あとがき+解説(2025年現在視点)
本作『メイドロイド・ケイと神なき街』は2018年頃に執筆し某ラノベ大賞に応募したSF小説である。
一次落ちの上に再編集web公開版を検討していたところ東映から『仮面ライダーゼロワン』が制作発表されたほか、諸々の事情で自信を無くしてしまい作品冒頭部を除いて実質的な封印状態となっていた。しかし2025年現在改めて読み返してみると、商業レベルこそ達してないにせよ趣味レベルでみれば充分良い出来ではないか?と思い直しこの機会に7年越しで封印解除し、全編公開に踏み切った。
↓2019年時点公開していた冒頭部のみの試読版はこちら↓
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コンテスト中心かつ短編執筆偏重気味の現在では趣味に振り切った長編シナリオ小説が実質皆無に等しくなっているため、久々に読むと我ながら新鮮味を感じられて良かった。まあ問題点はあるにはあるけれど…。
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読む人が読めば分かると思うが、本作は主に東映メタルヒーローシリーズからの影響が顕著である。具体的にはジャンパーソン、メタルダー、ジバンなどだ。何かと廃工場が出てきたり、バトル描写はレスキューポリスシリーズの雰囲気も強い。主要人物の命名には昭和・平成ロボコンそれぞれからの引用があるほか、メインヒロインの名前『ケイ』はロボット刑事由来である。ロボットに関連する好きな洋画としてアイロボット、エイリアンコヴェナントの影響もみられる。これらが好きな方々はクスリとくるだろうし、本作で気になった方々は影響元作品も是非見てみてほしい。きっとお友達になれるだろう。
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さてここまでは趣味レベルの話であり、当時商業レベルを目標にしていたことを考えると反省点はまあまあある。
①映像作品の非言語表現を、小説作品の言語表現の中でそのまま再現しようとしたから、小説作品としての需要と自分のやりたいことが潜在的に嚙み合ってない。せめてもうちょっと比重を変えるべき。
②王道ヒロイン像としてのメイドロボを出した割に、メイド要素が事実上ファッションの域を出てない。というか文芸設定上あまり活かせてない。家族・ロボット・宗教他諸々混ぜた結果渋滞してる。
③上記と関連し、ロボットの町を緻密に作り込んだ割に舞台装置として物語上で何の役割を果たすのか、物語全体を主にどんな文脈で消費してほしいか絞り込めてない。リソース配分を再考すべき。
④キリスト教要素をロボット倫理・家族愛憎劇の接着剤に用いたが、おそらく読んだ人間からは全く理解されてない。日本人を主要読者に想定する以上、今後もおそらく理解される見込みは薄い。
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探せば他にもまだまだありそうだが…。
思えば本作は、創作物に意識的にキリスト教要素(というか聖書文化)を引用した初のケースである。元々著名な創作物のバックボーンを知りたかったことに加え、この時期ユーモラスな発信で上馬キリスト教会が話題になっていたため、創作物で宗教を扱うならこの際いっぺん本格的にやってみよう、という心持ちだった気がする。だがその後も何度か試行錯誤した感触的に、少なくとも自分の作品の中では非人間キャラが尊厳否定される際の理論的根拠として引用されるなど、どちらかといえば批判的位置づけの時しか上手くいった(読者に明確に意図が伝わった)ケースがないように思える。
ファンタジー含めて主人公目線でロマンの対象のように扱おうとすると持て余すというか、残念ながらあまり肯定的評価を得られない印象を持つ。この辺、単なる自分の技量不足なのか日本社会的に特に令和以後は共感を得るのが困難に陥っているのか、定かではない。完全な架空のカルト教を批判的位置づけで登場させたケースでもそうだが、宗教由来の要素(というか単語)が登場した瞬間一部の人間が壊滅的に意思疎通困難に陥るのは、単に前提知識を共有してないからか、あるいは自己防御か何かであらゆる情報共有を拒んで会話の破壊を恒久的に自己正当化し続けるモードに入ってしまったのか、発信側の目線では事実上確認不可能である(要するに『分からない』か『聞きたくない』かという差異の話)。
やっぱり箔付け程度の扱いが無難なんだろうか…。
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話題は変わるがロボットモチーフといえば、先述した『ゼロワン』(2019~2020)に加えて『ニーアオートマタ』(2017)や『デトロイトビカムヒューマン』(2018)など、この時期は類似モチーフを高度に洗練したものが多かった印象がある。
なお年々騒動の拡大する生成AIが最初に大騒ぎとなったのは、記憶では2022年8月末から9月初頭のことだ。何故そんな具体的に覚えているかといえば、本放送時は倫理観云々でボロカスに叩かれていた『ゼロワン』が一転「先駆的なことを描いてたんじゃないか!」と唐突に再評価機運の高まったのが、『仮面ライダーリバイス』(2021~2022)最終回放送から『仮面ライダーギーツ』(2022~2023)初回放送までのちょうど空白期間で、ロールアウトされた画像生成AI=管理不能に陥った人工知能の具体例扱いだったのを強烈に記憶しているからである。
東映繋がりだと、自分は再放送で見始めたので当時は意識しなかったが、『Hugっと!プリキュア』(2018~2019)のキュアアムールこと未来から来たアンドロイド=ルール―アムールも同時期登場したキャラクターだ。この時期はアンドロイド系の名キャラ・名作が豊富である。
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肝心の自分は、元々人工知能もの・アンドロイドものは多く履修していた(『PLUTO』『ターミネーターシリーズ』とか)にせよ、この頃はようやくアイザックアシモフ小説などの『ジャンルの祖』を履修し始めた程度だったので、単にロボットと共生する町というコンセプト以上の何かを描くには当時では少々周回遅れ気味だったかもしれない。そういう意味でも長らく自信を無くしてしまっていたのだが、再三いうように趣味小説レベルなら余程描き込んでいる方ではないか、と今では思う。
ほかにも、当時読ませた友人にヒロインが可愛くない呼ばわりされたが、どちらかといえば問題なのは主人公のリアクション(=ツッコミ)が面白くないことの方だな…とか、当時まだプリキュアシリーズを見始める前かつ家族との不仲解消する前だから今見ると女性不信が物凄い前面に出てるな(笑)…とか、ところどころツッコミどころはあるものの、面白いところはやっぱりそれなりに面白いと思う。
消費者目線を意識できなかったので、フェチはぎゅうぎゅうに詰まってるがバランス配分が悪い。商品としては成立しなかったが、趣味成果物としては歪でもそれなりには見栄えがする。これに尽きるのではあるまいか。なお本作は本作以前の別作品からキーワードや設定を流用した部分と、本作を実質封印していた関係上後年の別作品(主に短編)に要素を流用した部分とがそれぞれ数多く存在する。もしお時間あれば、自分の他の作品世界からそれらも是非探してみてほしい。
科学の夢ある発展と世界平和、争いの終結を願って 2025年11月




