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【出席番号27番】中津森 縫(なかつもり ぬい)


「先生……ここで出しちゃっていいでちゅか?」


【お好きな人はいるかも……でも閲覧注意してね】


 今年もあと1ヶ月で終わりだ。生徒たちもクリスマスや冬休みと待ち遠しいイベントが目白押しだろうが、その前に大事なイベントがある。


 ――期末テストだ!


 この学校は大学までエスカレーター式だ。だからといって成績がどんなに悪くても許されるワケではない。あまりにも成績が悪い生徒は進学を断られる場合もあるし、それ以前に卒業できない……つまり留年の可能性だってありうる。

 また、他の大学を目指したり、推薦入試を希望する生徒もいるので調査書(いわゆる内申書みたいなやつ)も書いている。テストの成績に加え、授業態度だってちゃんとしなければいけない。

 とにかく……いくら受験勉強が必要ない学校だからといって、この期末テストをおろそかにしてはいけないということ! クリスマスや正月の前に気合を入れて勉強して、間違っても赤点など取ることがないようにしろっ!


「そういうことだ、わかったな? 宇の岬」

「えっ、えぇ何っ若彦! 今の全部私に言ったのぉ??」



 ※※※※※※※



 オレは昼休みだけではなく放課後も国語準備室に1人でいることが多い。職員室にいるとどうしても他の先生と雑談をすることが多く、仕事の効率が悪くなるからだ。ごくまれに時間が余ったときには小説が書けるというメリットもある。

 だが今は期末テストに向けて、生徒が個人的にわからないことをよく聞きに来るのでそんな時間はない。テスト前のよくある光景なので仕方ないことだが……。

 ちなみに赤点の常連である《宇の岬(うのみさき) (とも)》のようなバカは、こういう大事なときに限って一度も来ることはない……あいつマジで卒業ヤバいぞ!


 〝コンコンコンッ〟


「先生、少し教えていただきたいことがありますが……よろしいでしょうか?」

「あぁいいよ、入れ」


 入ってきた生徒は《中津森(なかつもり) (ぬい)》、H組ではいたって真面目な(要するに変態ではない)優等生だ。大人っぽい雰囲気の彼女はクラスの中でお姉さん的存在の美少女……いや、美女だ。ただ化粧(一応、校則では禁止だが)が目立つのと、若干香水がキツいのが玉にキズだ。今日は現文のテスト範囲の中でどうしてもわからない問題があるということでやってきた。

 この時期は入れ替わりで生徒がやってきて忙しいが、こうやって真面目に勉強に取り組んでくれるのは良いことだ。オレは長期戦(残業)に備え、ペットボトルのお茶を用意して仕事をしている。


「で、どこがわからないんだ?」

「あ、ここです! 215ページの……」

「あぁ、ここか? これはだな……」


 生徒の教科書を使って教えるのも面倒くさいので、あらかじめ教科書や参考書を用意している。質問に答えおわり、教科書を閉じたときに中津森が言った。


「ありがとうございます! あ……あともう一つよろしいですか?」

「あぁいいよ、なんでも聞いてくれ」

「ええっと、次のページの『~を示してください』のところなんですけど……」


 え? 急に言われたから場所がわからなくなってしまった。


「あ、ごめん! どこだっけ?」

「え? あぁ……ここです」


 中津森が、オレが開いた教科書の該当する箇所を指で示そうと手を伸ばした。すると中津森の肘が、机に置いてある飲みかけのお茶に当たってしまった。


「あっ!」

「うわっ!」


 キャップが外れていたお茶はオレの膝の上に落ち、瞬く間に中身がこぼれて広がっていった。


「あっああああっ先生、すっすみません!」


 幸い、それほど大量にこぼれなかったのだが、少しズボンに染みてしまった。すると中津森は上着のポケットからハンカチを取り出し、お茶がこぼれたオレの膝を拭きだした。


「あぁいいよいいよ、気にするな……このくらいすぐに乾くよ」

「いえ先生、本当にすみません」


 そもそも不安定な場所に置いていたオレが悪い。逆に気を使わせてしまって中津森に悪いことをした。それにしても本当に真面目な生徒だな。


「あ、よろしかったらそのハンカチ差し上げますのでそのまま使ってください」

「いやいや、それは申し訳ない! 後で洗って返すよ」


 その後もいくつか質問に答えて、納得した中津森はそのまま帰宅した。ズボンに付いたお茶はだいたい拭き取れたが、今夜は洗濯しなきゃならないな。あと、このハンカチも……。

 ハンカチはタオル生地で出来た「タオルハンカチ」っていうヤツだ。だからお茶をよく吸ったみたいだ。それにしても……


 薄いピンクの生地に大量のイチゴがプリントされたハンカチだ……意外と子どもっぽい趣味だな。あれ? このハンカチ……よく見ると形が変だ。角が無くて全体的に丸っこい。しかも一部にゴムみたいなものが入っている……オレはそのハンカチを広げてみた。すると、


「うわぁああああっ!」


 何だコレ? ハンカチじゃない……これはパンツ? いやパンティー? いや、ショーツだ! 大人の女性が穿く「パンティー」の形状ではない。これは幼稚園児や小学生の女の子が穿く、いわゆる「女児用ショーツ」ってヤツだ。


 何で中津森はこんな物を持っているんだ? まさかアイツ、こんなのを穿いている……いやいや、それはないだろう。



 ※※※※※※※



 ハンカチではなく、パンツ(女児用ショーツ)だとわかった瞬間、持っていることに罪悪感を感じてしまった。なのでコインランドリーに洗濯を出すことをやめ、自宅で手洗いをして何とか朝までに乾かすことができた。


「中津森、()()()()ありがとな! っていうか、その……ひとつ聞きたいんだが」

「はい、なんでしょう?」


 翌日の放課後、再び国語準備室にやって来た勉強熱心な中津森にパン……ハンカチを返したが、やはりどうしても気になっていたので聞いてみた。


「その……オマエの持っているそれって……ハンカチ……なのか?」


 ハンカチを返したのにそれがハンカチなのか? って言っていることがおかしいのは重々承知なのだが、あの形はパンツ以外の何モノでもないのだ。するとオレの言いたいことを察した中津森はニコリと笑って受け取ったハンカチ? を広げて


「あぁコレですか? これはハンカチですよ! よく見てください、タオル生地ですよ……タオル生地の『ぱんちゅ』なんかあるワケないじゃないですかぁ!」


 そ、そうだったのか! 少し安心したが……なんだよ「ぱん()()」って?


「いや、あまりにも変わっているからビックリしたんだが……ていうか最近はジョークグッズとかでそういうの売っているのか?」

「いえ、売ってませんよぉ……これは私が作ったんです」


 作った? あ、そういえば中津森って手芸部の部長だった。裁縫全般が得意で、自分の服まで作ってしまう……という話を聞いたことがある。確か母親がファッションデザイナーで父親がアパレルメーカーの社長だったな。


「ほう、なかなか器用なんだな? だけど……なんでパンツなんだ?」

「先生! パンツじゃなくて『ぱんちゅ』です! 私、『いちご柄のぱんちゅ』が大好きなんで()()


 は? 普段は大人っぽい雰囲気の中津森だが、「イチゴ柄のパンツ」などという子どもっぽいものが好きなのか? っていうか今、語尾が幼児語だったよな?


「あ、そうだ先生! せっかくだから私の作った『いちごぱんちゅこれくしょん』見てみま()()か?」

「え……コレクション?」


 中津森は意味不明なことを言うと自分のバッグを開けて何やら取り出した。すると中から想像を絶する物が次から次へと出てきた。


「えっと、これが『いちごぱんちゅ』のブックカバーで、これが『いちごぱんちゅ』のお弁当ポーチ、でもってこれが『いちごぱんちゅ』のペンケース……」


 中津森の私物は全て、白またはピンクの綿の布地に大量のイチゴの絵がプリントされ、3方向にゴムを通した穴が開いている袋状のカバーで包まれていた。要するにイチゴ柄のパンツのデザインだ。


 しかし趣味が悪すぎる……【変態】か? それとも単純にカワイイものが好きなだけか? それにしても何でモチーフが「パンツ」なんだ?

 そういえばH組には、あらゆる私物を亀甲縛りにする《グリーンヒル (ゆう)》という【変態】がいるが……やっぱりコイツも変態か?


「あ、あぁ……すっすごいなぁ……それにしても中津森って()()()こういう子どもっぽい物が好きなんだな?」


 大人っぽいイメージが強い中津森の意外な趣味に思わず本音が出てしまった。するとそれまで自分のコレクションを見せて上機嫌だった中津森は急に真顔になり、


「私……こういう子どもっぽい()()()穿いたことがないんです、っていうか子供服自体、着たことがなくて……」


 中津森はそう言うと、自分の過去の話を語りだした。


「両親がファッション関係の仕事をしているせいか……小さいころから子どもっぽい服を着せてもらえなかったんです。いつも母がデザインした服とか高級ブランドばかりで……本当は幼稚園のお友だちと同じように、キャラクターがプリントされたシャツやピンクの星がいっぱい入ったレギンスとか着たかったんですよ。

 下着だって……いちごやくまさんの柄が入ったカワイイのを着たかったんですけど、そういうのを身に着けると将来ファッションセンスが悪くなるからって……パンツも私だけレースの入った赤や黒の大人っぽいデザインで、当時はすごく浮いていて恥ずかしかった……みんなに隠れて着替えていました」


 なるほど、その反動で今こうなってしまったというワケか。そういえばウチのクラスの《扇崎(おうぎざき) (まな)》も、母親が食事の作法やマナーに厳し過ぎてしまったその反動で、まるで獣のような食べ方で性欲を満たす【変態】になってしまったからな。

 中津森も親の過度な期待が裏目に出てしまった例だな。でも彼女の場合は、それがイチゴ柄のパンツをモチーフにしたグッズを自作するという行為になったのだろう。これはモチーフが変態チックなだけで実際のところ、この程度では変態とは言い切れないんじゃないのかな?



 ……と、この時点ではそう思っていた。



「あっそういえば今、穿いているのも手作りなんですよ! 見てみます?」


 と言うと中津森は自分のスカートの裾をつまんで一気にたくし上げた。


「おっおいオマエ何やって……うわっ!」


 オレは両手を広げて中津森を視界から遮り、顔をそむけた。だが、突然の出来事なので間に合わず少し見えてしまった。さっき見たグッズと同じようなイチゴ柄のようだったが……なんか穿いているのがパンツというより、一昔前の「ブルマー」みたいな形の下着に見えた。


「大丈夫ですよ先生! これは()()()()です。テニスのアンダースコートみたいなものですよ」

「えっ、見せパン? いやいや、しかしこのシチュエーションは……わっわかったから早く仕舞え!」


 今はスカート丈を短くしている(もちろん校則では禁止)生徒が多いので、スカートの下に黒いパンツを穿いているという話は聞いたことがある。だが、いくら見られてもいいからと言ってあからさまにスカートをめくって見せるというのは……ましてやここはお嬢様が通う学園、そういう()()()()()行動は慎むべきだ。


「どうです? カワイイでしょ、いちごぱんちゅ! まぁでもこれって……正確に言うと見せパンじゃないんですけどね」

「え? まっ……まさか生パン(ガチの下着)じゃないだろうな?」


「いえいえ、〈見せ〉は間違いないですけど……パンツじゃないんですよ、これ」

「は? どういうことだよ?」



「これ、おむつカバーなんですよ! つまり、『見せおむつカバー』です」



 えっヤバいヤバい! 今、オレは中津森が変態ではないと確信したところなんだが……オマエ、この後の発言によっては考えが180度変わることもありうるぞ!




「私、おむつしているんです……おむつ女子なんです!」




 ――はぃ180度転換ー、コイツは【変態】だぁーっ!


「授業中、クラスメイトに囲まれているときに()()背徳感がたまらないんです」


 ――しかもかなりヤバい部類だぁーっ!


「先生の現文の授業中は、ほぼ100パーセント出していますよ」


 ――うわーっその情報、聞きたくなかったなぁーっ! 



「ていうか……今、()()()()()()

「おいやめろぉおおおおおおおお!」



 こっ……これはかなり高レベルな変態だ。正直言って次回からコイツはオレの授業に出てほしくない。百歩譲ってパンツ好きは認めても、これは……無理だ!

 そういえばコイツは前々から香水の匂いが気になっていたが……そうか、尿臭をごまかすためだったんだな?


「私、物心ついたときから夜尿症(おねしょ)すら許されなかったんですよ。服が汚れるという理由で……でもある日、幼稚園でおもらししちゃったことがあって……しかも当時好きだった男の子の前で。もちろん両親からめちゃくちゃ怒られましたけど、そのとき気が付いたんです……私、好きな人の前でおもらしすることで、もの凄い快感を得られるということが!」


 オレも将来、結婚して子どもができたときには(しつけ)には気を付けよう……やり方を間違えるとこんな変態(モンスター)が誕生してしまうんだからな。


「私、H組のみんなも好きだし……若彦先生のことがとっても好きです! だから先生の顔を拝みながらおもらしをするととっても気持ちよくて……さらに言えば相手の人、つまり先生がこの事実を知っていれば背徳感が倍増して尚のことです。なので先生! 今度、授業中にするときはその瞬間が伝わるように何かハンドサインをして教えますね♪」

「全力で断る!」


 いかん、もうこのディープな変態には付き合いきれん! 早く中津森には帰ってもらおう。誰か他の生徒でも入ってこないものか……そのとき、


 〝コンコンコンッ〟


先生(しぇんしぇい)、入ってもよろしいで()()か?」

「お、おう! 入っていいぞ」


 助かった! 他の生徒が入ってきた。しかもこの声は……


 入ってきたのは《鴨狩(かもがり) (つむぎ)》だ。H組の生徒で……まぁコイツもオレの膝の上に座って放屁するのが好きな【変態】なのだが、この際そんなこと気にしている状況ではない。


「あら!?」

「あっ!」


 だが、お互いの存在に気付いた中津森と鴨狩は思わぬ行動に出た。


「つむつむぅ~っ!」

「縫しゃ~ん!」


 中津森を見つけた鴨狩が、まるで飼い主を見つけた子犬のように中津森に飛びついた。身長が130センチ台の鴨狩を中津森が持ち上げてそのままハグした。そこまでなら仲の良い友達同士の行動だが、この後に衝撃的な光景が飛び込んできた。


 〝チュッ!〟


 何と中津森と鴨狩がキスをしたではないか! えぇっ!? どういうことだ?


「なっななっ!? 何やってんだオマエらーっ!!」


「え、あぁ……実は私と()()()()(鴨狩)は付き合っているんですよ! 私、先生も好きだけどつむつむのことはもっと好きなんです! だって……幼児体型でカワイイでしょお~つむつむって!」


 鴨狩を降ろした中津森だが、鴨狩の手はしっかり握ったまま離さなかった。毎週のように生徒の変態っぷりがカミングアウトされているH組だが、これが一番の衝撃だ……まぁ、この学校は恋愛が禁止されているワケではないが……


「っていうか、オマエら()()()じゃないか……その、付き合っているって……」


 すると中津森が真顔になって低いトーンで言った。


「え? 何それ? 『粟津まに(百合小説家)』に言われたくないんですけど……」


 何だ、コイツも知ってんじゃねーか……もはや公然の秘密じゃないのか?


「あっ、そうだつむつむ! 私が作ったアレ、先生に見せてやって」

「うん、いいでしゅよ」


 中津森に促された鴨狩は、自分のスカートの裾を持ち一気にたくし上げた。


「うわっ! 鴨狩(オマエ)までなんだよ!?」

「大丈夫でしゅよ! わたしも『見せおむつカバー』でしゅ……縫しゃんが作ってくれたんでしゅよ」


 何だそうなのか……鴨狩のおむつカバーはクマのイラストがプリントされたデザインだ。いやでも、いくら見せても構わない『見せおむつカバー』だからといってこういうシチュエーションは傍から見て誤解されるだろ、早く仕舞えよ。




 ……あれ? オレ今、もっと重要なことに気付いてなかったよな?




「な、なぁ鴨狩……オマエ今、何て言った?」



「え? 見せおむつカバーでしゅけど……」



「おっ……おおおオマエもオムツしているんかぁああああっ!?」


 すると中津森が


「そうですよ、私とつむつむは『おむ友』なんですよー」


 いかん、【変態】が感染している……まぁ鴨狩は元々変態だが。


しょう(そう)なんでしゅよー、わたしも最初(しゃいしょ)は抵抗があったんでしゅけど……便利なんでしゅよねコレ、縫しゃん特製(とくしぇい)活性炭(かっしぇいたん)が練り込まれているんでしゅよぉ、だからオナラしてもバレにくいでしゅ! しょれ(それ)に……」


「それに?」


「万が一『誤爆(ウ●コもら)』しても高いパンツをゴミ箱に(しゅ)じゅ()済む(しゅむ)から安心でしゅ」

「やっぱりあの時の()()はオマエかぁああああああ!?」

(※詳しくは鴨狩紬の回を読んでくだしゃい)


 今日はハードな一日だ! 「イチゴパンツのグッズ」に始まって「おむつ女子」「オレの授業でおもらし」「百合カップル」「おむつ仲間」「ウ●コパンツ不法投棄事件の犯人確定」……情報量が多すぎて処理しきれない!



「今日もこの後、私の家で『交換会』するんだよねー」

「ねー」


「何だよ、その交換会って?」


 中津森と鴨狩は声を揃えて



「「おむつ交換会♪」」



「オマエら、クリスマスのプレゼント交換会みたいなノリでとんでもない変態行為をカミングアウトしてんじゃねぇよ!!」


「あっそうか! いいこと思いついたよつむつむ、クリスマスは一緒におむつケーキ作ろうか?」

「うん、しゃんしぇーい(賛成)!」



 うわぁああああ、コイツらといると()()()が爆発しそうだ……早く帰れー!!



 ※※※※※※※



 数日後、オレは本屋である雑誌を買った。ラノベ雑誌だが、オレがいつも書いているのとは違う雑誌だ。

 実はオレの連載を打ち切りの危機に追いやった新人作家、《良坊(よしぼう) 種夢(たねむ)》の新作の短編小説が掲載されているとの情報を耳にした。さっそく他の出版社からもオファーが来るとは……気になったので読んでみた。

 コイツはオレと同じジャンル、女子高生の百合を書いている。しかも内容がオレの作品よりもっと過激で……かなり変態的な内容だ。


 さっそくアパートに帰って読んでみた。内容は……授業中におもらしをしてしまった女子高生に近付いてきた別のクラスの女子高生、彼女が「おむつ」を勧めてきて2人は「おむ友」になり毎日、お互いの家や様々な場所で「おむつ交換会」と称する変態行為に及ぶ……。



 ――あれ? デジャヴかな? 似たような話が身近に……。



 しかも、この授業中におもらしをしてしまった女子高生、身長が135センチで舌足らずな口調……どう見てもH組の生徒(鴨狩 紬)のことだよな?



 ――この良坊とかいうヤツ、まさか……身近にいるのか?



 翌日、オレは鴨狩に直接聞いてみた。


「なぁ鴨狩、ちょっと聞きたいんだが」

「え? 何でしゅか? 先生(しぇんしぇい)もおむつしてみたいんでしゅか?」

「するワケねーだろ! そうじゃなくて……その、オマエは〈良坊 種夢〉って小説家を知っているか?」


 その名前を聞いた鴨狩が一瞬、ピクッと反応した。


「え、えぇ知ってましゅよ! 百合小説(しょうしぇつ)家でしゅよね?」

「昨日発売した新作……あの主人公、特徴がオマエに似ているんだが……」

「え……先生(しぇんしぇい)、あんなの読んでいるんでしゅか? えっちぃー」

「オマエ、オレの正体知っているだろ!? ()()()だ」


 すると鴨狩は、しばらく考え込んだ後……


「あれ、わたしでしゅよ! ちゃんと許可済みでしゅ……粟津先生(しぇんしぇい)と違って」

「わ……悪かったなその節は」


 ――「許可」ってことは……鴨狩は良坊と接点があるってことだな?


「ちなみに別のクラスの()()()って、もちろん縫しゃんのことでしゅよ」


「な……なぁ教えてくれ! 良坊って誰だ? それと、オマエらがオレの正体を知った謎のメールって発信元は誰だ? もしかしてこの良坊ってヤツなのか?」


「メールはわたしも知りましぇん! 良坊先生(しぇんしぇい)の正体は……ごめんなしゃい、わたしの口からは言えましぇん」


 まぁかん口令は敷かれているだろうな……だが、この良坊というヤツが身近にいることだけはわかった。ただ……コイツの目的は何なんだ? オレから仕事を奪うことか? それとも……


「あ、でもヒントだけはあげられましゅ! 良坊先生(しぇんしぇい)の名前をよく見ると……わかりましゅよ!」


 ペンネームがヒント? そういえば……ちょっと気になる人物はいるが……。

私のいちごぱんちゅ見てくれてうれしいでちゅ! 次回に続きまちゅ!

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