第一話 手始めに監禁させていただきます
外は気持ちいい風が吹いているんだろう。ああきっとそうだ。窓から見える空は青く澄んでいて、そして遠くに見える山は空の色と合わさって青々としている。だが。
「………私は何で監禁されてるの〜!?」
時は遡る。
新しく始まった高校生活。私はちょっと遠くの大学に進学した。あんまり賢いところじゃなかったけど、それでもやりたいことができそうだったから。やっぱり、遠くに行くってことは人間関係綺麗さっぱり消してしまうってことで。私は新しい友達を作らなきゃいかん羽目になったわけです。そうだ、私は自己紹介を忘れていた。
私の名前は石ケ森彩芽。大学一年生。性格はちょっと抜けてる。これって性格なの?まあいいや、で、今は賃貸に住んでる。学校に近いところ。とりあえずこんだけ。
それで私は新しい友達を作るべく頑張ってたわけですが、どうももうすでにグループができてるっぽく、入れませんでした。ああ、辛し。もう私は友人を作らぬ事にした。そして休み時間も孤独を噛み締め、一人帰宅し、趣味に一人の時間を費やす。このような生活を今まで続けてきたわけである。だがしかし、変わり映えのなかった私の日常に転機が訪れたのだ。
ある日、私は手紙で(靴箱の中にご丁寧にも宛先を書いて)体育館裏に呼び出された。なんだ、喧嘩でも売ろうっていうのか。そう思いつつ放課後そこに行ってみた。今から殴り合いの喧嘩でもするんじゃないか、心臓は早鐘を打ち、冷や汗が出ていた。辿り着き、どのような人物が私を呼び出したのか見てみれば、それは可憐そうな少女ではないか。身長は私より小さいであろうか、黒い長髪で三つ編みが髪に編み込まれていた。色の薄い少女で、まさかこんなか弱そうな───運動を今までしてこなかった私より───少女が私に喧嘩を売るわけでもあるまい。では何だろうか。私はその少女が何かを言うまで待ってみることとした。その少女は───まあ、結局私が待つことはなかったのだが───私を見るなり頬を染め、
「好きです!結婚を前提に付き合ってください!」
告白をしてきた。理解が追いつかなかった。私はその子のことを知らなかったし、何よりその子が私のことを好きになる理由がわからなかった。それに私も女性である。頭がこんがらがった。
「………ちょっと待ってくださ───」
「お願いします!」
話を聞かない人なのだろうか。こちらを潤んだ目で真剣に見つめるその子の気迫に押されはしたが、まあ私も付き合う相手のことを何も知らないまま───ん?この子結婚を前提にって言った?───受け入れるのはどうかと思う。ここは丁重に断り、また後日友人からと───
「ごめんなs───」
突然その子は凄まじいスピードで私の背後に周り、首に手をかけ───そこからの記憶はない。多分、三角絞め。なるほど、素晴らしい腕前だ。是非とも弟子入りしたい。ああ、こんな話ではなかったな。
現在、私は可愛らし〜いもので飾られた部屋に───まあその子に部屋の出入りは制限されていないのだが───事実上、監禁されている。次に、私が目覚めた時の話をしよう。
私が目を覚ました時、瞼を開いた時に真っ先に目に飛び込んできたのは、その子の顔だった。びっくりした。思わず飛び起きそうだったが、足が動かせなかった。束縛感がある。縛られているのだろうか。起きた私をぱちくりと瞬きして見つめるその子の顔は───今こんな話は重要ではなさそうだが───ほんっとうに可愛かった。小動物っぽい見た目、ぱっちりした目、小さい鼻、ふわっふわの髪。眺めは最高だった。状況は最悪だった。
「………何をしてるんですか?」
「膝枕。」
怖い。確かに頭の下に柔らかいものがあることは何となくわかる。なんだ、状況も最高じゃないか。とはならず。なぜ見慣れない部屋の天井が見えるのか、なぜ手足が縛られているのか、なぜ膝枕をされているのか等々、聞きたいことは山ほどあったが、まあ今はとりあえずこの眺めを楽しんでおこう。
と言うわけだ。その後すぐに拘束は解除されたわけだが、まあ家からは出しませんと。いや、人間このような時、怒りより先に恐怖がくるものなんです。ですが私は違いました。幸せが来ました。何なんでしょうか、この良い匂い。そして美しい部屋。あちこちにある家具の配置も、もう本当に考えられてるなあと思うほど。一生このにいても良いんじゃないかな、そう思いもする。あと、部屋を探索して気づいたことなんだけれど、この部屋にはPCがあるんです。その中に某ブロックを積み上げて建築をするゲームや、それの横画面版が入っていまして。それにインターネット環境完備。危機感は?普通インターネットを使って警察呼ばれるとか考えない?まあそれはともかく、インターネットがある、それはつまり、MOD環境が整っていると言うことだ。ぐぬぬ………狡猾な奴め。それになんと漫画が多く置かれた棚があるじゃない。絶対完結しないであろうあの漫画も、二〇〇巻いったあの漫画も、もう沢山。幸せです、私はあんな人に監禁されて。
考え事をしていると(何のゲーム遊ぶかなど)、下から私を呼ぶ声が聞こえてきた。何と言っているのだろう。よく耳をすませて聞いてみれば、昼食だと。ん?私放課後に監禁されたはず………。ああ、そうか、気絶したまま一日終えたのか。とするとあの子は私を膝枕したまま一日を終えたと!?こんなものあれでしょ、犯罪的ですよ。まあ今はそんなこと関係なく。下に行って昼食を食べてくる事にしましょう。
私がリビングに向かう階段を下っている時、良い匂いがしてきた。うん?これは何の匂いだろう。まあ、きっと美味しいだろうという匂いだ。期待を込めて、さっさと降りてしまおう。




