第一話:初めての出会い
初めて日本左衛門と沙耶を題に書いてみました(恥)
「・・・・・・はぁ」学校から帰る道で沙耶は、ため息を吐いた。
今日、憧れだったバスケ部の先輩に告白をしようとした時に、同級生が先輩と帰って行くのを目撃してしまったからだ。
『あの子、先輩と付き合ってるんだろうな』女の勘で何となく感じ取った。
「今になって思えば、何にも先輩と接点がなかったのに告白しても、無駄だったよね」
自嘲気味に笑いながら沙耶は何時も通る道に差し掛かった。
京都の三条通りの外れにある大盗賊、日本左衛門の首塚。
沙耶は中学に入ってからこの道を通っているが、今だに慣れない。
しかも今の時刻は夏の午後十一時。
先輩を待っていたらこんな時間になってしまっていたのだ。
「夏だと何時もの倍は恐いのに」
愚痴を言いながら薄暗い道に歩を進めた。
しかし、五分と経たない内に
「やっぱり四条通りから帰れば良かった」半べそになりながら後悔する沙耶。
びくびくしながら歩を進めていたが、何かに躓き盛大に転んだ。
盛大に転んだ為、制服は汚れ鞄の中身が散らばった。
「・・・・拾わないと」
散らばった筆記用具や教科書を拾っている内に一筋の涙が落ちた。
「・・・・・ひっく、ひっく・・・・えっぐ、ふっ、うっ・・・・・ぐっ」
落ちた涙は、止まる事を知らずに嗚咽も止まらなかった。
泣いていると、首塚が視界に入った。
「・・・っにが・・・・何が日本左衛門よっ、大層な名前なんかして」
何かに当たりたい気持ちになる沙耶。
「何が義賊よ!結局は泥棒じゃない!!」八つ当りに首塚を蹴り倒した。
ゴトッ
首塚は音を立てて地面に倒れたが
「痛ったー!!」首塚を蹴り倒した足を擦りながら沙耶は更に涙目になった。
「もうっ、最悪!?」
悲しみから怒りの感情に早変わりした沙耶は、ずんずんと進もうとしたが何かにぶつかった。
「・・・・・っ、今度はなに?」鼻を抑えながら見ると逞しい胸板だった。
「・・・・・・」
嫌な予感を感じながら上を見ると、鋭い目付きをした二十代後半の男性と目が合った。
『ひぃ!?ヤクザ!?』勝手に職業を決めるな。
「ご、ごめんなさい!本当ごめんなさい!!」勢い良く頭を下げる沙耶。
「・・・・おい、娘」低く鋭い声が上から聞こえてきた。
「退け座でも何でもします!だから、人身売買なんかしないで下さい!?」大粒の涙を流して逃げ腰になる沙耶。
「・・・・・・」男は沙耶の態度に閉口した。
『黙っちゃったよっ、たぶん、どこの店に売るか考えてるんだ!?」
男の沈黙を思考に取った沙耶は、逃げようと踵を返したが腕を捕まれ阻止された。
「・・・・・どこに行くつもりだ?」捕まれた腕を解こうとしながら謝る沙耶。
「身体を売る以外なら何でもするので、どうか許して下さいっ」拝み倒す勢い良いで頭を下げる沙耶。
「なら、答えろ。ここは何処だ?お前は何者だ?」男の質問に沙耶は、途切れ途切れに答えた。
「・・・・・ここは、京都の三条通りで、私は荻原沙耶です」
「京都?ここが京都だと?本当か」男は辺りを見回しながら尋ねた。
「は、はいっ」
「じゃあ、今は何年だ?」
「へ、平成、十九年、西暦2007年ですっ」
「平成?今は享保じゃないのか?」腕を離し肩を掴み揺らしだす男。
『この人、もしかして薬中か何か?』男の反応を見て沙耶は焦った。
「本当です!本当だから離して下さい!!」力の限り暴れたが、びくともしなかった。
「俺は・・・・・・・・死んだはずじゃなかったのか?」無意識に沙耶の肩を掴んでいた腕に力を込めた。
「痛いです!離して下さい!人を呼びますよ!!」大声を出すが、何の反応もなかった。
「・・・・・この墓は・・・・・・?」肩を掴んだまま横を見ると小さな塚があった。
「・・・に、ほ・・・・・ん・・・左衛、門の墓・・・・・・・」
呆然とした表情で塚を見つめる男の様子を見て、沙耶は何かを感じ取った。
『この人、何か変だ』
薬中か何かと思っていたのだが、本当に何が何なのか分からない様子だった。
『この人、まるで母親とはぐれた子供みたい』
呆然とする男は、親とはぐれた迷子の子供のように困り果てていた。
「貴方、名前は?どこから来たの?」沙耶は、男に恐る恐る尋ねた。
「・・・・・俺は、日本左衛門だ」
これが沙耶と男、盗賊、日本左衛門の最初の出会いだった。
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