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二話

私は交通事故に遭い、次に気がついたら事故現場の道路ではなく、見知らぬテンプレ天井の病室などでもなく、木々が深く生い茂ったTHE原生林的仮定森の中に居たのだ。


そこで小一時間ばかり、「ここは、どこだ」「声が出ない」「身体が動かないぜ」と一通りの通過儀礼を済ませ、自身の現状を知るに至った。


そうして分かったのは、私の肉体が小石であったことと、どうやってもその場から1mmも動けそうにないということだった。

私の中の隠された力的な何かが目覚めると信じ込んでみて中二病ゴッコに勤しんでみたのだが、それでも小石は小石であり、ニョキっと手足が生えてきて大変愉快な新種生物としてランクアップすることもなかった。


まあ、つまり私はそこで手詰まりとなり、努力することを諦めた。実に10分程度の出来事であった。

取り敢えず、ただの小石であることを9割がた受け入れ、森の景色をぼーっと眺めていた時、それは突然に訪れた。


天啓とも言うべきだろうか?

小石なる私は考える芦にも劣る無意味な存在となったせいで、現状許されている行為は、この取り留めの無い思考と、ただそこに存在するということだけ。

そんな私のどことも知れぬ、奥の方、有体に言えば心に響くようにして、一つの声が聞こえたのだ。


【個体名:高城錠一】


まるで、病院の受付で名前を呼ばれるように私の名が唱えられ、


【対象の魂の定着を確認。精霊体への転生を完了】


機械的アナウンスの果てに、私のどこにあるとも知れぬ脳裏へと幾らかの情報が流れてきたのだ。

そして、それは現在の私を知る上で重要なものであり、しかしあまりに不十分なものでもあったのだった。


今先ほど、私が知り得た情報。

それを分かりやすく纏めてみるとこういうことだ。


個体名:高城錠一

種:地精霊

霊格:1階位

技能:《顕現》

備考:異世界よりの転生体


これだけである。

結果分かったのは、私は死後、異世界の地精霊とか言う幻想生物になってしまったということだけ。

何故、異世界に転生し、どうして生前の記憶を保持したままなのか、そして先程、私を名指ししたあの声は何なのか?

分かったことはあるが、あまりに分からぬことの方が多いと言うのはなんともはやと言うより他ないだろう。


さて、どうしたものか。

......ふむ、取り敢えずは『輪廻転生の不思議☆』と言うことにしておこう。


それよりも、唯一検証の余地があるこの技能:《顕現》と言うやつについて調べてみよう。

と言っても、ヘルプ機能の如く、《顕現》について知ろうとした瞬間にどういったものなのかは分かった。


なんでも、精霊種と言う奴は霊体と呼ばれる、物質界には干渉できぬ情報体によって構成されているらしい。

そんな精霊種が物理的な肉体を持ち、物質界に干渉するためにはこの《顕現》と言う技能を使い、自身の属する自然物に宿るしかないのだそうだ。

解釈としては私という地精霊がソフトウェアであり、今現在私が宿っている自然物、この小石はハードウェアと言うことでいいのかも知れない。


しかし、この技能には幾つかの制約が存在し、好き勝手できるわけではないらしいのだ。

1:霊格に見合った自然物にのみ使用が可能

2:霊体単体での移動は不可能

3:宿った自然物からは霊格に見合うだけの知覚領域が広げられ、その領域内でのみ別の自然物への移動が可能

4:原則、《顕現》の技能は物質への憑依能力であり、これ単体には自然物の操作・変化能力は存在しない


まあ、つまり私の霊格、1階位は小石程度のものに宿ることができ、半径1m程度の知覚領域を広げられ、そして他にできることはない。


......いやはや、前途多難な私である(笑)




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