↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/110

青い鬼

 セイナ、ホタル、そしてフローラの三人は見事な連携で魔龍帝の浄化を成功させた。


 ロストオーバースペルの一つ、神技『浄化ノ光』


 古代魔人族最強の魔女であるフレローラの末裔であるフローラは、幾星霜の時を経て受け継がれた隔世遺伝の大魔女だ。


 その正体は……おっと、今はやめておこう。いずれ真の覚醒の時がやってくるから、その時のお楽しみだ。


 それより、目の前のこいつだ。


 魔龍帝との戦いの最中もずっとその気配は濃厚に感じとっていた。


「非常に面白いものを見せてもらった。流石は魔王を倒すべく神託を受けた勇者一行だ」


「お前、何者だ」


 青白い肌に紫色の髪。細い体はあばら骨でも見えそうなほど肉の無い皮だけの体型だ。


 特徴的なのは額から伸びる大きなツノ。


 青白い肌の色と相まって、『青鬼』という言葉がしっくりくる。


 窪んだ目には大きな隈ができており、不健康そうなツラは見ているこっちが気分が悪くなってくる。


 こんな奴は小説にもゲームにも出てこない。

 

 一体何者だ? 


『むむぅ……。ステータスが解析不能です。ゲームの登場キャラじゃないのは確かですね』

 

 なるほどな。もしかしたら、俺と同じ物語の異物なのかもしれない。


「お前が魔龍帝を狂わせた張本人か?」


「ご名答。ならばどうす――ゴハッ⁉」


 とりあえず土手っ腹に一発蹴りをくれてやった。

 敵なのは間違いないので様子見なんかする必要はないだろ。


 拷問して情報を吐かせよう。


『シビルさん容赦ねえッスな』


 躊躇してもいい事なさそうだしな。


「ライトニングピアスッ」


 更に追撃。壁に激突した青い奴の両脚にライトニングピアスを叩き込む。


 言い忘れていたが、こいつは下位魔法のサンダーピアスを更に鋭く攻撃力を凝縮した改良版だ。


 俺は基礎的な下位魔法以外は覚えられなかったが、二次創作のスキルを駆使して威力や範囲をコントロールすることで、新しい魔法を作り出すことができたのである。


「ぎゅぁああああっ⁉ ぐぬぬ、こ、これは」


「動くなっ」


「ぎゃぁあっ⁉ う、腕がっ、ぐぬぬ……貴様、その強さは一体……」


 両手両脚を剣で斬り飛ばしてダルマ状態にしてやった。これで下手な動きはできない筈だ。


「余計な問答をするつもりはない。俺の質問にだけ答えろ青いの」


「ぬぅう……ごほっ……な、なんという早さだ……魔法も剣速もまるで見えぬッ」


「てめえは何者だ。魔龍帝を操って何がしたかった」


「くっ、くく……そんな質問に私が答えるとでも? ぬがっ、ぐぁあああっ」


 倒れ込んだ男の背中を蹴り潰す。


 苦悶の表情を浮かべながら絶叫する男にも容赦なく攻撃を叩き込んだ。


 拷問なんてやったことないけど、大体の生物は痛みを嫌がる筈だ。


「質問にだけ答えろと言ったはずだ」


「ぐぬぅ……」


「一度逆らうごとに蹴り一発だ。徐々に威力を強くしていくから覚悟するんだな」


「ぬっ……いいだろう。質問に答えてやる――ごがっ」


「口の利き方に気を付けろ。俺は今、超機嫌が悪いんだ」


 もう一度蹴り込むと、今度こそ大人しくなった。


「まずは一つ目。お前は何者だ」


「く、くくくくっ……。我が名はバンシー。邪神様の使いである四鬼衆が一人。青鬼のバンシーなり」


「四鬼衆……そして邪神か」


 バンシーってあの妖精のバンシーか?

 四鬼衆ってことはやっぱり鬼か。妖精っていうより子鬼って言葉の方がしっくりくる。


 計らずもミルメットの記憶と予想が当たっていた訳か。


 つまり俺達の敵は邪神。この世界を滅ぼそうとする元凶って考えていいのかな。


『ここまで意味ありげに出てきて世界の危機に無関係ってことはなさそうですね。やっぱり邪妖精族ですか……』


「次だ。魔龍帝を操って何がしたかったんだ」


「お前の力を試すために追いかけてきただけだ。アルバートの奴が随分とお前に期待をかけていたんでな」


 アルバート……国王様の事か。

 まさか、こいつ王国で感じた不穏な魔力の正体?


 やっぱり王国に何か野望が渦巻いているのか。


 これはとっとと魔王をぶっ倒しに行って戻らないと。


「つまりお前は俺達を追ってここに来たって事か」


「その通りだ。なんでこんな所に寄り道したのか知らんが、丁度良く操るのに適合した魔龍帝がいたのでな。利用させてもらった」


「まさか、あの小さな村で死神の巨人をけしかけたのもお前か?」


「その通りだ。貴様の力を試すつもりだったが、まさか勇者共だけで討伐されてしまうとは思わなかったがな」


「盗賊を操って巨人の因子を仕込んだのはどうやった」

「我ら邪神族の作る呪いのアイテムだよ」


 なるほど。そんな所から俺達をつけ回してやがったのか。

 ストーカーだなまるっきり。


『どうせ付け狙われるなら美少女の方がいいですよねぇ』


 そういうことじゃないだろ。


「そうかよ。魔龍帝を操ったのは魔王の瘴気……いや、この場合は邪神の瘴気か」


 奴の声がしたと思った瞬間に地面の魔法陣が不気味な光を放った。


 あれは魔龍帝の巨大な魔力を封印して制御可能なレベルに抑え込むもの。

 

 それを邪神のエネルギーで染め上げて暴走させたんだろう。


「その通り。邪神様の素晴らしき波動に当てられ、魔龍帝に潜む邪悪な波動を増幅させたのだ」


「次の質問だ。お前らの組織構成はどの程度の規模だ。四鬼衆ってことは、あと三人はお仲間がいるんだろ?」


「くっく。そうだ。我ら四鬼衆は邪神様の為にそれぞれ動いている。私はフェアリール王国を混乱に陥れ、愚民共が悲しみと絶望で染め上がるように動けとご命令を受けている」


「なんでそんなことをしようとする」


「さてな。我らはご命令を受けて行動するのみ。我らが主である邪神様の深淵なるお考えは、私如きが考え及ぶ所ではない」


「つまり目的の真意も知らされないくらいの末端雑魚ってことかよ」


「き、貴様ッ、私を愚弄するかっ。誇り高き四鬼衆であるこの私をっ!」


「本当の事だろ? 主の目的も教えてもらえず、言われた事だけやってれば良いなんて考えで動いてる奴が下っ端じゃなくてなんだよ。忠臣って奴は主の考えを読んで行動するんじゃねぇの。それも無いんだったら、お前は単に命令に従うだけの雑兵ってことだろ」


「うぬぬぬうううっ! そこまで愚弄されては黙っておれぬっ! 我が真なる姿を見せてくれるわっ!」


「ファイヤボルトッ!」


「な、なんだとっ! ぐあぁああああああっ! き、貴様あぁああああっ⁉」


 なんだかパワーアップして厄介な姿に変身しそうだったのでトドメを刺すことにした。


 わざわざ舐めプする必要もない。今後のために見ておくのも一つの手だが、そういうことをして取り返しの付かない事態になったら元も子もない。



「ぐああああ、お、おのれぇ、真の力を見せる前に、死ぬことになろう、とは……くそっ、私が、この私がっ」


「聞きたいこともあったがこれ以上は時間の無駄だ。死ね」


「くっ。くくっ……。このままでは終わらぬ……」


「ファイヤボルトッ!」


「ぐおおおおおおっ、お、おのれぇえええええええっ、邪神様、万歳ッ! ぬがぁああああ」


 消し炭一つ残らず吹き飛ばす為に更に追加の魔法を放つ。


『魔石を解析すれば分かることもありますから、わざわざ敵の奥の手を出させることもないです』


 ああ。危険を冒す必要は無い。欲を言うなら捕虜にでもして洗いざらい吐かせるのも手だったが、多分こいつはそこまで詳しい事は知らなさそうだ。


 青鬼のバンシーはそのまま絶命し、魔石を残して消えていった。


 奴が最後に何を言おうとしたのかは気になるが、危険を冒してまで見る必要はないだろう。


『ぐああぁああああ』


「魔龍帝ッ⁉」


 青鬼を消滅させて一安心、と思った瞬間……突然魔龍帝が苦しみだした。


 見ると魔龍帝を制御していた魔法陣が黒く光り、激しい電撃がその体を包んでしまっている。


「くっ、奴の張った罠か」


「私に任せてくださいっ!」


「フローラッ!」


「シビル様、私に魔力を与えてくださいっ!」


「よしっ」


「浄化ノ光ッ! はぁあああああっ!」


 フローラは再び浄化ノ光を発動させる。先ほどよりも強い光で、魔龍帝を包み込む。


 凄い。龍帝の宝玉を取り込んでないのに神技をコントロールしている。


「まだ、足りないッ。シビル様、もっと魔力をッ」


 魔力を渡すというのは普通はできない。だがスピリットリンカーで繋がった俺達ならできるようになった。


「よし、こうなったらっ」


 俺はフローラを後ろから抱きしめて気持ちを繋げるように意識を集中させた。


 すると浄化ノ光が放つ魔力が強まり、魔龍帝を包んでいく。


 そうしてドス黒い瘴気が霧散し、大きな体が倒れ込んできた。


『む、おお……』


 だがダメージを受けた体は元には戻らない。


 魔龍帝は瀕死の重傷を負い、既に死にかけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。