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は?コイツ何言ってんの?〜自己中戦隊ジブンガーの実態〜  作者: NAO
第2章 誰にでも心には冬が棲んでいる
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4.天の岩戸

 私の祖母は小学校の教師で、戦争と言う黒歴史の中を生き抜いてきた人だ。

 戦時中、お金があっても物のない時代。

 だからお金より、物や人間関係を重んじる人だった。

 そんな祖母の口癖は「勿体ない」。

 お皿を割ろうもんなら、接着剤で直してまで使う。

 そして、欲しい物を買って満足して、大事にしまっておく。

 物に囲まれているのが幸せだと思う人だったので、亡くなってからの遺品整理は今だに終わりが見えない。

 そんな祖母の血を受け継いでる私にとって、八つ当たりで「物に当たる」なんてことは言語道断。

 断捨離も下手。

 買った物は大事に使う。

 貰ったものはもっと大事に使う。

 それが私の考えだ。


 義母は機嫌を損ねると部屋に閉じこもる。

 まさに天の岩戸。

 そうなると手がつけられない。

 誰とも喋らないし、家事の一切をしない。

 そして、物に当たる。

 お皿を割ってストレスを発散させる。

 それは1日や2日ってレベルの引きこもりではない。

 1週間や2週間はザラなのだ。

 そう、これが前述した「もっとめんどくせぇ事」だ。

 これを夫や義姉が子供の頃から定期的に繰り返されていて、夫や義姉は慣れっこなのだそうだ。

 原因はいつも不明。

 トイレの電気がつけっぱなしだった、とか。

 窓が開けっ放しだった、とか。

 テレビがつけっぱなしだった、とか。

 そしてそれは自分が消し忘れたり、閉め忘れたりもあったのだが、そこはほら。

 「自分が正しい」人だから自分の非を認めるわけがないわけで。

 そして夜中、みんなが自室に入るのを見計らって部屋から出てきて、もう使わない皿を私と夫の部屋に叩きつける。

 突然部屋に響くお皿が割れる音。

 普通にびっくりする。

 心臓に悪い。

 そんな状況になった事がないので、最初はお皿落として割っちゃったのかと思って様子を見に行こうとしたが、夫に「わざとやってるだけだから」と言われた。

 義母の気が済むと天の岩戸は開く。

 放っておくのが吉。

 余計な事は言わないのが吉。

 下手に口出しすると、もっと大変な事になる。

 天の岩戸が開くのが遅くなるからだ。


 私が来てから、何回目かの天の岩戸が開いた時だった。

 義母に

 「私とお父さんの分の洗濯はしなくていいよ。」

 と、言われた。

 洗濯の仕方が気に入らなかったんだろうと思い、「分かりました」と私は答えた。

 また天の岩戸が閉じられても困る。

 その頃私は、昼間母と一緒に祖父母のお世話をしていて忙しくしていたから、それ以上深くは考えていなかった。

 その1ヶ月後には

 「息子のもしなくていいよ。私とお父さんの分だけだと洗濯機回すのが勿体ないから。」

 と、言われてそれに従う。

 流石に自分の洗濯も頼むわけにはいかないので、昼間祖父母のお世話に実家に帰った時に自分の洗濯をしていた。


 ある時、夫が

 「お前、実家で自分の洗濯してるんだよな?悪いんだけど、俺の洗濯もやってくれない?」

 と、言い出した。

 「良いけど…お義母さんがやってるんじゃないの?」

 と、私が聞くと、夫は少し困った顔して

 「溜まったら洗濯するって言ってるけど、流石に1週間に一度だと、仕事服がないんだよ。」

 そりゃ着る仕事服ないんじゃ困るよね。

 「なるほど、うん、分かったよ。」

 余計な事するな!って義母に言われそうだな、と思ったが困るのは夫だ。

 それから私は自分の洗濯と一緒に夫の洗濯を実家でやっていたのだが、予感は的中した。


 「息子の洗濯をあなたがやってるなら、私は用なしよね!」

 と、義母はその言葉を最後に、天の岩戸がまた始まったのだ。

 あー、また夜中にいつ皿が割られるか分かんねぇ恐怖と戦うのか。

 めんどくせぇな。

 でもまぁ、1週間の辛抱だ、と思ったのも束の間。

 この時は長かった。

 夜中に皿をガチャンガチャン割っている義母に、辛抱堪らなくなった夫が、義母の天の岩戸へ行って

 「お前が機嫌悪いのは好きにしろよ!だけど人に迷惑かけんなよ!俺とお父さんは明日も仕事だし、せめてお父さんの仕事着くらい洗濯しろよ!」

 と、怒鳴りつける。

 すると

 「嫁が自分たちの物だけしか洗濯しないから機嫌悪いんだよ!」

 と、天の岩戸から怒鳴り返された。

 は?コイツ何言ってんの?

 洗濯の経緯を知っている夫も流石に絶句。

 「…アホくさ。」

 と、ため息混じりに天の岩戸を後にする。

 「お義父さんの洗濯も私やろうか?」

 私は夫に提案すると、夫は

 「お前が何やっても、やらなくても気に入らないんだよ、アイツは。だから知らん顔しとけ。」

 

 それから1ヶ月半、天の岩戸は開くことはなかった。

 ホント、めんどくせぇババァだ。

 しかし、それが「嫁イビリ」だと私が気付くのは、まだ先の話だ。  

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