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悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第二章 お姉様の為に入った帝都退妖軍
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お姉様と出会うことなく死刑


 美浜の娘は連続殺人犯の容疑者かもしれない。なおかつ水社一心に並々ならぬ執着を抱いている。私は真原さんと共に女学校に向かった。


 おそらく水社一心は、美浜の娘が自分に執着していて、なおかつ人を殺していたのを知っていた。それでいて水社一心が証拠を集めなかった……いや、オルガンの凶器に気付かなかったのは美浜の娘が凶器について一切考えていなかったのかもしれない。普通はバレないか不安に思い凶器の場所を考えるだろうが、それすら考えないほど──美浜の娘の思考は常人のそれとは異なっている可能性が高い。


 女学校に辿り着くと、門の前には守衛が立っていた。


 真原さんが「帝都退妖軍です、事情は後で!」と門が開く前に乗り越え、私もそれに倣っていざ校舎へと足を踏み出す。「お待ちください‼ どういうことですか⁉」と守衛が叫ぶと同時に校舎から悲鳴が響いた。


「美浜がなんかしとんのんか」


 私は慎重に頷く。守衛は危機を察知し警棒を取り出すと「入り口は右手に」と叫んだ。


「ありがとうおっちゃん‼ 枯賀は入口から行け、俺は先に壁伝って──」


 私は鞘から刀を引き抜く。悲鳴が上がったのは三階だ。私は鞘を握りしめ大きく振りかぶると、思い切り校舎目掛けて投げ込んだ。がっしゃああああんとガラスが砕ける音が響く。


「お前何してんねん‼」


 真原さんのツッコミも響く。


 この刀は手を伸ばすとどこまでも飛んでくる。


 しかし一番最初この刀が岩に突き刺さっていた時は、鞘は後から連動するようにやってきた。


 刀は鞘に納まるもの。つまり私が校舎に鞘を投げ込み、刀を向ければ刀は飛んでいくのではないか。


 私はそれを確かめるため、真原さんの脇に腕を差し込んだ。


「え何……あああああああああああああああああああああああああああああああ」


 真原さんが絶叫する。私の思惑通り刀は鞘めがけて飛びあがった。刀を握る私、私が抱える真原さんも刀と共に浮上する。良かった。鞘ぶん投げて鞘だけブーメランみたいに戻ってきたら本末転倒だった。私と真原さんは共に割れた窓から校舎に侵入する。窓ガラスは内側に散らばっていた。やっぱり外から物投げたら破片は内側に散らばる。美浜の家の娘の部屋は、外に窓ガラスが散らばっていた。あれは自作自演だった可能性が高い。


「お前、福野みたいなことしなや‼ おまえぇえ‼ なんでそんな急速に福野に似てきてん、なんや」


 真原さんが怒っている。


 福野さんは軍の屯所の玉を盗んであやかしに乗ったりするが……あれは土壇場の行動ではなく福野さんの恒常的な行動……?


 福野さんは退妖対実地戦闘局にいたような話だった。本当に申し訳ないけどあの人はスポットライトを当てるという異能のせいで落ちこぼれて管理局にいたと考えていた。


 でも違うんじゃないか。いや、今はそんなことを考えている場合ではない。


 私は思考を切り替え、刀を鞘に納め辺りを見渡す。周りには誰もいない。良かった。鞘で頭をうったとか割れた硝子に巻き込まれた生徒が出なくて。「美浜の娘に殺されるのと鞘が頭にぶつかるのどちらがいい?」みたいな問題でもないし。私は鞘を拾い教室を出る。


「はにゃ」


 廊下を出た先に、クソイカレキショシリアルキラー猫又が廊下に立っていた。敵幹部だ。物語後半に出てくるような敵と尋常じゃなくアッサリと遭遇してしまった。


「ここは女学園なのに……なんで帝都退妖軍の連中がいるんだにゃ?」


 子供のような見た目に、色んな柄の合わさった着物を纏う猫耳人型のあやかし。


 中身はそこら辺の桜の木の樹齢より長く、「子供は守るもの」という意志を利用し人を殺すガキぶった変態のクソジジイ。ゆえに千年桜は恋と咲くの物語では、お姉様の前でも無邪気な子供を演じ、お姉様の心を乱した。そして傷つけた。


 人を殺した数は万を超し、だからこそ三本爪を残すゲームを始めたと笑う生粋の外道。丁度いい。この場には水社一心もいない。お姉様と出会うことなく死ね。


 刀を抜くと、「キミおかしいにゃ」と首を横に振った。


「ボクはまだ子供にゃ、なんでそんな最初から殺す気満々にゃ。ボクはあやかしだけど、人間と仲良くなりたいにゃ」


 お姉様を傷つけるくそたわけ殺すのに理由なんかいるかよ。私は構わず刀を握り猫又に飛び掛かる。


「戦う気はないんだにゃあ、待ってほしいにゃあ、ボクは真似っ子を殺しに来たにゃ。真似っ子のせいでボクの芸術が台無しにゃ!」


 やはり模倣犯を殺しに来たらしい。殺しに芸術もあるかボケカス。殺人は殺人。それ以上でもそれ以下でもない。私は無言で突き殺そうとするが、猫又は身を翻し躱し続ける。


「ボクはちゃんと人間を殺したいにゃ……こういうありあわせを殺すのは嫌にゃ……でもそんなに殺気を向けられたら仕方ないにゃあ‼」


 猫又は自らの手を変形させ三本爪を露にした。構わず刀で受け止め、そのまま爪ごと押し切ろうとすれば猫又は顔をしかめ一旦下がった。


「その刀」


 この刀は霊力を吸う。


 物語の中でこの刀を握ったあやかしは、戦いに負け弱ったところを霊力を吸われ死んだ。


 つまり私の強さに関係なく、この刀に敵を触れさせれば霊力を吸い勝手に相手は弱くなる。


 私が霊力を一向に貯められないという最悪があるが、その代わり……お姉様を傷つける強いあやかしに対しては決定打となる。相手に距離を取られたり、遠くから攻撃するタイプの敵には不利だが、私がその分近づけばいいだけのこと。私は構わず猫又に突進する。


「気味悪い刀持って……ボクを恐れることもないなんておかしいにゃあ、全部おかしいにゃあ‼」


 おかしいのは今に始まったことじゃない。私は手遅れだ。だから優しさを持つ人間がこちら側に来ないようにするし、こういうのは殺す。ここで殺す。


「枯賀‼」


 真原さんが叫ぶ。


「そいつ人型や‼ 強力なあやかしや‼ 山猿とは訳が違う! 下がれ‼ お前には無理や‼」

「正解‼ 僕は妖魔(ようま)三妖士(さんようし)の一画……お前らごときがどうこう出来る相手じゃないんだよ……‼」 


 猫又は小説の用語を用いた。そういうの突発で言われると混乱するからやめてほしい。あと普通に私でどうこうできない相手であっても私はお前を殺す。なぜならお姉様を傷つける可能性が高いから。それだけで死刑。しかし猫又は私の突きをかわし、真原さんに狙いを定める。私は真原さんを庇うが、猫又は「馬鹿にゃあ」とせせら笑った。


「踏み込みすぎにゃあ。間合いが雑にゃあ、お前さえ狙わなければ簡単にゃ」


 猫又が飛び上がり、真原さんの背後に回る。私は鞘を猫又目掛けて投げつけるが、真原さんは振り返ることなく服の中に隠していたらしい散弾銃を取り出すと、自らの肩を支えに発砲した。



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― 新着の感想 ―
刀を使いこなしてるのはかっこいいけど手放す気が無さそうなのは霊力が増えないままの末理ちゃんの体が心配ですね。 真原さんはピンチだし一心はどうなっているのか分からないしで続きが楽しみです!
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