両親の功績
それから特に何事も起こる事はなく、みんなでラーメンを食べた後父さんと母さんと合流して家に帰った。
それから1か月経ち、途中誕生日を迎え、成人した私たちは今再び学院の前にいる。
「やっぱでけぇな、この学院は」
今日は私とルナの2人だけで来ている。
父さんと母さんとハルはお留守番である。
と言うのも後で調べてみたら先日ボコしたマオルナとやらは私たちと同い年であり、貴族である以上今回の入学の試験に出てくる可能性が十二分にある。
よって万が一にも矛先が向かないように家で待機してもらっている。
まぁあの時にボコした時点で敵視されてるから焼け石に水かもしれんが。
城門から中に入ると既に多くの人で賑わっていた。
幾ら島国だとしてもそこそこ面積も大きく人口も多いハイゼラード王国。
故に全国から貴族の子息は勿論、平民の人達も門戸を叩きにやってくるのだ。
「さて……じゃぁまずは受付に行こうか」
「そうだね」
この前父さんとグラン爺さんが喋ってた小屋がまた受付だった。
ここで名前を確認だけしてまず講堂の中に入って待機するようだ。
「はい、それじゃぁ頑張ってくださいね、番号はあそこにある看板でご確認ください」
今回対応してくれたのは、前とは違って緑色の軍服のような制服を着た少女が受付だった。
受付の少女は私たちに首から下げるカードを渡してきた。
カードにはZTZ-99と書かれてあった。
「お前には何て書いてるんだ?」
「ZTZ-99Aだよ」
受付の少女が言っていた看板で確認してみた感じZTZ-99とZTZ-99Aは別の試験会場でやるようだ。
「少なくとも姉妹で落とし合うみたいな事にはならなさそうだな」
「だね」
試験開始前に来たものは講堂で受験者が集まるまで待つそうだ。
講堂の中に入るとやはり多くの人が座っており、雑談をするもの、端で自分の魔力を練るもの、剣を振るものなどがいた。
ふと見覚えのある魔力が見え近寄るが、なぜか人でごった返していた。
「ふむ……レインは人気なのか?」
実はレインとアルとはグループまで作ってよく話したりするようになってる。
レインは公務?とやらであまり話はしないが魔法が好きなのか魔法についてよく聞いてくる。
話し相手がルナから増えて良かった……と思う。
「まぁあのビジュアルだからねぇ……呼んでみたら?」
「お〜い、レイン〜〜!こっち来いよ〜!」
すると突然レインの周りにいた女どもがこっちを鬼の形相で睨んでくる。
え、何か地雷踏んだ?
「分かった、今そっち行くよ。ごめんね」
周りの少女たちに謝辞を述べレインはこっちにやってきた。
「何かお取り込み中だったか?悪い事をしたか?」
「いや、大丈夫だよ。ちょっと鬱陶しかったし」
「ふーん……」
「お、恐れながら殿下、一つよろしいでしょうか」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
マオルナだ。
「ん?どうかしたかい?」
「そのような野蛮な女と交流するのは控えたほうが良いかと」
お?誰が野蛮な女じゃゴラ。
多分こう言うことをすぐ言っちゃうところなんだろうがな……いかんせんそう言う性分なんだよ。
コレとかも前世由来だったりするのかね。
「ふむ……それは命令かな」
「い、いえ!しかし少しばかりお付き合いする方は考えたほうが良いかと……!そ、それこそ私めのようなバンデルシア侯爵が嫡男、マオルナ「ねぇ」……!」
侯爵家の嫡男のマオルナがここまで遜る態度を取るとは……それに殿下って呼ばれてたし……コイツは大貴族以上……?侯爵以上の貴族となると……まぁアレしかいないよな。
そしてレインがマオルナが喋っている途中に割り込み言った。
「君は何か勘違いしている。良いかい?マオルナ。僕が誰と付き合おうとそれは僕が決めることだ。君が口出す事ではない」
レインがかつて見た事もない冷えた目でマオルナを見下すようにする。
「うっ……は、はい……し、しかしこのような者と関わっていては王家の格式が……」
「それならば問題ないよ」
え、そうなの?私の家は控えめに言って辺境のクソ貧乏底辺男爵家だからほぼ平民みたいなもんだが。
「ん?私別に貴族だから偉いとは言うつもりはないし何なら平民みたいなもんだぞ?」
「まぁ彼もそう言ってたからね。子供達に自分の過去を話した事は少ないって」
「まぁ確かに聞いた事全くないな」
「この王国は現在、王家を筆頭に3大侯爵家、12大公爵家がいるのは知っているね」
「当然です。我が家の歴史、そして先の大戦で挙げた功績は数え切れません!故に我が家は……」
「まぁそれは今どうでも良くてね」
マオルナがコイツ正気か?とでも言わんばかりにレインを見ている。
自分の家の権力と歴史が絶対だと思い込んでいるやつにとってそれを無下にされるのは死ぬよりも辛い事かもしれない。
「確かにバンデルシア現侯爵が20年近く前、先の大戦で挙げた功績は凄まじいよ。でもね。本当は彼らよりももっと功績を挙げた人たちが居たんだよ」
ふむ……?この話の流れはもしや……?
「ゼニス・フォートレス殿、そしてフリーナ・フォートレス殿。リーシャ達の両親だ」
あぁやっぱり。
だと思ったよ。
「彼らは今は既に滅びた公爵家の私兵のような存在でね。まぁそれは獅子奮迅の活躍をしたと聞く。王家は彼らを取り立て侯爵を叙爵しようと思ったがどうにも政務とかが似合わない男だったそうでね。辞退したがったがせめて何かせねば王家の名折れ、と言う事で男爵と小さな領だけあげたそうだよ」
「「あぁなるほど、確かに出来そうにない」」
事実父さんは基本領主としての仕事は母さんとの共同だし、それ以外の時間は村の人たちのために山に魔物を狩りに行く事に悦びを感じる野生児だ。
小さい頃に魔物を倒すたびに高笑いする父さんの声が家に居ても聞こえてきた時は怖くてずっと母さんの部屋に逃げていたのは良い思い出だ。
「しかも、彼らがあげた功績は凄まじくてね、君は今は滅びた公爵家、カイシス家が挙げた戦果を知っているかい?」
突然レインがマオルナに問いかける。
マオルナは自分の家が絶対だと思い込んでるような男だから答えられそうにないが……
「い、いえ、知りません……」
だよね〜。
「バンデルシア侯爵家が挙げた戦果は確かに素晴らしいよ。敵国に領土を奪われ、王都周辺までに陥落した我が国の領土の西半分を配下の貴族達を的確に使い取り戻したのはね」
話だけ聞いてればそりゃすごい。
島国とは言ってもこの国は大きい(再掲)。
敵国に奪われた西半分を取り戻すとなると相当な労力と犠牲が出るだろうに。
「そしてカイシス家が出した功績、それが領土の東半分を取り戻した事。でもね、この話には裏があるんだよ。そこで出てくるのがゼニス殿とフリーナ殿だ。彼らはたった二人だけで領土の東半分を取り戻したのだよ」
「え、そんな事してたんだ」
「そうだよ。しかも君たちの母、フリーナ殿に至ってはカイシス侯爵家の一人娘だしね」
「いぇぁっ!?」
マオルナがかつて見た事の無い歪んだ表情を浮かべる。
お前顔芸で生きていけるよ多分。
「カイシス侯爵家は先々代の王の弟が興した家だ。故に彼女達は遠い僕の親戚に当たる。いいね?」
「は……はい……」
マオルナが嫌そうにしながらでもやはり上位の人間の命令だからか渋々従う。
「さて、じゃぁ行こうかリーシャ」
「おう、にしてもお前は王族なんだな」
「あ、バレちゃった?」
「アレだけベラベラ喋って私に王家の人間じゃないと気付かれなかったら、私が相当なアホか私が何かの術にかかってるかの二択だ」
「僕の隠し方が上手だったていうのは?」
「無い」
アレで隠し方が上手と言うのであれば4、5歳の子供の言い訳も上手になるわ。
「ふふふっ」
「何がおかしい?」
「僕が王家の人間だって分かっても態度は変えないんだなって」
「うーん……まぁレインはレインだしさ。そんな気にする事じゃ無いかなぁって」
「それはした方がいいと思う、お姉ちゃん」
まぁ王家だからな、この国で1番権力ある家だからな。
「じゃぁ人が集まるまで待つとするか」
まぁ何人かは分かってたかもしれないけど両親は割とすごい人ですね。
ZTZ-99とか言うごく一部の界隈の人にしか伝わらないネタ。




