表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第二章 お姉様の為に入った帝都退妖軍
16/53

お姉様を傷つけたクソ刀を折り続けます心も折ります理由はお姉様を傷つけたからです

「枯賀⁉」


 真原さんが叫ぶ。局長が「待ちなさい!」と続き、福野さんが無言で私を止めようとする。


 ここまでは想定通りだ。体力も体格も霊力の面でも、三人相手に適わない。猫騙しのように先手を取れてもすぐに追いつかれる。相手は先輩だ。


 だけど先輩である彼らが作った武具ならば。


 私は手毬型の拘束具を、局長たちに投げつける。実験は大成功‼


 手毬は局長たちに当たると格子状に亀裂が入り、霊力で出来上がった蜘蛛の糸が広がって、彼らを一瞬で拘束した。


 今日の作戦の全貌はこうである。


 局長たちに刀を見つけさせ局長たちの作った武具で局長たちをゲット。


 どこまでも他人を利用する戦法だ。現在お姉様はそばにいない。お姉様が見ていないのなら私は基本的に汚い戦法を使う。なぜならお姉様が見ていないから。


 

 私は刀の前に辿り着くと、柄も鍔も刀身もすべてが黒い、いわくつき丸出しのそれを握りしめた。


「枯賀さん⁉」


 局長たちが何故死んだか。それは霊力が在り、それを刀に吸われたからだ。霊力は全神経と繋がっている。霊力の乱れは命に直結する。ゆえに水社一心の母親だって千年桜は恋と咲くでは儚くなった。


 私は乱れるどころではなかった。ミヤシロ様にすべて注いだから。まるまる三年持ってかれた。


 正直、特大デメリットだ。霊力が無いなんて話にならない。戦力外になり果てた。


 しかし、この刀に対してはそれが切り札になる。


 だって吸われるものが何も無い。吸われてもデメリット0。


 私の見立ては正しかったようだ。刀は私を拒むようにガタガタと揺れる。嫌らしい。馬鹿がよ。ざまあみろ。この刀は元々気に入らなかった。


 だってこの刀は千年桜は恋と咲く後半で、お姉様を傷つけるから。


 元々この刀は握った者の霊力を吸うだけではなく、刀身からも斬ったものの霊力を吸う。


 持ち主が自らの霊力を吸われながらも戦えるほどの存在ならば、自転車操業のようになるが強大な力を得ることが出来る。諸刃の刃である。


 軍で保管されていたこの刀は、やがて人型のあやかしに盗まれる。


 そして変なループが生まれるのだ。


 刀の持ち主が特別な霊力を持つお姉様を襲う。


 皇龍清明様がお姉様を守る。


 刀の持ち主が皇龍清明様にやられる。


 弱った持ち主の霊力をこの刀が吸いつくす。


 この刀はどこかに飛んでいき、新たな持ち主が現れる。


 刀の持ち主が特別な霊力を持つお姉様を襲う。


 最初からやり直し。


 ループの果てに、皇龍清明様を庇いお姉様は背中をざっくり斬られる。


 皇龍清明様は人外寄りなので斬られたところで死にはしないし本人もそれを強めに言うが、お姉様はお優しいので皇龍清明様を庇うのだ。


 皇龍清明様は多分小指一つの状態で後はズタズタにされても再生可能な男なのに。庇う必要なんか微塵もないどころか、霊力を極限まで吸わせれば刀のほうがぶっ壊れるに違いない皇龍清明様なのに、お姉様はお優しいので庇う。


 何度でも言う。お姉様はお優しいので皇龍清明様を庇う。


 最後には必ずお姉様が傷つく。お姉様は「こんな傷、なんてことないです。皇龍清明様が傷つかなくてよかった」などと言うが、たとえ奉公先で熱湯をかけられていようとその火傷が残っていようと新たに背中に刃物傷が増えていい理由にはならない。傷が在ろうとなかろうとお姉様の存在は不変だが痛みの有無はどうでもよくない。皇龍清明様も「お前は……強いな……」と言っていたが関係が無い。強かろうが弱かろうが傷つくべきではない。お姉様は傷つくべきではない。


 お姉様を傷つける存在なんかこの世界にあっていいわけない。


 お姉様を傷つける存在が許されるこの世界は間違っている。


 間違いは正す。


 全部壊す。


 どこまででも追いかけて潰す。


 だからもうこんな刀はいらない。


 この世界にいらない。お姉様を傷つける存在はあってはならない。作った人がいるんだからなんて理論は関係が無い。そもそも作ったものが三人の霊力吸って殺しちゃったなんて知ったら私が職人なら自決する。苦しんで苦しんで苦しんで自決する。刀で人を殺すのが駄目なんじゃなくて霊力吸って殺すなんて刀である意味がないから。刀は斬ってこそ。霊力吸うだけなら掃除機でいいだろ。刀匠は刀を作りたいのであって霊力吸引掃除機が作りたかったわけではないはずだ。お姉様を斬ったのは刀の本懐として当然……とは思わない。だってお姉様だから。お姉様は別。私は人によって態度を変える。お姉様がすべて。別に正しさなんて求めて生きてないから。私が欲しいのはお姉様の幸せ。


 だからお姉様を傷つける存在はすべて排除する。


 私は刀を握りしめながら、思い切り横に力をかけた。


「枯賀⁉」


 局員たちが叫ぶ。無視した。


 この刀に教えてやらなきゃいけない。刀の戦いは握った者を狙う戦いだけじゃなく、刀そのものが狙われることもあるということを。ざまあみろカス。お前だって狙われる側だよ。


 一度地面に突き刺し、真横、てこの原理で力を加えればひとたまりもない。それをこの刀は知らない。自分はいつだって握られ人を斬る存在だと思い込んでいるクソ刀。


 何が無血の刀だ。お姉様を斬りつける可能性のある刀の分際で。無血じゃなく無知のほうの無血でいい。バカ。ねじったらこんなもん。刀はガタガタ揺れを増す。まだ歯向かえばなんとかなると思ってる。そうはさせない。ずっとお姉様のことつけ狙いやがって。気持ち悪い。


 この世界にお姉様を傷つける存在なんてあっていいはずがないだろうが。


 ガッと力を入れると、刀がとうとう折れた。手間かけさせやがって。お姉様を傷つけた分際で。額の汗をぬぐっていると、刀はものすごい勢いで岩に突き刺さったままの刀身のもとへ動き、再生していく。


「嘘やろ……」


 真原さんが絶句した。この刀、折れないんだ。


 最終的にこの刀は皇龍清明様の必殺技で消滅したが、あれじゃないと駄目なのだろうか。私は刀を睨みつけた後、思い切り膝蹴りして蹴り折った。


「嘘やろ⁉」


 真原さんが叫ぶ。この刀、折れます。


 折っても復活するなら再生しなくなるまで折り続ければいい。


 何度でもやるからな。ガタガタ抵抗してきたってことは苦痛はあるのだろうし。苦しめよせいぜい。


 まだ未遂だろうが関係ないから。お姉様を傷つける可能性があるのとお姉様を実際に傷つけるかなんて誤差だから。私は罪も憎むし人も憎む。倫理なんて無いんだわ。相手悪かったな。そんなに折られてえなら死ぬまで付き合ってやらあ。


 しかし、岩壁にぶつけたり膝蹴りしたりてこの原理を使って折っても、まるで無意味だと証明するように刀は復活してしまう。


 飽きてきた私は、もう一度柄を握りしめ、もう片方の手でむき出しの刀身を掴んだ。


 強く握りしめながら手を滑らせる。血が刀身に流れ、より一層刀が震え出した。やはりこちらも弱点だ。嫌がられている。それもそのはず。刀のもとである鉄や鋼はサビに弱い。血はサビを招きやすい。挙句私には霊力が無い。ただの血に興味ないどころか斬らずに霊力を吸うのがこの刀のアイデンティティっぽいので、押さえつけられ無理やり血で汚されたら最悪な気持ちになるだろう。


 なにが無血じゃ。かっこつけやがって。これで流血刀です。尊厳破壊達成。さようなら。お姉様の背中を傷つけた罪は重い。まだこの世界ではしてないだろうけど、可能性があるだけで罪だ。悪である。正義だろうがどうでもいいけど。お姉様を傷つけた、傷つける可能性が1ミリでも発生した時点でこの世界に存在していいかどうかランキング圏外待ったなしなんだから。


 やがて反抗が止んだ。


 ホッとしたのもつかの間、遠くから鞘が飛んできたので刀を受け太刀で構えると、すぐ従順に目の前で浮き出した。話が早くて助かる。少しでも他の人の霊力を吸ったら膝で叩き折ってやっからな。物語の中では軍の湿度も温度も適切に管理された場所で保管されていたが私は違う。少しでも変な真似をすれば屯所の食堂の釜に突っ込む。なんなら屯所の前でキャンプファイヤーでもしてそん中にくべたっていいんだから。鞘の鯉口──刃をおさめる部分に少しだけ刀を挿し込みガシャガシャ動かすと、刀も鞘も大人しくなった。


 刀の斬り合いはお互いの道徳心があってこそだ。そして人と刀の語り合いも善意が前提になる。私にはそれがない。前提が違うのだ。刀と戦う時に刀を用意しない。相手の弱点を突いて制圧。おわり。


 刀を鞘におさめた私は、退妖武具・装具管理局の面々のもとへ振り返った。


「枯賀さん……」


 三人が怖々している。今まで一音も発さず、背後霊みたいに存在していた新人が自分たちに向け新しい武具を使用し、洞窟の中で走り出したかと思えば刀を引き抜き真横にへし折ろうとして、その後に刀を握りしめ血染めにする。怖いだろう。私だったら教育係降りるかもしれない。ひとまず上に報告する。実際、上層に報告されるのだろうが、この刀を調べれば私の奇行もある程度この刀のせいになるはずだ。


「だいじょうぶかおまえっ⁉」


 手毬の武具を解除すると、真っ先に動いたのは真原さんだった。真原さんは私の左手を握りしめ、「止血」と慌て始める。福野さんが無言で私の手に包帯を巻こうとすると、富山局長が「あ~待って待って、その前に消毒しないと、浄化、浄化」と長方形の札を取り出し、刀で斬り裂かれている私の手にのせた。


「なんでこんなに力入れて握りしめるかねえ。血か何かが条件でも限度があるよ」


 札には墨で文字のような何か書かれているが、富山局長が手をかざすと文字が発光しながら札ごと粒子になって散った。


「はい。じゃあ包帯再開でーす。あと撤退。枯賀二等兵は帰ったら独断行動で始末書ですよ」


 富山局長は真原さんと福野さんに合図を出した。


 始末書で済むのか。なんか、ぼんやり事が進んでいる気がするけど、私の謎行動について三人はどう思っているんだろう。手の傷で、それどころじゃない、とか?


 何これ今。


 何の時間?


「これ強めにやったほうがいいですか」

「弱いと血、だらだらなるから、いっぱい強くせな。もう、なんでこんな……この刀のこと何か知っとんのんか?」


 真原さんが心配そうに問いかけてきた。私は首を縦に動かす。


「じゃあなに、血でビャーって刀に……趣味?」


 私は首を横に動かした。


「じゃあちょっとこの刀、借りてええ?」


 私は大きく首を横に振ったあと般若の形相を浮かべる。


 真原さんに届かないよう怪我をしてないほうの手で刀を持ち上げ、手が届かないように避ける。


「先輩に貸せえや。先輩より詳しいんか」


 私は首を横に振りつつ、真原さんに届かないよう刀をずらす。


「なんやその謎反抗期、死んだろかなもう」


 死ぬも何も触ると死ぬ刀なので駄目。膠着状態を続けていると、「それ何か事情がある?」と富山局長が私の真意を探る目で見る。私は頷いた。「屯所で偉い人に預けろって言われたら渡せる?」と再度質問され、さらに頷いた。


「屯所で渡すのに今渡さないって何? 僕ら嫌われとんのんか、なぁ福野」

「俺に振らないでくださいよ」

「だって局長に振られへんやろ。娘に嫌われとって、新人にも嫌われたら終わりやろ人生」

「真原くん僕の人生勝手に終わらせないで」

「嫌う嫌わない以前に新人の状態でまず男の集団の中に入るのが嫌でしょ」


 包帯を巻き終えた福野さんがため息がちに返した。


 福野さんは……私が男所帯に入ることを嫌だと思ってたのか?


 まぁ確かに、女の集団と男の集団のどちらかを選べるなら女の集団のほうがいい。というか好き好んで集団の中に入りたくはない。


「ともかく、早く枯賀さん屯所に連れて行かんと、救護局に連れて、ざっくり切りよって」


 真原さんが私の手の具合を見た。すごく心配されてる気がする。軍だし、怪我なんか当たり前だろうに──、


 考えていると、ドッと、本当に突然、真原さんや局員たちの背後から、壁や地面を砕くようにして山猿のあやかしが現れた。体長は3メートルほど。腕や脚だけ丸太のように太く、ただのサルと見間違えることは難しい異質な姿のバケモノは洞窟内が震動するほどの咆哮を上げた。


 一発でバケモノと分かるデザインに目指しましたと小説や漫画のインタビューで見たが、恋愛主軸のファンタジーでは見ないビジュアルだ。「君、死にゲーの世界から出張に来てない?」と疑いたくなる水墨画めいたバケモノ。お姉様に見せたくない。怖がる。可哀そう。


「今⁉ さっき出ればええやろ! なんやこいつ‼」


 真原さんが怒りを露わにする。怒りの矛先が違うんじゃないか。出たことには驚かないのか? というか多分さっきの道具でこのあやかしを拘束するのは無理がある。だってでっかい。


 そしてうっすら嫌な予感がした。


 あやかしの出現はたぶん、刀のせいだ。刀が常時霊力を吸っていたので、辺り一帯あやかしが出なかった。この刀のせいで住む場所を追われていたか、吸収が止んだので近づいてきたかは分からないが、とにかく、今私が霊力吸収を止めたので来たのだろう。


「ぼくは枯賀さんの支援に入る、あれは福野くんと真原くんふたりでお願いね──ごめんね枯賀さん」


 そう言って富山局長は私の肩を掴むと、一気に後ろに飛び上がった。


 福野さんは「承知しました」真原さんは「はぁいー」とそれぞれ異なったテンションで返事をする。


「福野くん大丈夫そう?」

「目……あるんで、多分、いけるんじゃないですかね」


 あやかしはこちらに向かってくるが、福野さんは散弾銃を──地面に置いた。武器を置くとはどういうことだ。不思議に思っていると福野さんは「標的確認、視野範囲良好、照射」とつぶやいた。


 ガチャンッとスポットライトが点灯するような音が辺りに響き、あやかしに向かってビームライトに近い光が一斉照射された。


「福野君の能力は光を生み出して、その色や方向、出力を変えることなんだ。分かりやすく言うと視界を誤認させること。あのお猿さんからすれば、福野くんは見えてるけどそこにはいない、みたいな感じかな。空振りを誘発する能力だ」


 富山局長の言う通り、あやかしは誰もいない壁や岩を殴りつけている。


 じゃあ、音の通りスポットライトみたいなものをどこでも点灯させられる、ということか。


 人間スポットライト……だから目が見えないと効かないということらしい。


「彼は霊力が少なくてさ、自滅狙いが主戦法なんだけど、実戦には微妙に向かない。照らすだけって言われちゃうし。元は退妖対実地戦闘局にいたんだけど、そういうのもあってうちに来て……それで真原くんの能力が」


 真原さんは持っていた狙撃銃を置いて、先ほど福野さんが持っていた散弾銃を片手で構えた。猿のあやかしに近づき、脚を撃ち抜く。


「触れている物の重さを変えること。銃って撃った後の反動が酷いんだけどさ、彼はその欠点を補える。強力な武具は全部重いんだけど、その負荷を失くせる。とはいえ彼も霊力が少ないし、接近戦に弱い。福野くんは一人で決定打が出せなくて、真原くんは補助なしで戦うのがキツいんだよね」


 福野さんが猿のあやかしに近づき、その腕からその身体へと昇っていくと、思い切りその眉間を蹴り上げた。


 体勢を崩し隙が出来たあやかしの心臓部を、今度は真原さんが狙撃銃で撃ちぬく。


「僕は……時間稼ぎ役かなぁ。この局は戦闘に一番遠いけど、戦闘になると色々、他の局よりやらなきゃいけないことも考えなきゃいけないことも多い。さ、最後の運試しの始まりだ」


 富山局長は懐から紙札を取り出した。それを思い切りあやかしに向かって弾くと、札は金に輝き──女児向けアニメに出てきそうなポップなデザインの巨大な羊に姿を変えた。「オオオオオオ……」と地鳴りのような咆哮をあげたあと、山猿のあやかしに突撃した。その勢いはすさまじく洞窟ごと猿のあやかしも岩をも砕き、「これが本当のトンネル開通です」と言わんばかりに大穴を開けた。


 倒された……いや完全に羊に轢き殺されたとしか思えないあやかしは、黒い血を流し、そこに溶けるようにして消滅していく。


「局長式神出すとき言うて下さいって何回言えば分かるんすか。危うく轢き殺されるところでしたよ」

「今回、あれでしたね……大きいというか、足も、しっかりして、でかい、戦いって感じの……」


 真原さんが怒りながら、福野さんがガッカリしながら戻ってきた。戦闘に疲れているというより大きい羊が出たことに嫌がっている。羊も十分可愛さを重視したデザインだと思うけど、嫌みたいだ。


 富山局長が「今回良かったでしょ。羊さんだよ」と反論していると、開けた大穴から誰かが駆けてきた。


「こちら退妖対実地戦闘局派遣部隊、ただいま退妖武具・装具管理局福野局長の派遣要請により指定地域に着陣──」


 水社一心、そして彼と同世代くらいの軍人だ。水社一心の肩にはパグ狛犬が鎮座している。局長の要請が通ったらしいが水社一心が飛んでくるなんて最悪だ。絶対煩──、


「怪我人の確保に移行します。ほかに負傷者は」


 水社一心は静かに私の肩を掴みながら富山局長に訊ねる。局長がいるから静かだ。良かった。刀折るのに疲れていたから人間スピーカーは弱り目に祟り目だ。


「福野くんと真原くんいけそう?」

「俺らはなんもないっす」

「なんもないんで、枯賀はよ診てもらえるようにだけ、よろしくお願いします」


 二人の返答に、水社一心は「承知しました」と短く答えた後、私の握る刀を睨みつけた。


「この刀は」


 私は思考で刀の説明をした。どんどん水社一心の表情が厳しくなる。


「……この刀は、霊力を吸収するものです。彼女は体質により呪いの影響をうけませんが、他の方は触れないように」


 ありがたい。水社一心が簡素に説明してくれた。文章にまとめるわけにもいかないし大助かりだ。これでお姉様を傷つけずこの刀をどうにかできる。またお姉様を狙うようなら、次は太ももとかお腹でも刺してしまえば──、


「それは誰のだ」


 水社一心が目だけこちらに動かし聞いてくる。怖すぎる。挙動が完全にホラーのそれ。私が水社一心を刺すと疑っているのかもしれない。そんなわけない。自分だ。自分を刺すに決まってる。この刀は一般人の血を嫌うので。


「……」


 水社一心は無言だった。ならいいとか、そういう返事もない。


「では、これより枯賀二等兵を後送、離脱します」


 そうして水社一心は私の肩を支えると、何も言わずに撤退用の御符を使用した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
わ〜!!めっちゃ面白かったです!!お姉様本当に優しすぎるから刀まじギルティ。殺意強強の末理ちゃんの怒涛の攻撃と脳内セリフ好きです。あと真原さんの「嘘やろ…嘘やろ!!?」めっちゃ好きです。戦闘シーンが多…
こんないい感じのキャラ達が退場しなくて良かった あとやっぱり通訳は役立つなあ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ