第八話:心配ご無用
後ニ、三話で終わる予定です!?
沙耶を学校から連れて帰るまで日本左衛門は終始無言であった。
家に着くと乱暴にソファーに座らせられた。
「何で、黙ってたんだ?」
聞いた事もない抑圧の声に沙耶は怯えた。
いつも優しく親近感が沸く声と態度だったが、今回は違う。
全身から滲み出ているのは紛れも無く怒り。
こんな日本左衛門は初めてだ。
「何で虐めにあっている事を黙っていたんだ!?沙耶!!」
無言の沙耶に痺れを切らした日本左衛門が初めて怒鳴った。
「・・・・・・・ッ」
びくっと身体を震わせる沙耶。
「・・・す、すまない」
沙耶の怯えた態度に日本左衛門は歯切れ悪く謝った。
「勝手に学校に来て姫を無理矢理、連れて帰ってごめん」
「だけど、姫が悪い事に巻き込まれてるって予感がしたから」
「だから姫を迎えに行ったんだ」
怒られた子供のような口調と態度で謝る日本左衛門。
「・・・・・んなさい」
「・・・・・姫?」
俯いて呟いた沙耶の言葉が聞き取れず身体を屈める日本左衛門。
「・・・・・虐めに、遭ってるって・・・・・言わないで、・・・・・・・・・・・・・ずっと、言わないでごめんなさい」
「・・・・・・姫」
「私が、虐めに遭ってるって言ったら、日本左衛門さんが怒って学校に乗り込んでくると、思ったから言えなかったんです」
「私の事で、日本左衛門さんに迷惑を掛けたくなかったから、言えなかったんです」
「日本左衛門さんは、現代で立派な人間になって、生きてるのに、私なんかの為に苦しんで欲しくなかったから」
透明で綺麗に輝く光り輝く雫を流す沙耶の肩を優しく日本左衛門は引き寄せた。
「・・・・・日本左衛門さん」
「姫は何も悪くないから謝らないで良いよ」
「悪いのは姫を傷つけた奴らだよ」
「それに俺は、姫の悩みで苦しんだりしないよ」
「逆に姫が一人で悩んでる方が俺は苦しいよ」
流れるように下まで伸びた黒髪を優しく撫でる。
「姫みたいに優しく可愛い女の子が、誰にも相談しないで一人悩んでいる姿を見ている方が苦しいよ」
「泣きたいなら泣いてよいよ。姫の涙を受け止める位の胸はあるから」
「ふぇ・・・・・・・」
糸が切れたように沙耶は声を上げて泣き出した。
「・・・・辛かったでしょ?」
ポンポンと沙耶の華奢な身体を叩く日本左衛門。
「大丈夫。もう泣かないで良いよ。これからは俺が姫の不安や辛さを受け止めるから」
「だから大丈夫だよ」
「でも、それじゃ、日本左衛門さんが・・・・・」
涙を流しながら日本左衛門を見上げる沙耶。
「俺の心配をこんな時までしてくれるなんて・・・・・・・・・・・やっぱり姫は優しくて可愛らしい女の子だ」
「俺の事なら心配しないで良いよ。大丈夫だから」
暫らく抱き締めていると沙耶の小さな寝息が聞こえてきた。
眠った沙耶を日本左衛門は静かに抱き上げ寝室のベッドに寝かして部屋を出た。
『さて、これから俺の可愛い姫君を泣かせた不届き扱きの糞共にどう報復をしてやろうかな?』
沙耶を寝かした日本左衛門は沙耶を泣かせた者達への復讐を考えていた。
『・・・・・この俺を怒らせたんだ。最高の復讐をしてやる』
・・・・・もう暫く付き合って下さい。