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第15話 古狸の正体

 さて、古狸という商人から尻尾が見えているかと聞かれてしまった。


 確かに見えているのだが、それをそのまま言っていいのか答えあぐねていると古狸がジッと俺を見ながら口を開く。


「もし、ごまかそうなんて考えてるんやったら、やめといた方がええで。わいは嘘を見抜くのは得意なんや」


 そう古狸が言った。俺の様子からごまかそうとしているのがばれてしまったか。


「それに正直に話したほうが、あんさんの為やで。わいに売ろうとしてるこのしなもん、この世の物ちゃうやろ?」


 テーブルに並べられた品々を指さしながら古狸が指摘してきた。この世のものと言う意味がこっちの世界と違うという意味ならそのとおりだが……参ったな。そんなことまでわかるのか?


「その……仮にそれが本当だったとしてなぜわかったのです?」

「ま、なんやねん、その匂い。うちの鼻、ええんや。そこに並べられとるもんからは今まで嗅いだことないような匂いがするわ。それに金貨にしても、今まで見たことないような刻印がされとるからなぁ」


 しまった刻印か。そこまで気が回らなかったな。


「どや? 話す気になったか? 悪いようにはせぇへんで。それにこんなもん、わいみたいな変わりもんでないとようあつかわへんわ。素直になったほうがお互い得やで」


 ここまで言われると確かにその方が利口かと思える。ただ、やはりこっちからも確認しておきたい。


「そうですね……先ず聞きたいのですが貴方は何者なんですか?」

「言うたらあんさんのことも隠さへんで教えてくれるか?」

「……聞いて嘘がないようなら」


 古狸にそう答えると、ニヤッと笑い、かと思えば顔からピョコンっとヒゲが伸びてきた。それは人が生やすような物ではなく動物に生えてるような髭だった。


「ま、見ての通り、わいは人やない。(あやかし)って言うたらわかるか? わい【怪狸】言う狸の妖やねん」


 それが古狸の答えだった。名は体を表すと言うがまさか正体が狸の妖だったとは。


「そういうことだったんですね。それなら尻尾も納得ですよ」

「へぇ。あんま驚かへんのやな。妖言うたら普通は驚くか頭のおかしい奴思って距離を置くかやけどな」

「まぁなんというか道端でも時折見ていたので。それが妖なのかはわかりませんが、ピョンピョン跳ねてる白い毛玉みたいのとかたまにみるので」


 そう。実は変わったものはちょいちょい見かけていた。しかもそれらは普通の人間には見えていないのだ。


「ケセランパサランやな。それも立派な妖やねん。まぁ人に危害を加えない愉快な奴やから気にせんでえぇで」


 そういった後、ケタケタと笑った。話している限り特に騙そうとしている様子もない。もっともこんな事で嘘を言っても仕方ないか。


 普通に考えたらあまりに突拍子もない話だからな。騙すために語るような物じゃない。


「せやけど、そうなるとやっぱり不思議やな。妖ちゅうもんは普通の人には見えへんねん。特殊な訓練を受けて霊力を上手く使いこなせるような輩なら別やけど、あんさんはそれともまた違う感じがするわ」


 古狸は今度は興味津々といった顔で俺を見てきた。これはもうごまかしても仕方ないかもしれない。それに約束通り古狸は俺に正体を明かしてくれたんだ。


「わかりました。俺も正直に答えますが、お互い他では秘密ということでいいですか?」

「勿論や。わいかてこんなこと外で言い触らされても困るからなぁ。あんさんの秘密も守るで」


 ま、それは何となくわかる。妖も普通の人間にはバレないようにして上手くやっていってるのだろう。


 尻尾も俺には見えたが役爺には見えていなかったわけだし。


 なのでここは古狸を信用することにして俺は自分の正体を明かすことにした――

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