逸話:新婚夫婦
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「日本左衛門さん、今日は何が食べたいですか?」
財布を片手に持ちながら沙耶は隣を歩く日本左衛門に尋ねた。
「ん、姫が作る料理なら劇薬が入ってようが、喜んで頂くよ」さらりと爆発を沙耶に投下する日本左衛門。
「もう!真面目に聞いてるんです!!」顔を赤く染めて怒ったが、全く怖くなかった。
「そんなに怖い顔しないでよ。怖くて、沙耶姫の寝室に忍び込んじゃうよ?」何故にそうなる?
「もう知りません!!」完全に怒ってしまった沙耶はずんずん先に進んだ。
そんな少女の後ろ姿を見ながら
『反応が可愛いくて、ついつい意地悪しっちまうだよな』
自分の行動が余りに子供染みて苦笑してしまう。
「なに一人でにやけてるんですか?」前を歩いていた沙耶が冷たい声で言った。
しかし、その言葉は本当に嫌っている感情がないのが手に取るように分かった。
「ごめんごめん。今日の晩御飯を考えてたんだよ」苦笑したまま立ち止まった沙耶に歩み寄る。
「決まったんですか?」探るような瞳で見られた。
この黒い宝石のような瞳に見られたい。その薄い桜色をした唇に口付けたい。
無意識に少女、特有の雰囲気を漂わせた沙耶に酔っていたのか沙耶が心配そうに見てきた。
「日本左衛門さん?」
「ああ、ごめん。今日は鯖の味噌煮が食べたいかな」
慌てて、適当に料理の名前を出した。
「鯖の味噌煮ですか?少し難しいですね」困った表情で答える沙耶。
「別に作れないなら構わないよ。沙耶姫は本当に優しいね」沙耶の艶のある黒髪を撫でた。
「・・・・・ありがとうございます」気持ち良さそうな表情をする沙耶。
「さぁ、早く買い物に行こう」
「・・・・はい」機嫌を直した沙耶と並んでスーパーに向かう。
しばらく歩いていると
「あら、沙耶ちゃんじゃない」前方から買い物袋を持った中年女性が沙耶に話しかけてきた。
「・・・こんにちは。おばさん」
行儀よく沙耶は立ち止まって頭を下げた。
「買い物?」
「えぇ。晩御飯のおかずを買いに」
「そちらが強盗を捕まえた叔父さん?」興味深そうに日本左衛門を見た。
「初めまして。沙耶の叔父の月影左衛門と言います」
「変ね?沙耶ちゃんの両親って独りっ子じゃ?」
「それは、沙耶の父方の祖父が愛人に生ませたので公には出来なかったんです」
日本左衛門の迫真の演技は素晴らしく簡単に騙せた。
「・・・そうでしたの」迫真の演技に騙され深くは詮索しなかった。
「これからも沙耶共々、お世話になると思うので宜しくお願いします」
「私でよければ、何時でも力になります」
「・・・・・ありがとうございます。さぁ、行こうか?沙耶」
沙耶の手を掴んで歩み始める日本左衛門を見ながら
「沙耶ちゃん、見た目より大人に見えるから新婚夫婦みたい」
そんな事を言われたとも知らずに二人はスーパーへと足を進めた。
後日、二人は新婚夫婦という、あだ名を付けられた。
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