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第43話 黒帯

「やった! 宝箱だぜ! 一体何が入ってるんだろうな」


 宝箱が出現しもっとも興奮していたのは柔剛だった。まぁ小学生なわけだからな。こんないかにもゲームの中から飛び出してきましたと言えそうな宝箱を見たら興奮する気持ちもわかる。


 さて、ボスから出てくる宝箱は良いものが入ってる可能性が高いわけだが……果たして中身は何だろうか。


「早速開けようぜ!」

「待て待て!」


 柔剛が宝箱に手をかけようとしてので止めた。流石に危機感がなさすぎる。罠がないともいいきれないんだからな。


「何で止めるんだよ」

「いや、罠があるかもしれないだろう? 俺が開けるから少し離れてろ」


 柔剛を後ろに下がらせながら宝箱の蓋に手をかける。罠があれば罠解除のスキル持ちの俺なら解除が可能だ。だが見たところ罠が仕掛けられてる様子はないか。


 ならばと俺は蓋を一気に開いた。すると中に入っていたのは――黒帯だった。


「黒帯?」

 

 思わず疑問形の言葉が飛び出た。いやこの手のダンジョンでまさかこんな現実的な帯を見ることになるとは思わなかったからだ。


「えっと帯ですか?」

「そうだな。ただの帯のようだ」

「ギィ?」


 宝箱の中身に杉戸も拍子抜けしてるようだ。カブトも何だろう? て顔をしている。


「おお! 黒帯だ! かっけぇ!」


 ふとそんな声がして宝箱を見直すと柔剛が黒帯を締めてはしゃいでいた。いやいや!


「待て待て! なんでいきなり身につけてるんだ!」

「フフン。俺はこれでも柔道家だからな! 黒帯を見たら締めたくなるってもんよ!」

「もんよ、じゃねぇ! もし呪いでも掛けられていたら大変なことになるぞ!」


 俺が発した呪いというワードに流石の柔剛の顔も青ざめていく。


「そ、そんな……呪いの帯なんて……」

「いや、勿論そうと決まったわけじゃないが、とりあえず外せるか試してくれ。呪われている場合大抵外せないからな」

「わ、わかった!」

 

 俺に言われ柔剛がすぐに黒帯を外してみせた。ふぅ、とりあえず外せるなら問題ないかもな。


「外せた! これで問題ないよな!」

「多分な。後は効果だがこれを付けた時に何か変わったことがあったか?」

「そういえば力がみなぎってきた気がするぜ」


 柔剛が帯を締めた時にそう感じたらしい。なるほど。やはりただの帯ではなかったか。


「それならもしかしたらステータスに変化が出てるかもだよ」

「おお! そうかならもう一度して見てみるぜ!」


 柔剛が再び帯を締め直しステータスを確認したようだ。


「おお、何か戦闘力と気力に(+50%)てついてるぞ」


 なるほど。つまりその黒帯はステータス強化の効果がついていたということか。


「それはあたりだな。ステータス強化系は中々に貴重だぞ」

「おお! やった! な、なぁこれ俺がつけててもいいかな?」


 柔剛が俺にそんなことを聞いてきた。何も知らない子どもならとても渡せるものじゃないがもうすでに知られているからな。だが――


「とりあえずその話は後だ。先ずはこのダンジョンを終わらせよう」


 俺はそのへんの壁に当たりをつけてこんこんっと叩いていった。そして一箇所脆くなっている場所を見つけた。


「ここだな」


 壁の一部を拳で殴ると穴があき先に進む通路が現れた。


「おお、何か隠し通路っぽいな」

「そうだな。さて、こっから先は俺だけで行く。皆はここで待っててくれ」


 俺がそう伝えると全員キョトンっとした顔を見せた。


「な、なんでだよ! ここまできてそりゃないぜ!」

「危険だからだ。この先には今のボスより更に強い大ボスが待ち構えている。流石にそこまで子どもを連れてはいけない」


 不満そうな柔剛に諭すように伝えた。だが柔剛は納得してないようだった。


「――お兄さんは一人で大丈夫なの?」

「あぁ。こういうのは慣れっこだからな」

「そうか。それならここで待ってようよ柔剛くん」


 しかし杉戸は聞き分けがよかった。もしかしたら俺の言葉に何か感じるものがあったのかもしれない。


「……杉戸はそれでいいのかよ?」

「うん。それに無理してついていって足手まといになったら意味がないしね」

「ギィ……」


 


 杉戸の言葉にカブトも頷いている。杉戸は子供心に俺の言ってることが嘘ではないとわかったのかもしれないな。


「とりあえずここにいれば他のモンスターはやってこないはずだが、一応何かあった時は邦夫が守ってやってくれよ」

「おう! 任せとけって御主人様は俺が守って見せる!」


 本来の元の性格はともかく今の邦夫はそれなりに頼りになるからな。さて、それじゃあ一丁終わらせてやりますか。


 そう思いつつ俺は通路の奥に進んでいった――

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