表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
は?コイツ何言ってんの?〜自己中戦隊ジブンガーの実態〜  作者: NAO
第2章 誰にでも心には冬が棲んでいる
20/28

19.私の怒りスイッチを押さないでもらって良いですか

 私が家事をやっていると、義母は基本部屋から出てこない。

 家事をやりたくないからなのか、気まずいのかは分からない。

 でも、機嫌が良い時は部屋から出てきて、「これはどうやるの?」とか「これ、私がやるよ」とか言ってくるので、おそらく前者であろう。

 数日前、夫と義姉にあんなに「嫁ちゃんの家事を出来る事は手伝え、リハビリだ。」と言われていたのに、だ。

 かと言って、私も部屋まで行って「やれ」とまで言うつもりはない。

 やりたくないならやらなくて良い。

 私は性格が悪いので、やりたがらない人をやらせるのは面倒くさい、やりたくないならやらなくても良いと言う考えを変えるつもりはない。

 私はぐうたら主婦だ。

 できなくて困るのは私ではないから。

 いつか、家賃の安い部屋が見つかったら一人暮らしをするんだ、と張り切っていたものの、蓋を開けてみたらこれだ。

 「怒られているうちが花」とは正にこの事だ。


 ある時、私の幼馴染から連絡があった。

 30年来の親友で、私の両親も良く見知った友達だ。

 頻繁に連絡を取り合うわけではなかったが、何年かに1度連絡があると何時間も通話してしまう。

 そんな友人から連絡があったのだ。

 久しぶりに会いたいから遊びに行きたいと言う連絡だった。

 彼女の行動力は昔から半端なかった。

 義母に過去追い出されけど今また同居する羽目になってるから義母が家にいても大丈夫?と聞くと

 「大丈夫、大丈夫。私は全然気にしないから。」

 と、笑っていた。

 そして、彼女は昔と同じ笑顔で新幹線の駅のホームに降り立った。


 駅から自宅へ向かう車の中で、いろんな話をした。

 義母の性格や、今置かれている状況、自分自身の事。

 彼女は「なかなかクセのあるお義母さんだね。」と笑う。

 「だから、ごっちゃんに迷惑かけるかも。先に謝っとくわ。」

 私は彼女を「ごっちゃん」と小学生から変わらずそう呼んでいる。

 「あー、大丈夫大丈夫!私今、介護施設で働いてるから、そういう人には慣れてるから。」

 と、笑いながら言う。

 「頼もしいわ。じゃ、その手のひらの上で転がす手腕を見せてもらうよ。」

 私も笑って答えた。


 家に着いてからも話は尽きなかった。

 楽しくて日常を忘れるのに、大した時間はかからなかった。

 その間、義母の事も全く気にならなかった。

 話の流れで、急遽うちに泊まっていくことになった。

 私が夕飯の支度をし始めて、ごっちゃんがお風呂に入っている時、義母の存在を思い出した。

 義母が部屋から出てきて

 「あの子はお友達?」

 と聞いてきたからだ。

 「そうですよ。いつも電話で連絡取り合ってたんですけど、時間ができたからってこっちに遊びに来たんです。」

 そう、私が答えると

 「そうなのね。ずっと大きな声がしてたから。」

 と、義母が言う。

 「うるさくしてすみません。でも、久しぶりなんで大目に見てもらえると助かります。」

 と、私が言うと、義母は部屋に帰っていく。

 「楽しそうな声」ではなく「大きな声」って言う所はさすが義母だ。

 他人に興味がないから、義母は言葉のチョイスが下手だ。

 言葉を選ぶと言う事はしない。

 私は、「通常運行だな」と、笑ってしまう。 


 ごっちゃんがお風呂から出てくると、夫が仕事から帰ってきた。

 そして夕飯は全員で食卓を囲んだ。

 そして、私と夫とごっちゃんで話に花が咲いていたが、気まずいのか、興味がないのか、話題に入れないのか、義母は一言も喋らなかった。

 それに気付いたごっちゃんは、義母にも分かるような話題を振った。

 「お義母さんの子供の頃はどうだったんですか?」

 義母は

 「私は戦後間もなかったから物のない時代だったわね。」

 と、答える。

 ごっちゃんはそれに続いて

 「じゃ、大変な子供時代だったんですね。でも、お義母さんたちが苦労して過ごして来てくれたから私たちは良い時代を過ごせたんです。感謝しないといけませんね。」

 と、笑って言う。

 さすが、介護施設で働いているってスゴイと思った。

 相手を持ち上げるのがうまい。

 「そうなのよ、実家は裕福だったから、お金はあったんだけど物が買えなくてね…(自慢話以下略)」

 そんな義母の自慢話に対して、ごっちゃんがうまく話を合わせて話が続いていた。

 しかし、急に夫が義母に言う。

 「ごっちゃんと嫁はもう30年以上付き合いのある親友なんだよ。すごいよな。30年だよ?30年。お母さんにそんな友達いる?」

 と、夫が口を挟んだ。

 私には、義母の何の話が夫の気分を害したのかは分からない。

 夫に悪意があったのかどうかも分からない。

 その言葉に対して

 「友達なんていらない、いらない!めんどくさいもの。」

 と、義母は笑いながら言った。

 私がマウント取ったつもりもないので、無言を突き通す。

 夫よ、余計なことは言わんでもろて。

 「そうだろうね、お母さんと気が合う人なんてそうそういないもんな。」

 夫がニヤニヤしながら言う。

 だから余計な事は言わないでもろて。

 恐らく、夫とのこの会話が義母は気に入らなかったと思う。


 楽しい1日を過ごした次の日、ごっちゃんは帰っていった。

 ごっちゃんのお陰で気分も変わったし、モチベーションも上がっている矢先それは起こった。


 私が洗濯物を取り込んで畳んでいる時だった。

 珍しく義母が部屋から出てきて

 「何かやることある?」

 と、聞いてきたので、

 「じゃ、自分のものだけでいいので畳んで貰って良いですか。」

 と、言った。

 私が黙々と畳んでいると、義母が私に

 「昨日の子はもう帰ったの?」

 と、聞いてきた。

 「はい、午前中に新幹線の駅まで送ってきましたよ。楽しい1日でした。」

 私がそう答えると

 「あの子は調子がいい子だから、あんまり信用出来ないわね。」

 と、義母。

 急に何を言い出すかと思っけど、多分「私の30年来の親友」と「友達がいない」と言うワードが気に入らなかったんだろう。

 その言葉にあんぐりの私は、心を落ち着けて

 「どう言う意味ですか?」

 と、聞き返すと、義母は

 「こっちを気分よくさせて、色々話しさせて、上手く持ち上げてるけど、心の中では私をけなしてるのよ。あんな子が親友なんて、嫁は可愛そうね。」

 は?コイツ何言ってんの?

 私がけなされるのは良い。

 でも、ごっちゃんをけなすのは許さない。

 「お義母さん、私の怒りスイッチを押さないでもらって良いですか?言って良い事と悪い事があります。私をバカにしたりマウント取るのは全然構いません。私はそう言う事に対して疎いので怒る事はありません。」

 と、一息ついてから義母を睨んだ。

 「でも、私の大切な人達をけなすのは絶対許さない。人をけなして、他人の気持ちを考えずに発言するお義母さんはどうなんですか?だから周りに誰もいなくなるんじゃないの?友達がいないんじゃなくて、友達が離れて行ったんじゃないんですか?私ならそんな他人の気持ちを考えられない友達はいならいですから。」

 と、私は落ち着いて言ったつもりだが、義母は

 「友達なんていてもめんどくさいだけだから、私が関係切ったのよ。」

 と、ドヤ顔をかました。 

 そうだよね、こう言う人だった。

 周りが私を切ったんじゃない、私が周りを切ったのよ。

 だから、私の方が上なの。

 そう言いたいんだよね。

 知ってた知ってた。

 だから私は義母とムダな話はしないんだったわ。

 「そうですね、お義母さんは賢いですからね。私はバカなので、友達は大事にしたいんです。」

 と、呆れ顔でそう言うと、義母は自分の洗濯物を持って自室に戻って行った。


 私の怒りスイッチは「他人の事を言われた時」にある。

 それを知った義母は、その後から私をバカにしたりけなしたりせず、私の両親や姉妹、友人をチクチク口撃する様になった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ