何かに執着された話
にんげんこわい
バレンタインデー、初めての彼氏にチョコをあげる予定だった。
あいつがわたしの部屋に女を連れ込むまでは。
作ったチョコレートは女のおやつになってたし、
綺麗にしている部屋は泥棒が入ったのでは?というくらい汚くなっていた。
ほんの一日、留守にしていただけなのに。
気づけば彼氏であった男をタコ殴りにして、女と一緒に裸で放り出して警察を呼んでおいた。
二人とも不法侵入だか公然猥褻だとかで1日お泊まりをしたとかしないとかで噂になり、共に大学から姿を消した。
タコはしばらく粘着してたが、親がとっ捕まえて田舎の蛸壺に抑えてると手紙が来た。
ご丁寧に蛸壺に収まるタコの写真まで添えて。
良心的な両親…どうしてあの良いご両親からあんなのが産まれたのか。
こういう時に心配してくれる両親が欲しいな。とぼやきそうになった。
女は女で大学を辞める原因は私にあると思って粘着してきた。
親と一緒に。
残念だが警察呼んで警察に説教されてそれでもわからないのか暴れて警察官に手をあげて御用となった。
そのあとは知らない。
家ごとなくなっていた。らしい。
「ホント嫌な話だな。」
嫌な話しで済めば良かった。
その後もすごく大変だった。
タコの信奉者だか女のファンクラブの会員?だかが大勢講義中に乗り込んで彼の、彼女のここが素晴らしい!だの演説を始めて警察が乗り込んできた。
次の日、信奉者やファンクラブの人たちは服はボロボロ、髪は所々ハゲて廃人のようになって学校の門の前で正座してた。怖。
めっちゃゴメンナサイを連呼してた。
「えっ怖。」
『……って話が1ヶ月以内にあった話。』
私はげっそりとしていた。
男友達は合間に感想を述べていたが沈黙をしてる。
「…運の悪さもだけど後日譚も怖ぇえよ!」
『しまった。百物語に使えば良かった』
「にんげんこわいじゃん!」
『おあとがおそろしいようで。』
などど他愛もない話をしていた。
ガァン!ガァン!
『ーーーー!ーーーー!』
私を呼ぶ声がした。
「お前じゃね?」
『私だね。誰?』
げ。
タコ殴りした元彼、タコである。
待て待て。
ヤツの隣に居るのは絶賛行方不明だった浮気相手の女とその家族じゃん
いやホント待て。
さらにその後ろのハゲやらは信奉者たちとファンクラブたちやん。
『やばそう。』
「やべぇな。怖えぇ。」
チビっちゃいそう。なんて言いながら男友達はタバコを吸いながら玄関を開けた。
いやいやいや。
呑気にタバコ吸ってんじゃないよ!
しかも玄関勝手に開けて。
しかもかなり煙たい。
『やっ…!ちょっと待っ…!』
奴等の方を見ると恐怖に慄いたような顔をしていた。
目はめっちゃ見開いてるし、口は噛み合わないのかな。ってくらいガチガチ震えていた。
「そこまでコイツを執拗に狙うのってオカシイよな〜。しかもへし折ってもへし折っても湧いて出てきやがる…」
カタン
『へ?あれ?』
いつの間にか連中が消えてしまった。
というか、暗闇になってしまった。
「一生懸命潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰しまくったのにな」
…この人は…誰?
男友達。あれ?男友達なんて私には…いたっけ?
友人は彼氏と別れた一件からいなくなってしまった。
暗闇でもガタガタと震える音が聞こえる。
歯と歯がガチガチとなる音がする。
「害虫は、 の目に触れない方がいいな。
駆除しておこう。」
いつの間にか…寝てしまったようだ。
気付けば日付が変わる時間である。
「お。起きた」
『んあー…ごめん…寝ちゃった』
「大丈夫。マンガ読んでたし
てか寝汗ひどいな。風邪ひくなよ」
『変な夢見ちゃってさ…わー…汗すご』
『元彼や浮気相手やらその他大勢が家にくる夢見ちゃってさー
気軽に話題に出すもんじゃないね』
「んなやつ忘れろ忘れろ。
このままここにいれば安心だからさ」
『ありがと…』
『ここは私の夢なのかな。ずっと穏やかでいられる
』
「現実だってwww」
男友達はそのまま私の手を掴んで大きな手で顔を覆い、
「おやすみ。」
だれがこわかった?