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やや創作日記  作者: うら
5/11

初めての愛媛を行く

「愛媛県では蛇口からみかんジュースが出るんだよ」


言葉足らずの説明に子どもたちが目を輝かせる。

噂の蛇口はどこにあるのだろう。



- 雪の道後温泉


いわゆる温泉街というのはチケットを買ったらあちこちの温泉施設を回れるイメージだった。

それとは異なり道後温泉の場合は公式サイトに乗っている本館がメインと思われる。

しかし、何度読んでも利用方法が理解できない。


結局、窓口で確認し次のような仕組みと理解した。

1階は大衆向けのお風呂。

2階は特別なお風呂と共同休憩室でのお茶菓子。

3階は個室の休憩室。

それと皇室専用浴室のガイド。

これらを組み合わたチケットが販売されている。


僕らはお風呂が目的なので1階2階の利用券と皇室専用浴室ガイドのついたチケットを買った。

なかなか良いお値段である。


神のたまのゆと読むそうだ。

日本最古の温泉というだけあって浴槽は一つと作りはとてもシンプル。

ただ石の浴槽の造形は目を引く。お風呂でこれほど凝ったものは他に見た記憶がない。

また最古とは思えないほど清掃が行き届いているように思えた。


「天井の装飾がすごかったよね」


妻は時々彗眼を見せる。

湯上がりにお茶と飾り気のないお菓子を食べる。ちょっとした昔の貴族気分だ。


又新殿ゆうしんでんと読むそうだ。

皇室専用浴室はかなり深い作りとなっていた。

実際には湯量は控えめだったとガイドさんから聞く。

繋ぎのない御影石の浴槽はどのように作られたのか想像がつかない。

それを聞いてみると「そのようなご質問をされるお客様は珍しい。」と言われた。

想像もつかないほどの手間がかかっているとの説明であった。

まさか巨大な石を紙やすりのようなもので延々削って作ったのだろうか。

信じられないがあながち間違っていないのかも知れない。


道後温泉。価値を感じるかは評価が分かれるところだろう。

入浴施設というよりは体験型文化財と捉えた方が良いと思われた。



- 今治タオルとみかんジュースの出る蛇口


今回の旅でぜひ買いたいもの。それが今治タオル。

毎日使うタオルは良いものにしたい。良いタオルと言えば今治タオル。

そんな熱い思いを伝えるものの妻の返事はそっけないものだった。


「でも高いんでしょ。必要ある?」


否定はできない。

ホテルではあの大量のタオルに一体いくらかけているのだろうか。

でも良いんだよね。ホテルのタオル。売って欲しい。


「私は要らないかなぁ」


妻にそう言われても気になるので道後温泉本館近くにある今治タオルのお店を覗いてみた。

一概にタオルと言っても用途や目的によって種類も様々ある。

肌触りを売りにしたもの、速乾性を売りにしたもの。耐久性を売りにしたもの。等など。

材質とか編み方によって変わるのだろうか。奥が深い。


「へぇ、タオルレンタルなんてあるのか」


レンタルという形でタオルを家に持ち帰ってお試しできるサービスらしい。

良いサービスだけど旅行中の僕らには厳しい。

サイズもいくつかあるようで……おや?


「へぇ、スリムタオルというのがあるのか」


それを発見した瞬間、一筋の光明を見た気がした。

通常のサイズの半分?いや、もう少し小さい?その分、お値段はまだ手が出せそうなレベルだ。

これをいくつか買ってみよう。


「がっしりと、すぐさらと、ながもちと……これくらいかな」


物色しながら店内を回っていると……あれっ?

かごの中身が増えている。。


「これも良いんじゃない。こっちも気になるね」


妻が足していた。いや、要らないって言ってたやん!


「やっぱり実物を見ると欲しくなるよね」


なんなら僕より多く入れている。

そして支払いは僕だ。くぅ。


このタオル屋さんでは意外な出会いもあった。

店内奥にみかんジューススタンドがあったのだ。


子どもたちと妻が吸い寄せられていく。

不思議な組み合わせに疑問を持ちつつ僕もついていく。


蛇口の数、すなわちジュースは5種類。

1つだけだと割高なのでほぼ飲み比べセットの方に流れるパターン。

飲み比べセットだと3つ選べる。


3つ?

割り切れない。。


誘導されている気がしつつ、全種類飲みたいので飲み比べセットを2つ購入。

甘さが際立つもの。酸味の強いもの。バランス良く飲みやすいもの。


「これは温州だっけ?」

「え?温州はこっちに戻したよ」

「ちょっとー!順番入れ替えないで」


あっち飲んでこっち飲んでを繰り返すうちにどれがどれやら分からなくなる。

カップにラベルでもつけると良いのかも知れない。

全然違うのが興味深く味は100%満足した。


タオル屋さんを後にして商店街を回るとより本格的なみかんジューススタンドを発見。

こちらは20種類扱っているそうだ。

うーむ、多様性。



- 道後温泉の宿


宿はウェルカムドリンクのサービスを行っていた。

ビールも飲み放題と言うので俄然興味が湧く。でもその前にお風呂だ。


お風呂は隣の宿とも連携しており、2箇所を楽しめる。

何故そのような仕組みを取っているのかは気になるところ。

サウナで大阪から来たというお兄さんに声をかけられる。

「どうやって温めているんですかね?こういうサウナ見るの初めてで」

ごく標準的な気がしつつ質問に応じる。

ところで何故僕に聞いたのだろう。

通に見えたのだろうか。

フェリーで来たこと。

彼女はお風呂がメインだけど、自分はそうでもないこと。

そんな他愛もない話をして、偶然の出会いを楽しむ。


「昔は結婚式場だったのかな」


ウェルカムドリンクは教会風の建物内で提供していた。

ビールを飲んでいると程なく先ほどのお兄さんも彼女を伴って訪れていた。


夕食は家庭料理を思わせる惣菜が並ぶビュッフェ形式。

提供は少量ずつで食品ロスを意識しているように思えた。

欠品に対する補充対応は早くて不満を感じることは無かったものの、

お風呂や食事の対応を見ていると観光地と言えど台所事情は厳しいのかも知れない。



-- 帰路


「飛行機が無事飛ぶことをお祈りするね」


商店街でお店を切り盛りする気さくなおばちゃんは僕の不安にそう答えた。

松山で雪が降るのは珍しいそうだ。

帰るその日は朝から吹雪いていた。

近いとは言え早めに空港に向かった方が良いかも知れない。


「9時半にはチェックアウトした方が良いからそのつもりで」

「分かった!じゃあ、9時半に開くお店回ってからホテル戻るね!」


妻には話が通じない。

結局、妻は予定通り10時前に戻ってきた。


雪については杞憂だったものの、強風や凍結防止対応で飛行機の出発は遅れていた。

待っている間、妻がお菓子やらジュースやらカレーパンやら買ってくる。

出発が遅れる程にカロリー摂取が増えそうだ。


セントレアまでは初めてのプロペラ機。

音や加速の具合が違って面白い。


行きと同じくキャビンアテンダントさんのテキパキした動きに感心する。

飲み物で次男がコンソメスープを所望するものの、子どもにホットの飲み物は提供していないとのこと。

それでも食い下がる次男は勇ましく見えた。


代わりでないだろうが、次男にはおもちゃのプレゼントが来た。

兄弟のいる場合はお兄ちゃんも対象となるのかもしれない。

ところが長男は「いや、良いよ」と断っていた。

子ども扱いが嫌なお年頃になったか。


おもちゃは組み立てるとボールになるものだった。

どう考えても着陸までに間に合わないタイミングで妻と次男で作り始めていた。


高知と愛媛の旅はこれで一旦終わる。

高知は中央を回っただけなので岬の方まで回りたい。

四万十川にも行きたいし、夏のレジャーも体験したい。

愛媛は道後温泉だけで終わったのでまだ何も知らないに等しい。

次回行くときはどこを回ろうか。

既に次の計画を考え始めていた。


飛行機ではシートベルトの着用サインが点灯した。

妻が慌てて未完成のおもちゃを片付けている。

完成するのは自宅に戻ってからになりそうだ。


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