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水が大好きすぎて水になってしまう話。  作者: とまとそぼろに
1/1

違う形で聞き届けられてしまったお願い

iPadで書いてます。

やあ、俺は四季雫!今絶賛会社で働いているのさ!


「126時間…経過ぁ…」


気づいているかい?僕は今六連勤さ。え、口調を統一しろって?幻覚が見え始めている人にそれをいうか。

ちなみになんでこんなことになっているかというと気になっている人に、まずここがブラックだということをお教えしよう。

そして次。この部署の仕事全部押し付けられてます。後輩だけ2日間耐えて残ってくれたけど倒れたから病院行きだ。流石の仕事したことのない部長でも死人が出るのはまずいと思ったようで救急車を呼んだ。

最後に、やめたいって言ったら今俺の目の前に物言わず鎮座している資料の山(推定5m)を片付けたらやめていいぞと言われたからである。紙はA4、厚さは0.05mm。え、50000枚程度すぐだって?

まあそんな奴もバケモンだが、一つ言わせてもらおう。



「いつから…山がたった一つだと…錯覚していた?」



ああもう俺は他から見たら単に六連勤して頭の逝かれたやばい奴だな。いや、六連勤の時点でおかしいか。

あーあ誰か助けてくだせえー?

あ、山の数は秘匿させてもらいます。口に出したら絶望が待ち受けている。


そうだ今のうちに遺書と自生の句を書いておこう。


『遺書


この会社、今僕の目の前にある50000の資料×100の山を一度も帰らずに片付けたらやめていいと言われました。

悪いのは部長であって他は悪くありません手伝おうとしたら首にすると遠回しに脅されるからみんなが手伝えないだけなんです。

お助けください。

悪いのは部長です…



って書いておこう。



『自生の句


儚きも


無情にありけり


紙の山


舞い散る見方は


紙吹雪



これでいいか。あーあ、水が飲みたいよう。水があったら1ヶ月は生きていけるとか言ったら水抜きとかふざけたこと抜かしやがった。

水は素晴らしいんですよ。

人間の60%ですよ?その60%を補給させないとは一体何事だ。

俺の体は80%が水分でできていると言っても過言ではない。

もしも来世があったら水分100%で生きていたい。いや、人じゃねーじゃんそれただの水じゃん。あ、けどそれもいいかもね。ゆらゆら揺れていればいいんだし。



『貴方はどうしたい?』


こ、こいつ…直接頭に…

どうしたいって聞かれても…水分が欲しいと言っていたろう。今俺の願ったこと、それがしたいことだ!


『…了。それではもうすぐですよ。頑張ってください。』


え、何が始まるってんだ一体!!もしかしてみんなで俺を手伝ってくれるのか?!

って、グェ…んだ…ね、眠気がぁ…んんん…起きねば!


「ぜやああああ!」



思いっきり気合を入れて机に頭突きして眠気を覚ます。痛覚がないぞーおかしくなっちまったかー?



「あれ…?」


体が透明感あふれるものになっている!?なんてこった!

体が軽くなってきたー!もしかしてさっき飲んだ後輩が残して逝ったエナジードリンクの翼を授けるってやつか?!

これなら今日中に終わる!

うん?パソコンがさわれないぞ?くそ、手が砕けてしまう。ならば、いらない紙を纏って押すまで!



「うげぇ…べっちゃべちゃだ。だがこれは必要な犠牲なのさ!」


すごい!確実に速度が上がっている!

山が後…5個!ラストスパートだっ!体が悲鳴を上げる。だが!俺は!負けるわけにはいかん!

許可!却下!修正!ぬおおおおお!

筋肉がっ!くそ、また筋肉痛か!


「くっそ痛いな!けどもう慣れてきた。この程度、なんのこれしき!」


手はキーの打ちすぎで皮が擦りむけてボロボロ。

キーボードは押し過ぎて5個がエンターかスペースかが飛んでしまってスクラップだ。おそらくもう一つ目や二つ目はオリンピックの金メダルの材料となっているだろう。

腕はもうほとんど動かない。

目は焦点が合わない。おそらく色素も抜け落ちてきているだろう。


(まだまだ!終わるわけにはいかないんだ!俺は生きるぞ!)


テンションはもうおかしくなっている。

この状態は俗に言うハイってやつなのか?もう椅子はクッションがボロボロ。



「7日…経過っ!」



山がひとつ減った!後四つだ。



『貴方は、不幸ですね。』


ああそうかもな!そう言う意見もあるかもな!


『だから、一つだけ願いを叶えます。』


だからさっき言っていただろう!

はあ、集中力が持っていかれるぜ。

かけているBGMは一周4時間なのに今、42週目に突入している。もうドレミまで言えるようになってしまっている。

レ、ラ、ミ、ラ、ファ、ソラソ、シ。この音程…やめらんねえよ!


『本当に、願いはそれでいいんですね。』


ああ、さっさとしてくれ。俺は今集中している。

後、水は好きなやつにできるのがいいかなー。それがいい、そうしよう。



『わかりました。』


なんかもうこの頭に直接語りかけてくるやつが話し相手なんだよな。



「ガッフ!筋肉ちぎれでもしたか?!」


いきなりの鋭い痛みが背中を襲った。猫背すぎて筋肉が切れたりしたのかね?

くっそ、そろそろ限界か。もうくっついた紙でキーさえも見えないな。

この山で…後山が…3つ…限界…だ…


そして俺は目を閉じる。その時、


(あとは俺に任せろ。そうだな、言うことがあるなら…お前は過酷な生を受け、理の通わない行いをさせられた。そして次では無知なるままの生で全てを手にして苦を感じる。もちろん通るは茨の道だ。その詩と悲しみのイバラを乗り越えた先にお前の描く「理想」が存在する。そこに向かって進む覚悟があるなら…俺は何も言わないさ。じゃ、頑張れよ。)


と美人が言っていた。口調は誰かによく似ていて…まるでそれは天の声のような…幻のようだった。だが俺の思うことはひとつ。





「誰だよ…あんたは…





誰、あんた…








う、うんむむむむ…目が、空いた…違う、開いた…うっっ!

目があ…目があっ!見えない!眩しいのに…見えないぞ?と言うかそもそも俺ってどこにいるんだ?少なくともあそこではないな。

ん゛ん゛!起き上がってみる。お、動ける動ける。音は聞こえるんだね。では…手と手をパァン!と叩き合わせる。その音の反響によって周りを把握。



…いで!

頭に閃光が走る。


『聴覚視覚』


頭に浮かんできた。なぁにこれぇ。まるで意味がわからんぞ?!

で、周りを見る。これは…森?綺麗やな、東京にこんなとこあったっけな。自然の香りがするぞー!

……視点がやけに低いな?

自分の体を見る。すると、目に入ってきたのは透明感あふれる見た目からしてひんやりしていそうな不定形の物体があった。


「……なんだよこれええええ!って痛!」



『嗅覚触覚発声』



またかい?多いねえ、慣れないよ。



『嗅覚触覚発声、視覚聴覚を接続、五感に発達しました。』

また頭に…諦めろ。もう考えるだけ無駄だ。

そうだね、俺!よく決断した!


とりあえずは前に進むとしようかね。

じゃなくて!俺の体どうなってんの?!水?!水だよね、これ!確かに水がなんたらって言ってたけどそれはなくないか?!

これ明らかに違う捉え方をしてるよね…これなんなん?


『貴方は転生したんですよ。四季 雫?』


誰だお前!と言うか頭が痛くないな。なんでだろう?


『はあ。私は、リース。貴方の…なんて言ったいいんでしょうね。階級で言うとそっちのほうが上なんですが…まあ、四季雫のもう一つの脳ってところですかね。』


そっすか。俺って水だったりするの?


『ええ。四季雫は過労死で死んで水、いや『水魔』になったんですよ、よかったですね。願いが叶って。』


いや、こんな独特な願いではない…


『?言ってたじゃないですか、水100%になりたいって。あ、そうそう『変化』で液体なら何にでもなれますよ。』


違うんだよな…もういいや、諦めよう。どうやって動こう…そうだ、ジャンプすればいいじゃん!ほら、スライムとかとおんなじで。

それでは、ジャーンプ!え、飛びすぎ…



「え、なんでこんなに飛ぶのさ…」


端的に言おう。50m飛んだ。着地したら弾けるわ!

くそ、こうなったら変化とやらで乗り切るしか!超絶濃度ゼラチンプリンで耐えるしか!

超絶濃度ゼラチンプリンに変化!液体じゃないけど関係ない!着地、5秒前!サン!ニ!イチ!

ベッチイイイ!と派手な音を立てて着地した。硬すぎない?



「あ、危なかった…軽く飛ぶぐらいがちょうどいいや。1mぐらいだし、人間と同じぐらいの速度だしね。」



水に戻ってぴょんぴょん跳ねると軽く飛べばちょうどいいことがわかった。

お、水なのにどうしてか気になりますって?いい質問だね、知るかよんなもん。


『多分、筋肉みたいなものなんじゃないですかね?ほら、体の一部ですし。』


おお、いい解説をありがとう。それでは旅を始めよう!

さーて、どうするっかなー♪あんなブラックを取り締まるところがブラックだったと言う理不尽を乗り越えた俺には幸せが待ってるはずだからねー♪

最大のピンチが訪れた時こそが1番成長のチャンスだからね。誰かが言ってたような気がする。

空が綺麗だなー。なんか、恐竜に鷹か鷲を混ぜたようなでっかいバケモンが飛んでたような気がしたけど錯覚よ、錯覚。多分まだ仕事の疲れが残ってるんでしょ。

そうしてぴょんぴょんと弾んでいたら、事件は起きた。


「なんだ?先がなくなったぞ?」


ゴゴゴ…と言う音と揺れに伴ってつい先ほどまで見えていた先が見えなくなった。あ、見えなくなったのは地面だけだよ。

…そうじゃない。なーんか落ちているような感覚もするし、心配である。とか思っていたら真っ暗になった。

お先真っ暗とはこれを言うのかー、とかふざけていたら…



『グゥゥゥギャオオオオ!』


おっそろしい化け物がするような咆哮が聞こえた。そして前を見ると暗闇で何かが動いている。

そして2つの金色の光がこちらを見つめてくる。

…ドラゴンだあああ!



「ふぇえええええ?!なんでええええ?!」



どうしてこんな俺は運が悪いの!あわわわわわととと取り敢えず…


「にーげるんだよ!助けて!」


そして俺は全速力で走り出す。走っていると言う表現は間違いとか言ってる場合ではない!急げえええ!

べシン!と何かにぶつかる。左右色々な方へ向かおうとするも先へ行くことができない。まさか行き止まり…とかいっていたら、何か光るものが!雷の弾?いや、炎も混じってるな、これ。

そして明かりが明るくなり、後ろを見ると……


『グルゥゥゥ……』


ドラゴンがいた。その体は赤く、ところどころ黄色のラインが走っている。それはつまり炎と雷を司っている、と言うことである。

うわーかっこいいな。俺死ぬんだ…短い人せ…水魔生だったと思う。

ドラゴンはこちらを見て唸っている。そして口にさっきの球を作り始めた。ブゥゥゥウゥン…と言う扇風機のような音を立て婆ながら巨大化する球を見て考える。


(このまま死ぬのか?)


(また、何も出来ずに?)


(それは嫌な感じ。)


『なら、戦えばいいじゃないですか。』


(そうだな!せめて足掻いてやるぜー!)


そう考え終わると同時に球が飛んでくる。あれは、炎と雷。それに対して俺は耐性がある!炎は水で弱まり、雷は水を捕らえられない。水とは変幻自在の種族。

その特性を活かす!ならば、今正しいのは突っ込むことだ!ウラー!



「んん、抜けた!このままやってやる!」



奴の頭を踏み台にして思いっきり跳ぶ!

行くゾッ!我が身はマグマ!灼熱を持つ液体の固体!そしてそのエネルギーを全て奴に叩き込む!俺の体全てを使った最強の攻撃!

名をつけるなら龍星群炎水だ!



「貫けっっっ!」

『グギャァォォン!』


うらあああああ!そして俺の体はさらに熱を帯びる。そして加速し続け、ついに、ドラゴンの体に衝突するのだった。








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