暑い!
「だーっ!なんで今日はこんなに暑いの!」
幼馴染で、俺の彼女の抅井晴天が、わざわざ俺の家にきて叫んでいた。
「そりゃ夏だからだろうさ」
夏休みの宿題は、全部終わらせている。
だから俺たちは特にすることもなく、暇を持て余していた。
「ゲームとかは?」
「俺んちにそんなのがないことぐらい知ってるだろ」
親の方針とやらで、俺はゲーム機を一つも持っていない。
代わりにデスクトップパソコンなら、1台ある。
俺専用だから、誰にも触られることはない。
パスワードを設定しているから、抅井にも操作はできないだろう。
「図書館に行ってもいいけどさ、お前が静かにしてるとは、到底思えないんだよなぁ」
「なにさ、私だって静かにできるよ」
拗ねたように、抅井は言ったが、俺たちはそれができないことを知っている。
なんといっても、小学生の頃に行った図書館で、散々騒いだ挙句、1ヶ月の出入り禁止を申し渡されたこともあるほどだ。
いまはそこまで騒がないとしても、要注意人物としてリストに乗っているのは間違いないだろう。
だから、俺も最近じゃ図書館に行ってない。
「しかし、ここまで暑くて、まだ元気なのか」
抅井に俺がいうと、不思議そうな顔をして、平然と言った。
「だって、一日ごとに変わっていくんだよ。それを楽しまないでどうするのさ」
さらっと言い切る抅井は輝いてみえた。
「だから、ほら、行くよ!」
手を掴まれ、俺は部屋の外へと連れ出される。
「どこへだよ」
「どこか。どこまでも楽しいところへ!」
抅井は、嬉しそうに言った。