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第25話 久美子からの謝罪

「杉戸くん本当にごめんね!」


 ある朝、杉戸が登校すると久美子からの謝罪を受けた。突然のことに杉戸が両手を振りつつ戸惑い。


「えっと、突然どうしたの?」


 そう問いかけた。正直相手が柔剛であればまだ謝られる意味もわかるが、久美子はどちらかと言えば杉戸を気にかけてくれている方だ。


 杉戸からしたら寧ろ感謝したい相手なのである。


「それが実はこの前貰った綺麗な石……どこかに落としちゃったみたいなの。折角杉戸くんがくれた大事な物だったのに……」


 そう言って久美子がしゅんっと肩を落とした。なるほどと杉戸は頬を掻く。


「それなら気にしないで。でもそんなに気に入って貰えたなら嬉しいな」

「でも、折角貰ったのに……」


 杉戸は偶然手に入れたような石だったので気にもしてなかったが、久美子はとても残念そうにしていた。


 もしかしたら本当に石を気に入ってくれていたのかもしれない。たしかに綺麗な石だったもんね、と考えつつ杉戸は久美子に声を掛けた。


「それなら僕がまた拾ってくるよ。うんどうせなら今度はもっと綺麗なの」

「え! でも悪いよ」

「それこそ気にしないで。僕が趣味でやってることだからね。丁度今度裏の日曜日に山に行こうと思っていたし」


 杉戸が言う裏山とは小学校の裏にある山のことであった。前に昆虫採取していたのもその山であった。


「でもそんな何度も」

「いやいや本当、僕が好きでやってることだからね」


 そう答えつつも久美子の頭上に見える好感度が上がっていて照れくさくなった。


「どうかした?」

「い、いや大丈夫なんでもないよ」


 首を傾げつつ久美子が顔を近づけてきた。それが照れくさくて顔をそむけてしまう。


「あ、そうだ! それ私も一緒に行こうかな。そうすれば一緒に探せるよね?」

「そ、それは駄目だよ!」

「え?」


 杉戸が反射的に久美子の申し出を断った。久美子は怪訝そうにしているが、杉戸としては彼女を危険な目には合わせたくなかった。


 石を見つけるということは以前の蝙蝠のような魔物にも会うということだからだ。

 

 それでも杉戸が探しに行こうと思ったのはステータスが身についたからだ。カブトも一緒なら今の自分なら何とかなりそうと考えているが久美子はそうもいかない。


 ただ、杉戸が否定したことで若干好感度が下がったのが気になったが。


「えっとね、ちょっと特殊な場所にあって女の子が行くのは危ないんだよ。怪我しても大変だしだからここは僕に任せてよ」

「え? そんな危ないことなの?」


 久美子が目を白黒させ心配そうにしていた。


「それなら無理しなくても……」

「す、少し危険だけど僕の好きな昆虫も多いんだ! だからどっちにしろ行くつもりだったからついでだよ。だから気にしないで!」


 下手に心配掛けても仕方ないと考え何とかその場を取り繕った。


 久美子は危ないという点で気にしていたが最終的には嬉しそうに、ありがとう、と言ってくれた。


 杉戸はホッと胸をなでおろしつつも絶対に見つけてやると心に誓った。


 そしてそんな二人のやり取りをこっそりと覗いていた生徒がいた。それは出歯口だったわけだが――


(あいつ女の子にいい顔見せたくて山に虫取りだって!?)


 出歯口は怒り心頭だった。ただでさえクラスでは柔剛以外からは避けられていて孤立気味なのに、杉戸は久美子と仲良さげに話している。それが許せなかった。


 しかも相手は自分より格下であるはずの杉戸なのだ。出歯口のこめかみに青筋が浮かぶ。


(こうなったら柔剛と有田兄ちゃんに言って邪魔してやる――)


 出歯口は一人ほくそ笑みながらその場を離れた――

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