぇ」


「女ぁぁぁぁぁ!」


博麗の巫女 博麗霊夢だ

あぁ、助かったのか?

そんな事を思いながら俺は意識を手放した。


-----

----

---

--


「…………んあ」


「起きたみたいね」

博麗はお茶を飲みながら気だるそうな顔をしている。


「あ、博麗さん。俺のこと助けてくれてありがとうございます」


「霊夢でいいわよ…それよりなんで天狗のあんたが人里で牛鬼と戦ってたのよ。」


「妖怪の山から抜けて団子食ってたら牛鬼が人を襲ってて…それで助けようとしてました。」


「妖怪の山から抜け出した…ってあんた何してんのよ…」


「まぁ今度でいいわ。とりあえず今は寝てなさい。」


「え、なん…うっ」

横腹に切り傷のような物が出来ていた。


「あんた怪我人なんだから…ね?」


「分かったよ、霊夢」


「えぇ、おやすみなさい」





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