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忘却の転生者  作者: 波来
第一章 前世を探す者
2/11

進路

前話は三人称視点でしたが今話からリーシャの一人称視点です。

私に前世というものがあるのだろうと感じ始めたのは随分前の……12歳ぐらいの頃だ。


訳のわからない夢を見たり、収納魔法のような現代の魔法技術とはかけ離れた古代の魔法が使えたり、遥か昔の言語が読めたり、などなど。


それが前世由来だったとすれば大体説明は付く。


なぜ前世と思ったのか、妹のルナが読んでいた転生ものの小説を読んだときに妙に自分と似ているなと感じただけ。特に理由は無い。


自分に前世があると思って、父さんや母さんに説明したが少し早い厨二病だと思われた。

まぁ確かにいきなり自分の子供がそんなこと言い出したら困るな。うん。


その後目の前で昔の言語で書かれた本を翻訳して書き起こしたり古代の魔法を発動したりしてやっと納得してもらった。


そして自分の前世を探そうと意気込んだその日、すぐに気がついた。


どう探すんだこれ。


そう、探し方が分からんのだ。どうしようもないのだ。


たまに見る夢が1番の手がかりなんだろうが所詮は夢だ。あやふや過ぎるし、基本起きたら忘れている。


なので色んな事をやってみて何か引っ掛かる事でもないか、そう思って色々やってみたが特に何も無かった。


そういえばあの時土竜を倒しに来ていた少女は今どうしてるんだろうか。


ちゃんとお兄さんが元気になっていれば良いが。


話がずれたな、自分ができる事で手掛かりになりそうな事はなくなったため、これからどうするかを決めることにした。


ハイゼラード王国の辺境、ほんの小さな港町とその周辺の山ばかりの土地を収める領主であるゼニス・フォートレス、その妻フリーナ・フォートレス、私とルナの両親であるその2人が私たちと共に簡素な机を囲むようにして座っている。


もう1人弟のハルがいるがアレは今友達と海に遊びに行っているからこの場にはいない。


「ここ数年色々してたのはわかっていたが、手がかりは無かったんだな?」


茶色の髪をわしゃわしゃと掻きながら父さんは言った。

筋骨隆々とまではいかないが引き締まった身体、そしてさっぱりと切っている髪をしているオッサンだ。


「そうだな。これっぽっちも無い」


「今更疑う訳じゃ無いけど……本当に前世なんてものがあるなんてねぇ」


そう緊張感のない様子で言ってのほほんとしているのは母さんだ。

紫色の瞳と長く伸ばした水色の髪がトレードマークらしい。


「まぁ前世があるのはほぼ間違いないだろう。今の常識を大きく外れ、卓越した魔法技術、そしてとても今の時代のものとは思えない記憶、そして古代の言語……遥か昔、それこそ世界全体を巻き込んだとも言われるあの大戦の時代の可能性だってある」


父さんの言う大昔の大戦とは、約1万年前に人間と魔族が互いの存亡をかけて争ったというもの。


人間は勇者、魔族は魔王を筆頭に数千年も続いたという。


圧倒的な力を持った魔王、そしてそんなものを前にしても心が折れず、立ち向かった勇者。


彼らの戦いは何代にもわたって続いた。


そしてある時、戦争が終わった。


結果はどちらの勝利でもなく、引き分け。


当時の時代の勇者と魔王が戦争に明け暮れる世界に飽き飽きしていたとか、色々あるが何せ世界中で起きたその戦争が終わったのだ。


その話は1万年経った今でも語り継がれている。


創作物の題材としても人気で、戦争もの、果てはラブコメにも使われている。


ラブコメはよくわからん。魔王と勇者が恋仲だったとかいう荒唐無稽な噂由来なんだろうが。


「まぁ今何を話しても変わらんな。それでだ、アレから約束の3年だ。お前達はどうしたい?」


約束の、というのは3年前私が前世について話、納得してもらった日に交わしたもの。


3年間は前世を探す事については好きにやっても良いというもの。それを過ぎればもう15歳、もうすぐで誕生日になるため成人の16歳となる以上進路などを決めなければならないのだ。


少なくとも私は自分の前世を探すために旅をするなりしたいと思っている。


そしてルナも何故かは知らないが私についていきたい様子。


「そうだな……やっぱり私は前世の事を知りたい。本当に私に前世があるのなら」


「そうだねぇ……せっかくお姉ちゃんが面白そうな事してるし私もそれに着いていきたい」


「まぁそういうと思ったよ。だが、やはり父さんとしてはお前達にも普通の人のような生活を送ってほしい……。竜を1人で狩ってきたりとかする生活とかじゃなくてな……」


そういうと父さんの顔は明後日の方を向いてハハハハを苦笑いをする。


「とはいえ、父として、1人の人間としてお前達の進路を縛るのはあまり好きじゃない」


父さんは良くも悪くも放任主義だ。出なければ自由に前世について探ったり、竜を狩ってきたりなんて出来ないだろう。


そして父さんは言った。


「だからさ、お前達王立学院に行ってみないか?」


「学院……?」


「そうだ。この国は知っての通り王政で、貴族がいる。故に貴族の令息令嬢を教育する王立の教育機関というものがある。そしてそこにお前達を通わせようと思う。一応俺たちも貴族だからな、しょぼいけど」


「ふぅん……」


「何かピンと言ってない様子だな。王立の教育機関だからそこで一定以上の成績を収めれば入れるんだよ。王立図書館に」


なに?


「王立図書館というと、あの?」


「そうだ。お前が前々から行きたいと言っていたあの王立図書館だ。一万年前の戦争についての歴史書すら保存している世界最高峰の図書館。そこならば、お前の望む何かがあるかもしれないだろう?」


なるほど……確かに私の目的の一つでもある王立図書館に入れる可能性がある、というのであれば確かにその提案はありがたいものだ。


本来国のために相当な戦果を上げた者や、国王から認められた人しか入ることが許されない図書館。


世界で発行されるあらゆる文書はもちろん。宗教戦争に巻き込まれ、焚書とされたものや数千年以上前の古文書まである。そこならば私の前世に繋がる何かがあるかもしれない……!


「ちょっとその学院、行ってみたくなってきたよ」


「だろう?お前ならそういうと思った」


「あ……でもルナはどうするんだ?」


「お姉ちゃんが行くなら勿論行くわよ。どうせなら友達も作っても良いわね」


この妹はいつか私から独り立ちする事はあるのだろうか、という一抹の不安は置いといて。


「だそうだ」


「そうか、じゃぁ手続きもあるし、明日にでも王都に行こうか。試験とかあるが……まぁお前らなら大丈夫だろ」


「え、試験あんの?」


「あるある。でも俺達だって通れたんだからお前らなら余裕だよ」


「父さんと母さんの母校なの?」


「そうよ〜、私たちが出会ったのも学院なんだから〜」


「ふ〜ん……」


「案外お前達もそこで運命的な出会いがあったりしてな」


「どうだろうなぁ」


「お前達がやろうとしてる前世探しだって学院を卒業してからでも良いし、せっかく行くんだったら年頃の女の子らしい事をしても良いと思うぞ。どうせなら一回ぐらいドレスを着た姿を見たい。竜と戦ってる姿とか血に塗れながら竜をの首を斬ったりする姿じゃなくて……な」


なんかすんません。


というわけで案外すんなり私たちの進路が決まった。

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