第44話 三つ目のダンジョンの大ボス
壁に空いた穴の先に向かっていく。細い通路を抜けた先には広々とした空間と巨大なカマキリが待ち構えてた。
「本当に最初から最後まで蟲だなここは」
四本脚で四本腕の巨大カマキリそれがここの大ボスのようだ。こいつも喋ったりはしないようなので知能はそこまで高くないか。
「キシャァアアアア!」
カマキリが鎌を振るたびに斬撃が飛んできた。遠距離攻撃までしてくるとはわりと侮れないな。
「だったら俺はこれだウィンドソーサー!」
斬撃を避けながら中級風魔法を行使。風の円盤が飛び回り飛んでくる斬撃を跳ね除けながらカマキリにダメージを与えていった。
「ギギッ――」
俺の魔法でカマキリが怯んだ。この隙を見逃さず俺は相手に接近しスキルを発動した。
「気合!」
これで先ず戦闘力が向上、そしてナタを思いっきり振り下ろした。
「強撃!」
「ギッ!?」
スキルを重ねた攻撃で大ボスの腹を切り裂くと悲鳴を上げてカマキリが消えていった。だが、俺の持っていたナタもポキっと折れてしまった。
「流石に限界だったか。だけどこれまでありがとうな」
折れたナタにお礼を言いつつ俺は先に進もうと考えた――その瞬間背後から何かが猛スピードで飛んできた。
「あぶねぇ!」
反射的に飛び退くとやけに細長い気色悪い蟲がのたうち回るように蠢いていた。
「もしかしてハリガネムシみたいなものか」
昆虫のカマキリに寄生する虫にハリガネムシというのがいる。こいつはそれに近いのだろう。大ボスのカマキリに寄生していたわけか。
するとハリガネムシのような魔物が今度は地面に潜った。かと思えば地面が棘のようになりあちらこちらに生えていった。
これは土魔法か。しかも地面に潜ったままだとちょっと厄介かもな。だが――
「フライト」
俺は風魔法を行使。浮き上がり天井近くで様子を見た。地面に棘が生えては消えを繰り返す。だがその内にボコッと地面が盛り上がり寄生型の魔物が姿を見せた。
「それを待ってたぜ! エアロハンマー!」
出てきた魔物に風の鉄槌が降り注いた。グチャッと体が潰れしばらくピクピクした後に粒子状になって消えていった。
こいつ棘の出し方がめちゃくちゃだったからな。地面から俺の姿を認識していたわけじゃないということだ。だったら待ってればいずれ出てくると踏んだが思ったとおりだったな。
しかも結構脆かった。まぁ寄生するようなタイプだからな。奇声元よりは弱かったということだろう。
俺はそのまま先に進みダンジョンのコアを見つけた。これを破壊して終わり。俺は拳を握りしめてコアを殴り破壊したわけだが――
――コアの破壊により【迷宮喰らい】の効果が発動しました。
――レベル23→レベル25へレベルアップしました。
――新たなスキル【鎌変化】を取得しました。
――新たなスキル【鎌鼬】を取得しました。
――新たなスキル【スパイダーショット】を取得しました。
――新たなスキル【ウェブバインド】を取得しました
――中級土魔法【ロックスパイク】を取得しました。
力が漲ってきた。魔法は一つしか増えなかったがその分今回はスキルが多かったな。しかもこのダンジョンらしく蟲に関係したスキルが多い気がする。
まぁその検証は後にするとしてとにかく今はここを出るのが先決だ。俺は急いで杉戸たちの下へ戻る。
「あ、お兄ちゃん」
「無事だったんだな。それでどうだったんだ?」
「コアは破壊した。これでダンジョンが崩壊する。だから急いでここを出るぞ!」
「え! 崩壊!?」
「ギィ!?」
「おいおいマジかよ!」
「御主人様急いで逃げましょう!」
俺の言葉で杉戸たちが慌てていた。そして俺が来た道を戻りながら杉戸たちに声を掛けていく。
「落ち着けば大丈夫だ。敵ももういないからな」
「う、うん!」
「ギィ!」
そうして俺たちは来た道を大急ぎで戻りダンジョンを脱出したのだった――