【出席番号34番】不動 雫(ふどう しずく)
「先生……早く『ごっくん』しちゃってください!」
【世の中にはお好きな方もいるようですが……閲覧注意です】
オレは学校の教師の傍ら、ひそかに百合専門のラノベ作家『粟津まに』として活動している。だが最近、そんなオレの仕事を奪いかねない、いわゆる「商売敵」が現れた。
そいつの名前は『良坊 種夢』。オレが連載をしていた雑誌の編集長に気に入られ、同じような小説を書いているオレは連載を打ち切られることになった……幸いにも別冊で継続することはできたが仕事は半減した。
しかもその良坊というヤツは、オレが担任している3年H組の生徒……つまりオレの身近にいる人間を登場人物のモチーフにしていた。そういうオレもH組の生徒をモチーフにしているのだが……。
以前H組の《鴨狩 紬》が、良坊の正体はペンネームを見ればわかると言っていた。なのでオレは、「良坊種夢」と同じ漢字を2文字も使っている《雁坂 良夢》という産休代替教員が怪しいと睨んでいる。
この男は名前以外にも、担当する科目がオレと同じ国語科なので文章を書くのは得意に違いない。あと決定的なのが、最近H組の生徒に何度も接触を試みているそうで、一部の生徒に対しては脅しともとれる聞き取りを行っているという……ますます怪しい。H組の生徒もこの男には警戒しているようだ。
そんな雁坂……いや、良坊が、オレの連載している雑誌とは別の百合コミック雑誌にも連載をしていることを知った。昨夜その小説を読んだのだが……そこには何と、オレの学生時代からの友人で養護教諭の《鳥居地 新名》をモチーフにした、としか考えられないキャラクターが主人公になっているではないか!
その本を鳥居地新名は隠し持っていた。間違いなくニーナは何かを知っている。
※※※※※※※
昼休み、オレはある用事で保健室を訪れた。そのとき……
――!?
保健室から誰か出てきた……雁坂だ!
「あぁ、若彦先生! お疲れさまです」
「お……お疲れさまです」
雁坂はオレの顔を見るとニコッとしながら挨拶した。
――白々しいヤツ、何しに来たんだよ?
雁坂がニーナをモチーフに小説を書いているに違いない。どうせニーナの身辺でも調べていたんだろう。もしやH組の生徒と同様、ニーナを脅していたのでは?
「良夢先生、珍しいですねこんな所で……一体どうされたんですか?」
一応、言葉を選んだつもりで何気なく聞いてみた。すると、雁坂から拍子抜けする言葉が返ってきた。
「あぁ、今日は雛鶴先生がお休みなので代わりに問診票を持ってきたんですよ」
――え? そうなの?
ウチの学園はかなり変わっている。普通、健康診断は新年度に行われるのが一般的だが、なぜかウチは3学期に行われる。この学園は大学まで一貫なので、すでに進学の決まっている生徒は大学入学時に行われる健康診断を今のうちにやってしまおうという考えらしい。まぁ本当のところはよくわからないのだが……。
あっそうか! 雁坂の前任で現在産休中の宇野尾先生はD組の副担任だ。今日は担任の雛鶴先生が休みなので代わりに来たということか。
――ていうか……オレもH組の問診票を持ってきたんだっけ。
「ニーナ! 入るぞぉ!」
ここは女子高だ。保健室では何があるかわからないので、男性教師はあらかじめ声を掛けてから入らないと大事故に巻き込まれる可能性がある。
「あ、若彦? いいよ入って……入れたらね」
まぁさっきまで男の雁坂(見た目は女だが)が入っていたのだから問題ないだろう。だが「入れたら」ってどういう意味だ? しかも何か騒がしい。
〝ガラガラガラッ!〟
「キャー……あ、何だ若彦か」
おいおい何だよいきなりその反応は? それにしても何だよここは……1年生から3年生まで、多くの生徒が詰めかけていて満員電車のようだ。しかも全員スマホを手に持っている。
「何だよコレは?」
「えっ、だって! この学校が誇る『イケメン女子』と『カワイイ系男子』の2大看板がそろったんですよー! こんなシャッターチャンス、滅多にないじゃないですかぁ!」
それで保健室がアイドルの撮影会みたいな騒ぎになっていたのか?
「なんだー、ラムちゃんが戻ってきたのかと思ったら若彦かよー、ガッカリだぁ」
「ガッカリとは失礼だな! 体調不良とかじゃなければ保健室から出ていけ!」
「えー、ラムちゃんとニーナちゃんに対する恋の病なので体調不良でーす!」
「あっそ、じゃあオレを撮影するっていう条件で残っていいぞ」
「うげっ! メモリーの無駄遣いだ! 誰が若彦なんか撮るかバーカ!」
「じゃあ出ていけー!」
生徒たちはクモの子を散らすように保健室を後にした。最近オレは、H組の生徒から好きだと告白されている(その代わり変態行為を受けている)が、他のクラスの生徒からは所詮こんな扱いだ。ちなみに今いた生徒たちの中にH組の生徒はひとりもいなかった。
やっぱH組の生徒は変わっている……あ、でも待てよ? ここでH組の生徒を否定したら彼女たちに告白されたオレも変わっているってことになるのかな?
※※※※※※※
生徒がいなくなった保健室で、オレは椅子に座りニーナと話をしていた。
「大変だったなぁニーナ」
「あははっ、10分以上生徒たちから写真を撮られていたよ」
「そっか……あっこれ、H組の問診票。それと……雁坂先生とは仲いいの?」
「えっ何でそんなことを聞くんだい? ははーん……さては若彦、もしかして良夢先生に嫉妬してるのかい?」
「ちげーよ、そんなんじゃない……実はな、これ……」
そう言うとオレは、昨日買った百合コミック雑誌を机の上に置いた。
「!?」
その表紙を見た瞬間、ニーナの顔色が変わった。
「その小説読んだよ……主人公、どう見てもオマエそのものなんだが……」
ニーナはオレから目線を逸らしたまま黙りこくってしまった。
「その主人公、食べ物の好みまでオマエと一緒だ……ってことは、誰かがオマエの容姿を見ただけで勝手に書いたとは考えにくい。あきらかに良坊はオマエと会っているってことだよな?」
「……」
「なぁ教えてくれ、良坊って何者なんだ? オマエは会ったことあるんだよな?」
「……」
「で、オレはさっきまでここにいた良夢……いや、雁坂先生が怪しいと思っているんだが……」
オレが雁坂の名前を出したとき、ニーナが重い口を開いた。
「ごめん、若彦……ボクはその件に関しては何も答えられない。ただ……」
「ただ?」
「あの雁坂という男、アイツには気を付けた方がいい。アイツは教員免許は持っているが、どうやら本職は違うみたいだ」
――え? あぁそうか、本職が「小説家」っていう意味なのか?
「それと……これも推測の域を出ていない話だけど……」
そう言うとニーナは、周囲を気にしながらオレに近付くと耳元に小声で囁いた。
「実はあの雁坂という男、理事長がわざわざ連れてきたらしいよ」
「何だって!?」
予想外の名前が出てきた。まさか理事長が?
この学園の理事長、《笹子 矢立郎》氏はオレの父方の遠縁だ。教員免許を取ったものの公立の教員採用試験に落ちたオレにこの学園を紹介、採用と便宜を図っていただいたいわば「恩人」だ。その理事長が雁坂を? 一体なぜ? そういえば以前《扇崎 愛》の一件で、オレの秘密を知っているかのような発言をしたことがあったが……まさか?
そんな深刻な話をしていると、
〝コンコンコンッ〟
誰かがドアをノックした。
「はーい! どうぞ、開いてるわよ」
オレとの会話に居心地が悪かったのか、やっと話題を変えられるキッカケができてひと安心した様子のニーナがそう言うと、入ってきたのは……
「あ、あの……失礼しま……す」
おどおどしながらゆっくりと入ってきたのはH組の《不動 雫》だ。ウチのクラスには《日野春 紫》や《霧山 心》といった大人しいタイプの生徒も何名かいる(でも正体は変態だ)が、この不動もそういったタイプの生徒だ。
「あ、あの……H組の検尿で……す」
「あぁ、ご苦労さま! そこに置いといて」
不動はH組の保健委員だ。明日行なわれる健康診断のうち、尿検査で使用する検体……要するに検尿の容器をクラス分まとめて持ってきた。
「あっあの……鳥居地先……生」
検尿の容器がクラスごとに分けて並べられたテーブルの上に、H組の分の容器が入ったビニール袋を置いた不動が、突然ニーナに話しかけた。
「ん? どうしたの雫ちゃん」
「あっ、あの……検査の結果って……いつわかりますか?」
「うーん、尿検査とかは専門の検査機関に送るし、大学進学予定者は血液検査もあるから……全部わかるのはだいたい1ヶ月後……かな? うーん……」
「あ、いえ……そうじゃなくて、その……に、尿検査の結果は……」
「え? あ……あぁ、そういうことね! それだったらすぐに検査するからそんなに先じゃないよ……あ、そうだ! 雫ちゃんにはわかり次第L●NEしておくよ」
「あっはい、お願いします……あっ若彦先生、ごっ……ごきげん……よう」
「おっ……おう」
そう言うと、不動は保健室を後にした。えっ? 不動は何で尿検査の結果を知りたがっているんだ? 腎臓にトラブルでも抱えているのか? しかも「そういうこと」って……ニーナは不動について何か知っているのか?
健康診断の準備のため、ニーナは忙しい。とりあえず新たな情報も聞けたのでオレもそろそろここを出よう。
「じゃあニーナ、オレもこれで……」
「あっ若彦!」
珍しくニーナが呼び止めた。いつもなら「出ていけ!」って言うのに……。
「若彦……お前、最近疲れてないか?」
「え? 珍しいなオマエがそんなこと聞くの……まぁ、相変わらず忙しいから多少は疲れているよ! 昨日も筋トレやって筋肉痛だし……」
「そうか、それなら良かった!」
――おいおい何だよ! 人が疲れているのに良かったとは!?
「若彦……ちゃんと生徒と向き合わなきゃダメだぞ!」
え? どういう意味だよ。オレは教師としてちゃんと生徒と真正面から向き合っているつもりだが……。
※※※※※※※
〝コンコンコンッ〟
「あっあの……若彦先生」
2日後の放課後、オレは誰もいない国語準備室で事務作業をしていると、不動がひとりで訪ねてきた。
「おぅ、不動! どうした? いいぞ、入ってきなさい」
「あぁ……ご、ごきげんよう……しっ失礼……します」
不動は大人しくて控えめ……いつもおどおどした態度で、ずっしり構えたイメージの苗字とは真逆の子だ。
「珍しいな、今日はひとりか? よく来たじゃないか! えらいぞ」
いつもは必ずH組の誰かと一緒に行動する。あまり強気に出るとショックで泣き出してしまう繊細な子なので、できるだけソフトに接してあげなければならない。
「あっあの……先生!」
「ん? どうした?」
「あっああの、先生! 先生は……その、最近お疲れでいらっしゃいますか?」
うん、疲れているよ! 特にオマエたちが3年になってからな……毎週のように変態が次から次へと現れてきて仕事以外の疲れが倍増している。
「ああ、正直疲れてはいるな」
「そっそうですか。でしたら……あの、ここに来た甲斐がありました」
急に不動の目が輝きだした。
「私……あの、先生のために……『栄養ドリンク』を差し入れに……きました」
――ちょっと待て!!
このやり取り……デジャヴか? 以前にもあった気が……。
それは去年の夏、当時水泳部だったH組の《唐沢 水》がプールでびしょ濡れになった自分のスクール水着を絞り、絞ったプールの水を「JK汁」と称してオレに飲まそうとした出来事だ。
今回も似たようなパターンか? イヤな予感しかしない。
「おい不動、ひとつ聞きたいが……それって中身は何なんだ?」
一応聞いておこう。もしかしたら普通のドリンク剤ってこともある。この不動という生徒は大人しい子だ。そんな大それたことは……。
すると不動は、オレの耳元に顔を近付けるとこう囁いた。
「私の……おしっこです」
――はい、唐沢を超えたー!!
とんでもない【ど変態】が現れたぁー!!
「オマエ……何言ってんだ? 何でそれが栄養ドリンクなんだよ!」
すると不動は、まっすぐな瞳でこっちを見るとこう言った。
「先生……飲尿健康法ってご存知ですか?」
聞いたことがある……確か「尿療法」とも呼ばれていたヤツだ。90年代にマスコミに取り上げられて少し話題になったことがあるらしいが、実際のところ科学的にも医学的にも根拠のない、いわゆる民間療法だ。しかも……
「それって確か、自分の尿を飲むってヤツだよな? 何で他人であるオマエのを飲まなきゃならんのだ?」
「え? だって……くたびれた活力のないアラサーのオジサンのおしっこより、現役女子高生で処女のおしっこの方が健康になるのは常識じゃありませんこと?」
非常識だよ! 「女子高生」「処女」「おしっこ」で検索してもそんな健康法、絶対に出てこないわ! 逆にそんなワードで検索したら変態エロサイトが多数ヒットする確率の方が高いわ!
ていうか、くたびれた活力のないアラサーのオジサンって……さらっと強めにディスりやがったな? オレはまだ26歳だ……アラサー呼ばわりされたくない。
「何だよその理屈は? 飲まねぇよ、断る!」
「そんなぁ……先生に飲んでもらうのを今日まで楽しみにしていたんですよぉ……せっ、先生! お願いします! 私の……私のおしっこ飲んでくださーい!!」
「オマエ、自分が何言ってるのかわかっているのかー!?」
何考えているんだコイツ……あっ! まさか?
「不動……オマエ、まさか『聖水プレイ』が趣味なんじゃないだろうな?」
実は先日、オレの大学時代の友人でAVマニアの男に再び会った。そいつはこちらの都合を考えずに勝手にアダルトDVDを押し付けてくるヤツで、以前それが原因でH組の《天目 波》とトラブルになったことがある。
オレは巨乳熟女モノが好きなのだが、「若彦、お前は好みが偏り過ぎだ! もっといろんなジャンルに手を出した方がいい」と勝手な理屈をつけられ、そいつがセレクトした『詰め合わせセット』なるモノを押し付けられた。その中の1本に『聖水モノ』というのがあったのだが……要するに小便をMの男にかけたり飲ませたりする、見ているだけで具合が悪くなるような超変態プレイだった。
「え? 聖す……なっ何ですか? それ……」
目をまん丸くして不動がポカンとした顔をしている。まぁ女子高生がそんなマニアックな言葉を知る由もないだろう。
「そっ……その、あれだ……オマエが今からその……パッ、パンツ脱いで放尿して飲ませようっていう……」
すると、それを聞いた不動の顔が真っ赤になり、
「えっええええっ! そっそんな……そんな恥ずかしいことするわけないじゃないですかぁ! そっそんなの……まるで私が変態みたいじゃないですかぁー!」
「他人に自分の尿を飲ませようとした時点ですでに変態だよオマエはぁー!」
H組全般に言えることだが……コイツらの「変態の基準」がわからん!
「そんな破廉恥なことはしませんよぉ~」
そう言うと不動は、カバンの中からステンレスボトルを取り出した。
「おい……まさかそれって?」
「はい、たった今トイレで採取した私のおしっこです」
と言うと不動は、持参したマグカップにステンレスボトルを傾け、まるでお茶を注ぐように自分の尿を注いだ……気のせいか湯気が立っているように見える。
「おい、そのためにわざわざステンレスボトルを?」
「はい、先ほどまで私の体の中にあったものです。私の体温まで感じてほしいのでこうやって保温しております! わっ……私の体にあった温もりが先生の体の中に入るなんて……想像しただけで……あぁっ」
――うわぁー変態だー! かなり高スペックな変態だぁー!
不動はいつの間にか椅子に座ったオレの正面に立つと、じりじりと口元へマグカップを近付けてきた。うわっ! 油断した、逃げられない……オレは顔をそむけたが、何か妙な臭いが鼻を突いてきた。
「さぁ先生! 温かいうちにどうぞ」
「飲まねぇよ! だいたい……衛生的に問題あり過ぎだ」
「何をおっしゃるんですか! 排出されたばかりのおしっこは基本、無菌なんですよ! ただし、時間が経つと雑菌が増えます。ですからお早めにお飲みください! それと……もしかして私が何か悪い病気でも持っておられるとでも? 大丈夫ですわ! 先日の尿検査で異常がなかったと鳥居地先生から教えていただきました」
うわっ! この前、検尿の結果を聞きたがっていたのはこのためだったのか!?
「だからといって……飲めないものは飲めねーよ!!」
「先生!!」
突然、不動が大声を上げた。
「何で、先入観だけで判断するんですか!? 何で……私たちと向き合ってくれないんですか!?」
――!?
生徒と向き合う? そういえばこの間、同じことをニーナからも言われた……アイツ、こうなることを知っていやがったな?
オレは教師として生徒と向かい合ってきたつもりだが……まぁ多少はやっつけ仕事的な部分はあったかもしれない。「あー残業めんどくせー」とか「これオレがやんなくても良くね?」とか……でもオレだってひとりの人間だ!
H組の生徒とは3年近い付き合いになる。確かに、もっと向き合ってもいいところはあったかもしれない……だが、
――コイツらの『変態行為』には向き合いたくない!
「やっぱりダメだ! 飲めね……プグゥ!!」
「スキありですよ、先生!」
しまった! 気を抜いた瞬間、口元にマグカップを押し付けられてしまった。
「先生、ここで抵抗すると大事な書類が私のおしっこまみれになってしまいますわよ! さ、お口を開けてくださいませ」
――おい、不動の控えめキャラはどこに行った?
「ば……万事……休す」
「え? これは急須ではありませんわよ、マグカップです」
いや、そういう意味じゃねぇ…………ごっくん。
――おえぇええ!!
生温かいモノが咽喉を通った。きっ……気持ち悪いっ!
「あぁああ先生! 飲んでいただけましたね? うれしいです! 天国に昇るような気分です」
――おぇええええ!! 地獄だよっ!
「どうですかお味は?」
「わかるか! っていうかわかりたくもないわ」
「そうですわよねぇ、味はわかりませんわよねぇ」
「?」
「おしっこって、食べたり飲んだりしたモノや健康状態によって味が変わるんですよ! 次は食べ物を変えて味変してみますから期待しておいてください!」
「次はねーよ! 絶対にねーよ!!」
「じゃあ飲んでいただいたお礼に、素敵なプレゼントがあります♪」
――プレゼント? 絶対ロクなもんじゃないってことは断言できる!
不動は再びカバンの中から、ビニールに入った物を……あれ?
「おっおい、それって……?」
「はい、H組の皆さん全員分の検尿です」
「えぇっ!? オマエ、それは健康診断の前に提出していなかったか?」
「あ、それとは別に用意したものです。今回、先生に検尿をプレゼントしたいと申し上げたら皆さん、喜んで提出してくださりましたわ」
――この変態どもめー! またやりやがったなぁ!?
去年のクリスマスイブ……《羽根戸 贈》が、H組の生徒たち全員の「使用済みナプキン」をまとめて「クリスマスプレゼント」と称してオレに押し付けていきやがった。おかげで年が明けるまでアパートに悪臭が染みついてしまったのだが……今度は検尿かよ!? どこまで迷惑行為が好きな連中だよ!
「あ、これは時間が経って雑菌が繁殖していますから、飲用はお控えくださいね」
「飲まねぇよ!? 迷惑だ! 何すんだよこんなモン」
「何って……いろいろ楽しめますわよ! 化粧水代わりに顔に塗ってもよし、香水代わりに匂い嗅いでもよし、色の濃い順に並べて遊んでもよし……あ、そうだわ! 容器には名前が書いてありますから……先生お得意の『妄想力』を駆使してエロエロと……じゃなかったイロイロといやらしいこと想像してオカズとして使ってもよろしいですわぁ……あぁっ!」
――妄想が得意だなんて、今の今まで一度も言った覚えがないのだが……。
「いらねぇよ! やっとナプキンの臭いが消えてホッとしたのに……何のメリットもないわ」
「メリットですかぁあああ!? でっでしたらぁ!!」
おどおどした控えめキャラの不動が完全に人格崩壊している。
「先生にだけ飲ませては不公平なので……わっ私にも先生のおしっこ飲ませてください! 何なら先生から直接頂きたいです! とっ、とと特に白くてネバ……」
「それ以上言うなー! 自主規制のピー(PEE)音が入るぞ!!」
※PEE……英語で「おしっこ」のこと。
あっあの、みなさん! よかったら次のおし……お話も読んでください!




