妻とジャスミン焼酎
「よほど売れてないんだと思うわ」
仕事中の僕に妻が話しかけてきた。
妻の話の9割はスルーしているが、いつだって気にせず話し続ける。
「激安で気になるんよね」
売れ残っている何かが叩き売り状態という話のようだ。
1割の力を使って返事をする。
「買ってこれば良いじゃない」
「そうなんよねぇ。でも美味しくなかったらどうしよう?」
いくら何でも飲めないってことは無いだろう。
ここ日本においてそんな飲み物があるわけがない。
そう考えていた。この時までは。
ある日玄関にジャスミン焼酎が置いてあった。ケースで。
「買っちゃった」
ジャスミン焼酎。
ジャスミン焼酎をジャスミン茶で割った商品、ジャスミン焼酎をジャスミン茶で割った商品らしい。
ピンと来なくて2回読んでしまう。
そういえば妻はしばしばペットボトルのジャスミン茶を買っていた。
ジャスミン焼酎に興味を持つのも自然な流れだ。
その夜、妻は一つ開けて飲んでみた。
妻がしばらく固まった。
そして言った。
「これは売れ残るのも分かるわ」
試しに僕も一口飲んでみたが次は続かなかった。
そして二人で同じことを思った。
「これ、どうしよう……」
ケースにはあと23缶残っていた。
ところが、である。
数日後、妻が2缶目を開けていることに気付いた。
「なんか気になるんよね」
どういう心の、あるいは味覚の変化だろうか?
更に数日後。
いつの間にかケースの残量が減り始めていた。
妻は酒量が少ないのでペースは遅いが確かに前より減っている。
「最初はどうかな?って思ったんだけどね」
「意外と行けるかもって思ったんよね」
気に入ってるやん。
今現在ケースは半分まで消化している。
なんなら他のお酒より消費ペースが早いくらいだ。