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は?コイツ何言ってんの?〜自己中戦隊ジブンガーの実態〜  作者: NAO
第2章 誰にでも心には冬が棲んでいる
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18.言いたい事はそれだけか

 かくて義母との共同生活が始まった。

 とは言え、私はいつもの家事をやるだけだ。

 もちろんいつもの家事も、「義母の機嫌を伺ういながら」ではある。

 それは「お仏壇を守る為」であり、「この家で死なせない為」の小さな努力だ。

 大した事はない。

 基本は「うちはうち、他所は他所」なので、そこにプラスアルファがあろうとなかろうと、やることは通常運行。

 私は面倒くさがりで効率厨なので、家事も効率重視。

 無駄に階段を上がる様な事はしないし、導線もできるだけ一往復を重視している。

 うちは二階建ての一軒家だ。

 階段を無駄に往復しない様に、今日の家事の導線をどう引くか考える、と言う自分の中で家事を楽しんでやっていた。

 しかし、他所から人が来たわけなので、無駄な動作は増えた。

 他所には他所のやり方あるのは分かってるのでそこまで気にする事はないし、家事に対して「やる」か「やらないか」のこだわりしかない。

 あ、「洗濯物が良く乾く干し方」くらいかな。

 なので義姉には申し訳ないが、義母に「手伝わせる」ものを考える方が面倒くさかった。

 今まで一人で切り盛りしていたから、誰かの手を借りるほどのことではないのだ。


 義母のやれる事は限られてる。

 今回の脳出血の後遺症は、少しバランスが悪くなっていて、前回の脳梗塞の後遺症はまだ残っている。

 右足と右手の麻痺は全く良くなっていない。

 右足は少し引きずって歩く、右手は動かせるが動きが悪い。

 転ばれたら困るので、階段は登らせられない。

 寧ろ死亡するリスクは避けたいので、絶対二階には上がらせない。

 二階に上がれるには上がれるが、付き添うなんて面倒くさい。

 だから義母にやらせられるのは、掃除機をかけた後のモップ掛けと、洗濯物をハンガーにかけるだけだ。

 ただし、義母の使っている部屋は別だ。

 私は他人のプライベートスペースに入るのは極力避けたい。

 だから、自分の使っている部屋は自分で掃除をすればいいと思ってる。


 義母の使っている一階の和室には、テレビのアンテナ端子と、電話線端子が付いている。

 祖母がその部屋で、「茶道教室」をやっていたからだ。

 テレビは私が使っていたものを置いて、見やすいように私が使っていない二人掛けのソファーを置いてあった。

 前述したとおり、私の家事は効率重視。

 午前中にガッツリ家事をやって、午後はまったりゲームをやったり、アニメを見るのが通常運行。

 午後のまったり時間を確保するのに、午前中は効率良く動きたいのだ。

 だから、義母が部屋から出て来ないなら来ないで、声をかけるなんて面倒くさいことはしなかった。

 最初の1ヶ月は、掃除機の音が聞こえると、部屋から出てきてモップ掛けと洗濯物をハンガーにかける作業をやっていた。

 しかし、慣れてきたのか、だんだんと朝は部屋から出てこなくなった。

 私が家事をやってると、義母の部屋からはいつもテレビの音が聞こえていた。

 だから、起きているし掃除機を掛けてるのは分かっていたはず。

 掃除機をかけて、洗濯物を干し、洗い物をし、足りない物があったら買い物をし、夕飯の下ごしらえをする。

 それがすべて終わった頃に、のこのこと部屋を出てきてこう言う。

 「何かやることある?」

 私も「今更やる事ないですよ。全て終わってるんで。」なんて、トゲのある言い方はしない。

 「そうですね、特にないですね。」

 と、返す。

 「じゃ、手伝わなくてもいいわね。」

 義母はそう言って部屋に戻ってテレビを見始める。

 そして、次に部屋から出てくるのは、昼食と夕食の時だけだ。

 いてもいなくてもいい人だからこちらとしても楽で良いので、特に何も思ってなかった。

 

 ある日の夕食の時、夫が突然言い出した。

 「お母さん、最近ちゃんと家事手伝ってる?」

 私が答えることはないので沈黙していると、義母が答える。

 「ちゃんと手伝ってるわよ。モップと洗濯物。」

 そもそも、手伝いをさせる気がないので反論はしない。

 すると夫が私に言う。

 「いや、お母さんに聞いてるんじゃなくて、嫁に聞いてるんだよ?」

 突然でびっくりして

 「は?私?なんで私に聞くの?」

 と、聞き返す。

 「ねぇちゃんが、午前中にお母さんからしょっちゅう電話かかって来て、その後ろで掃除機の音がしてるのに、お母さんは毎回長電話して全然電話切ろうとしないから、手伝ってないんじゃないかって。」

 夫のその答えに、なるほどって思いながら

 「あー、そうなんだ。でもお義母さんできること少ないから。」

 と、はぐらかす。

 1日中テレビとお友だちだし、何なら部屋から出てこないよ?

 そもそも、手伝ってるなんておこがましい。

 振る作業考えなきゃいけないってタスクが増えてるから、邪魔なので部屋に引っ込んでいてもらえる方がありがたい。

 なんて義母の機嫌を損ねる事は言わない。

 「まぁ。嫁が何もないならいいよ。」

 夫はそう言って食事を続ける。

 義母は意気揚々と

 「だから、ちゃんとやってるって言ったでしょ?嫁に頼まれた事はちゃんとやってるよ。」

 あぁ、「やる事ある?ってちゃんと聞いてるけど、やる事ないって言われた」を、「やる事ある?って聞く事をやった」に脳内変換してるのね。

 笑える。

 と、思ってると夫が不機嫌そうに

 「言いたい事はそれだけか?俺とねぇちゃんが知らねぇとでも思ってんの?」

 と、義母に言う。

 「何が?」

 義母も不機嫌に聞く。

 「電話から掃除機掛けてる音がするのにお母さんは電話切らない、って事は嫁が家事をやってる時何もしてないって事だよな?ねぇちゃんは1ヶ月嫁と一緒に生活してて、嫁の生活リズム知ってるし、俺も知ってる。嫁は午後はまったりしたいから、朝からガッツリ家事やるんだよ。お母さんが長電話してる間に嫁は家事終わってるんじゃねぇかって事だよ。」

 夫、正解。

 「電話終わった後にちゃんと「やることある?」って聞くと、いつもないって言うから。」

 義母、珍しく脳内変換してないな。

 「あのなぁ、それは「終わってるから今更やる事ない」って事だろ!優先順位が違うんだよ!ねぇちゃんと電話したけりゃ、嫁の家事を手伝ってからにしろって言ってんの!」

 夫、正論をぶつける。

 「手伝って欲しければ嫁が声掛けてくれれば良いのに、声かけてこないから手伝わないだけよ!」

 義母、責任転嫁。

 この親子のやりとり、実に面白い。

 「そうじゃねぇだろ!嫁がやってる時に聞きに行かなきゃ、やることあるわけねぇに決まってんだろ?嫁は人に頼む時間あったら自分やる方が早いって考えの人だから、部屋から出てこないお母さんに、いちいち声かけるなんてするわけねぇじゃん!」

 夫、再び正論。

 「何で手伝って「あげる側」の私が声かけるの?手伝ってって言われないんだから手伝う必要ないでしょ。」

 は?コイツ何言ってんの?

 「手伝ってあげてる」って何?

 アンタの場合「手伝い」じゃないんだよ、リハビリなの。

 アンタは自分のために「リハビリ」をするんだよ。

 私は「手伝い」はいらないから、私から声かけるわけねぇじゃん。

 「お前、マジでそれ言ってる?ここに置かせて貰ってる自覚あったら、できることやんなきゃって思うのが普通の人間の考えだぞ?それに、普通の人はお前の部屋に入りづらいし、電話してたら声掛けづらいだろ!だからお前から声かけろって言ってんだよ。」

 夫、すまない。

 マジで遅延行為でしかないから手伝いはいらない。

 そもそも義姉と電話してたの私気付いてませんでした。

 「私は勝手に部屋に入ってくれていいし、いつでも声かけてくれて構わないわよ!」

 義母、ちょっとズレ始める。

 「だーかーらー!そうじゃねぇっての!仕事を貰いに行けって事なんだよ!ねぇちゃんにも「リハビリだと思って嫁の手伝いしろ」って言われてるだろ?毎日何もしなけりゃ、リハビリも何もねぇじゃねぇか!」

 夫、路線を戻す。

 あー、ホント面白い。

 「うるさい!うるさい!嫁が言って来ないんだから良いじゃない!」

 義母、ついに私のせいにしてきた。

 そして、義母は食事の途中で席を立ち、部屋に引っ込んだ。

 そうなると思ってた。

 「はぁ…。」

 夫は盛大なため息をつき、私に

 「悪いんだけど、アイツに声掛けてやらせてくれない?」

 と、言ってきた。

 私はしれっと

 「え?やだ。めんどくさい。私は部屋にいてもらうほうが楽だし、そもそも「手伝い」はいらない。」


 その後、リビングで夫とテレビを見ていると、義母の部屋から声が漏れていた。

 結構な大声で、先程夫に言われたことを電話で

 「嫁が息子にチクったから怒られた!」

 と、誰かに愚痴っていた。

 多分義姉だろう。

 脳内変換すげぇ。ホント笑えるわ。

 しかし、

 「もう良いわよ!誰も私の気持ちなんて分からないんだわ!もうアンタも死ねばいい!」

 と、怒鳴っていたので、やはり義姉だろう。

 「死ねばいい」って、コイツ何言ってんだよ。

 思春期の男の子が親に向かって「クソババァ」って言うよりたちの悪い拗らせだな。

 でも、何か物を投げる様子も暴れる様子もない。

 お仏壇は無事だろうから放っておく。

 こうやってお仏壇を心配しなきゃいけないから、義母に何も言いたくないのよ。

 まったく、やれやれだわ。

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