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【出席番号13番】グリーンヒル 結(ぐりーんひる ゆう)

「センセー、もっとキツく……してくだサーイ! 」


 

 〝キーンコーンカーンコーン〟


 1学期の終業式とHRが終わった。明日から「夏休み」だ。でも全然楽しくはないし待ち遠しくもない。なぜなら「夏休み」とは生徒基準の話であって、我々教師は明日からも通常の勤務が続く。まあメリットといえばせいぜい授業が無いくらいで、実際は事務仕事や研修会、あと1学期の成績が悪かった生徒(バカ)を相手に補習授業をしなければならないので結構忙しいのだ。


「先生、さようなら」

「先生、ごきげんよう」

「おう、じゃあ2学期な! 体に気をつけてな!」


「若彦ぉー、じゃあねー! 」

「おう、宇の岬! また〈補習〉でな!」

「うげぇー!! 聞きたくなかったぁあああ~!」


 今日は式典がメインなので午前中で終了だ。続々と生徒が帰っていく中……


「センセー! サヨーナラ」

「おう、さような……あ、グリーンヒル」


 オレはある生徒を呼び止めた。


「オマエ、夏休みは……帰るのか?」

「帰りマース、ワターシ、夏休み、グランマ(おばあちゃん)の家に行きマース!」


 生徒の名前は《グリーンヒル (ゆう)》、イギリス人の父と日本人の母のハーフだ。イギリス生まれだが、高校入学と同時に家族と共に日本にやってきた。しゃべり方は片言だが、日本語の読み書きは母親が教えていたので全く問題ない。むしろ現文の成績はクラスでも良い方だ。

 夏休みはイギリスに残った祖母の家に行くみたいだ。おそらく夏休み期間中はずっと滞在しているだろう。


「すまんなグリーンヒル、日本は夏休み短くてな……あと、宿題も多いし」


 日本と違い欧米は夏休みがとても長く、しかも宿題とかは無いらしい。日本の中学3年生にあたる学年までイギリスで過ごしていたグリーンヒルにとって、日本の夏休みはさぞ苦痛だろう。


「大丈夫デース! 日本のコトワザ、『郷に入っては郷に従え』デース」


 なかなか良い子じゃないか! 宿題が多すぎると文句ばかり言ってた宇の岬たちも見習って欲しいわ。


「ああ、それでだなグリーンヒル、後で渡したいものがあるから少し残ってもらえないか?」


 グリーンヒルは少し考えてから


「残りマース! ワタシもセンセーに聞きたいコトがありマース」


 ――聞きたいこと? 何だろう?



 ※※※※※※※



 グリーンヒルを教室に残し、オレはいったん職員室に向かった。教頭からグリーンヒルに渡してほしいという封筒を受取り、再びH組の教室に戻った。


「おうグリーンヒル、待たせたな……すまんが、これをお父さんに渡してほしいそうだ」


 グリーンヒルの父親は外資系企業のCEOだ。この学園に多額の寄付をされているスポンサーで、どうやら封筒の中身は理事長からの手紙のようだ。もちろんオレみたいな下っ端が内容を知る由もない。


「渡しマース、了解しまシター」

「じゃあよろしく。ところでグリーンヒル、『聞きたいコト』って何だ?」


「アー……聞きたいコトデースかぁ? ソレは……」


 グリーンヒルはしばらく間をおいて……




「センセー……センセーは《粟津まに》デースかぁ?」




 ――うげっ! コイツ、ど直球で聞いてきやがった!!


「粟津まに」とはオレの裏の顔で、最近は百合(GL)小説専門になっているラノベ作家のペンネームだ。作品の登場人物はH組(ウチのクラス)の生徒をモチーフにしているが、グリーンヒルは唯一の外国人ハーフ……モチーフとして適材だ。今までに留学生やALT(外国語指導助手)などいくつかのシチュエーションで参考にさせてもらった。


「だだっ誰だそいつ、さっぱりわからん……」

「トボケないでくだサーイ! わかってマースヨ、ホラ」


 グリーンヒルはスマホを取り出すと、メール画面を見せてきた。本当だ、初めてメール画面を見たが、確かにオレが「粟津まに」だということ、粟津まにが百合小説を書いている作家だということ、メールを受信した生徒がモチーフとなった作品のリストなどが事細かに書いてあった。

 それにしても……なぜSNSではなくメールなんだろうか?


「なんだそれ、そんな出処のわからないメールを鵜呑みにしているのか?」

「シテマセーン、ちゃんとワタシがモチーフにされている小説(ストーリー)も読みまシター。確かにワタシとよく似てマース!」


 ――しっかり読んでやがったか。日本語の小説とか好きだもんなコイツ。


「それと……センセー、授業中ときどきワタシのコト見る目がエローいデスヨ! ワタシの体形(ボディーライン)気になりマースか?」


 うげっ! 実はこのグリーンヒル、美少女揃いのH組の中で1番のグラマーだ。なのでスタイルの良い豊満な女性を文章で表現するのに、よくグリーンヒルの体形を参考にさせてもらっている。


「イマ認めれば誰ニモ言いまセーン! 認めナイなら……パパに」


 うわぁああああああああっ! それはマズい。グリーンヒルの父親はこの学園に多額の寄付をしているスポンサー……つまり実力者だ。オレみたいな下っ端(ザコ)なんて簡単にクビにできる力がある。


「わ……わかった。オレが〈粟津まに〉だ……すまん。だが別にグリーンヒルのことはそういうイヤらしい目で見ていた訳ではなくて……」

「別にイイですヨー! ソーいう目で見テモ!」


 ――え?


「センセー、ワタシのこと、とてもキレイに、そしてセクシーに描いていマース! とてもうれしいデース」


 何だ? 今まで何人かの生徒にはバレてしまったが、良かったという感想は初めてだ。やっぱ外国人はそういう性的なことに寛大なのか?


「そ……そうか? それは……ありがとう……」

「デスガッ! ……ヒトツだけ気に入らないコトがありマース!!」


 グリーンヒルの態度が急変し、機嫌の悪い顔になった。


「えっえっ! 何だ何だ? オレ……何かマズいこと書いたか?」

「書きましたヨ! センセー、この作品『9時間前の君に』でワタシのコト、ドコ出身って書きまシタカー?」


 ワタシ? いや正確にはワタシ(グリーンヒル)をモチーフにしたキャラだが……コイツはイギリス出身で北の方だってことは知っているが細かい場所までは把握していない。


「ええっと……確か湖水地方の田舎町って書いた記憶が……」


 イギリス人でグリーンヒル(緑の丘)って名前だから、ピーターラビットのイメージでそこに決めた気がする。湖水地方とは()()()()()()北西部にある風光明媚な地域だ。

 すると、グリーンヒルが押し殺したような声で言った。



「ワタシ……生まれはベルファスト……デース」



 ――え?



「ワタシ……()()()()()()人デース」




 ――うわぁあああああああああ!


 シャレにならない勘違いをしてしまった。


 ベルファストといえば()()()()()()()……確かに広義ではイギリスだがここはイングランドとは別の国、しかも非常にセンシティブな地域だ。

 そういえばH組の担任になった2年前、地理歴史科担当で副担任の御坂先生から「若彦先生、彼女グリーンヒルのことを〈イギリス人〉と呼ぶのはいいけど間違っても〈イングリッシュ〉とは呼ばないでね」と言われたのを思い出した。


 何てことだ! オレは大学時代サッカー部だったので、イギリスではなく「スコットランド」や「ウェールズ」といった国名に馴染んでいると思っていたのに、こんな初歩的なミスをするなんて……。


「センセー、国を間違えるなんて失礼デース! これはパパに言いつけマース」


 ――わぁああああっ!! それはマズい!


 何度も言うがグリーンヒルの父親はこの学園の大口の出資者(スポンサー)だ。機嫌を損ねたらオレのクビなんて赤子の手をひねるようなものだ。国を間違えた上に、自分の娘を百合小説のモチーフにしているなんてバレたら確実に命はないだろう。


「すっすすすまんグリーンヒル! それだけは勘弁してくれぇええ!」


 オレはグリーンヒルの前で土下座して手を合わせた。するとグリーンヒルは不敵な笑みを浮かべ


「わかりまシター! 誰にも言いまセーン……その代わリー」


 ――え? 何か交換条件を出してきそうな雰囲気……


「帰国スル前に……センセーと〈思い出〉作りたいデース」


 ――思い出?


「それカラ……アノ小説、4月の話ですヨネー? ならサマータイムなのでタイトルは『()()()()の君に』が正解デース!」



 わかった……後でそんな凡ミスに気付かなかった編集者にも伝えておこう。



 ※※※※※※※



「で……思い出って何だ?」

「ワタシ、センセーのコト好きだカラー、一度やってミタいコトありマース」


 ――おいおい、変なことじゃないだろうな? ただでさえ「変態」が多いH組、何か普通に終わりそうにない気がするが……。


「センセー、これデース」


 そういってグリーンヒルがカバンの中から取り出したのは教科書やノートを束ねた物。何だ? 補習授業でもしたいのか? それとも「思い出」だから夏休み中に手紙のやりとりでもする気か?

 教科書やノートは「ブックバンド」で留めてあったが、とても変わった留め方がしてある。ベルト状ではなく紐のようなもので結ばれて……



 ――あれ?



 ――何だこれは!?



 よく見ると紐と呼ぶには少々太い……どちらかと言えば縄だ。しかもその梱包方法がとても変わっている。

 中心部に縄が2か所、六角形を描くように空けられていて、四方から張り巡らされた縄が、通されたり結ばれたりして六角形の頂点を作っている。


「おっおいグリーンヒル、これって……」


 この結び方……いや、縛り方はどこかで見た記憶が……




「ワカリマセンカー? これは『亀甲縛り』デース!」




 ――うぉおおおおい! 何やってんだよコイツは!? 


 でもまぁ待て落ち着け……元々これは古くから、米俵とかの重量物の重心が偏らないようにするために考え出されたと聞いたことがある。きっとグリーンヒルは日本の伝統技術か何かを調べたときに、たまたまこれを知ったんだろう……。


「な、なぁグリーンヒル……これって……アレだよな? 梱包方法か何かを調べていて……その、米俵か何かの……」

「コメダワラ? ……女体の縛り方デース」



 ――ブブゥーッ!!


 オレは何も飲んでいないのに何か吹き出してしまった。


「げほっげほっ! オマエ何を言……おっオマエ何をやってんだーっ!」


 むせて下を向いていたオレが顔を上げると、グリーンヒルが制服を脱いでいる最中だった! やめろ! 教室だぞ! 見つかったら退学レベルの大問題だぞ!!


 制服を脱いだグリーンヒルは下着姿……ではなく、それ以上に問題のある格好をしていた。全身がエナメルのような光沢があり、体の線がはっきりわかる黒い衣装……つまり『女王様(ボンデージ)衣装(ファッション)』だ。


「ワターシ、日本ニ来る前からズット、SMが趣味デーシター!」


 1学期の終わりに強烈なカミングアウトを聞いてしまったわ! しかも日本に来る前って……中学生の年齢からそんな趣味持ってるのかオマエはっ!?


「ワターシ日本に来ルのトテモ不安デシター、ニポン人とてもシャイ……SM文化なんてナイと思ってまシター」


 何だよ「SM文化」って? するとグリーンヒルは、教科書が入っていたカバンとは別のリュックの中から何か取り出した……げっ! これは?


「デモ、日本には『亀甲縛り』というトテモ素晴らしい文化(プレイ)がアルことを知りマシター! 感動シマシター、アメージング!!」


 グリーンヒルが取り出したのはロープだった。まさか……?


「センセー……お……お願いがありマース……ハァ……」


 グリーンヒルは息遣いが荒くなって目が据わってきた。ヤバいヤバい、女王様(ボンデージ)ファッションのグリーンヒル……こりゃ完全にオレのことを縛るつもりだな?


「おいっ! オレはMじゃないし、そもそもそんな趣味はないぞっ!!」


 するとグリーンヒルは


「ワカッテマース! だからお願い……ワタシを縛ってくだサーイ」




 ――へ?



「ワターシ、縛り方完全にマスターしていマース! でも、ワタシを縛れる人誰もいまセーン! 一応、〈セルフ〉デモできマース……でもセルフではキツく縛れないんデース! ワタシ、SとMどっちもOKデース」



 ――うわっ! ある意味王道の【変態】がキター! ところでセルフって何?



「センセー、ワタシをキツく縛ってくだサーイ! ……ハァハァ……日本に来てからまだお手伝いさん(メイド)しか縛ってないデース! ずっとワタシはSばかり……欲求不満デース! たまにはMになりたいデース!」

「オマエとんでもない変態だな! っていうかメイドさんが気の毒だ」

「アァッ! 言葉攻めもグッドデース! でもヤッパリ縛って欲しいデース……ソレと、メイドは真性ドMだから問題ありまセーン!」

「だったらそれが問題だわ! お父さんが知ったら悲しむぞ」

「大丈夫デース! たまにパパも縛りマース! パパ喜んでマース」


 ――あぁあああああっ! 一生知らない方がよかった情報を受信してしまった。今から受信拒否できないか?


「縛ってくれないんデスカー? だったらパパに……」

「あぁわかったよ! するよ」


 前門の(グリーンヒル)、後門の(父親)だ。もはや選択肢などない。



 ※※※※※※※



「オマエ、まさかと思うがその……服は着たままだよな?」

「エ? 全裸になろうと思ってましたケド……だめデースカー?」

「ダメに決まってるだろうが! 今この状況でも大問題なのにさらに問題を大きくするつもりか?」

「エー、全裸の方が気持ちイイのに……ザンネンデース」


 ――いくらオマエの父親が権力者でも、それやったら間違いなく退学だろうな。正直、今のグリーンヒルの格好でもギリギリ……アウトだろう。


「じゃあセンセー、お願いシマース♪」


 というとグリーンヒルはオレにロープ……もとい、縄を渡してきた。……いや、ちょっと待てよ?


「そういえばオレ……そんな複雑な縛り方わからんぞ」


 わかる訳がない。むしろわかっている方がおかしい。


「エッ!? センセー、亀甲縛り知らないんデスカー? それで本当に日本人ナンデスカー? じゃあ菱縄縛りデモいいデース」

「いやそれも知らんわ! ていうかほとんどの日本人は知らないぞ」

「オーマイ……何デッ? 嘆かわしい……こんなスバラシイ伝統文化を知らないなンテ! もうすぐ世界文化遺産に認定されるんデスヨー」

「どこの情報だ!? それは絶対ないわ!!」


 グリーンヒルはハァーッとため息をついた後、


「仕方ないデース、じゃあワターシが途中までやりマースからセンセーは仕上げにキツく縛ってくだサーイ」


 と言ってグリーンヒルはオレから縄を奪うと自分の首にかけ、手慣れた手つきで結び目を作ると股を通し背中にまわした。


「さあセンセー、ここからデース! コノ縄を脇からまわシテ、前の輪っかに通してくだサーイ」


 言われるままに縄を背中から脇を通して前の方に持ってきたが……ちょっと待て! 2本の縄を結んでできた輪っかを通す前に、非常に困難なミッションが待ち受けているのだが……。

 先に述べたがグリーンヒルはH組で一番グラマーだ。それはつまり「巨乳」という意味も兼ねている。この輪っかに縄を通す……ということは、この巨乳に多少なりとも触れなければ次に進めない。


 それってセクハラじゃねーのか!? まぁこの時点でもう手遅れだろう。しかし冷静に考えてみたら、オレの秘密を彼女の父親にバラされたら教師クビなんだろうけど、この状態を他の誰かに見られてもクビになるんじゃないのか? なんだ、どのみちクビなのかオレって……。


「センセー、何ヤッてるデスカ!? 早くシテくだサーイ!」


 グリーンヒルの機嫌が悪くなってきたようだ。でも、いくら本人が触ってもOKだと言っても、いくら脅されて命令されていても、いくら服の上からでも、女子生徒の胸を触るのはNGだ。オレは硬直してしまい、それ以上動けなかった。


「アァーーーもうっ! 何やってるんデスカーーー! 」


 いつまで経っても動かないオレを見てグリーンヒルがついにキレた。



「モゥいいデース! 役立タズッ! だったらワタシがセンセー縛りマース!」



「え? 何だって? ち……ちょっと!」


 するとグリーンヒルは自分を縛っていた縄を大急ぎで外すと、オレの首に縄を掛けた。そしてものすごい勢いでオレの身体を縛っていった。


「うげっ!」


 しょせん女の子の力だから大したことないと侮っていたら大間違い。かなり強烈な力で縛り上げてきた……イテテテテ! 全体的にきつく縛られたのでかなり痛い。しかも腕まで縛られたので身動きが取れない。でも一番痛いのは……股間に食い込んだ縄だ。男なら共感してもらえるだろう、アレ(TAMA)の上から縛られたのだ。


 〝ドンッ〟


「うわっ! 痛てっ!」


 縛られて身動きが取れないオレを、グリーンヒルがいきなり足蹴りした。オレは無抵抗のまま床に倒れ込んだ。いつの間にか脚も縛られていた。


「さぁセンセー……ジャナーイ、この薄汚いオス豚ワカヒーコ! 徹底的にいたぶってやりマース!」


 そういうとグリーンヒルは再びリュックの中から何かを取り出すと



 〝バチーーーーーンッ〟



 教室中に大きな音が響いた。グリーンヒルが持っていたのは……ムチだった。


「おいブタ野郎! サッキはよくもワタシの国を間違えやがったナ!? 2年以上一緒にいたのに知らなかったナンテ……許さナーイヨ」


 うわぁあああ! マジでヤバいぞこれ! 口調も完全に女王様になってきた。


 ――誰か……助けてくれっ!!


 助けを求めたかったが、この日は終業式で生徒は午前中に帰宅している。他の教室にはおそらく誰もいない。しかも今は昼休みの時間なので教職員もこの付近を通ることはない。絶体絶命だ! その時、



 〝キュッキュッキュッ〟



 上履きの音を鳴らしながら歩く音が聞こえた。段々音が大きくなってこちらに向かってくるのがわかる。


「お、おぉい! 助け……」


 オレは声を上げて助けを求めようとした。その時、上履きの音を立てている人物の話し声が聞こえてきた。


「――もぉっ! 明日から休みだっていうのに何で忘れ物してるっスか?」

「かんにんしてやぁ、後でアイスおごったるさかい……」



 ――え? この声は……まさか!?



 〝ガラガラガラッ〟


 教室の扉が開いた。


「「あっ! 」」


 ――やっぱり!


 教室に入ってきたのは《愛宕(あたご) (あかり)》と《鍛冶屋坂(かじやざか) (えみ)》の2人だ。助けを求めたかったが、この2人だと……ちょっとややこしいことになるかも?


「おっオマエら……何でここに? 」

「あぁウチが教室に忘れ物したからアカリン(愛宕)に付き合ぉてもろて……それよりセンセェ、何してんねん?」

「い、いやこれは……」

「ユゥ(グリーンヒル)も何やってるっスか? そんな格好で」

「アー、イインチョー! センセーがワタシの生まれ故郷ヲ間違えていまシター! ダカラ―、今から()()()()デース! 」


 ――!?


「お仕置き」という言葉を聞いた途端、愛宕と鍛冶屋坂の目の色が変わった。


「へぇ……それはヒドいっスね先生、2年以上同じクラスっスよね?」

「そやなー、なぁユゥ……ウチらもお仕置きに加わってええか?」

「ええデース! 一緒に楽しみまショー♪」


 ――い、いやいやオマエらなに同調してんだよ! ってか愛宕ーっ! オマエ何でスタンガン取り出してんだよぉおお!


「あー、忘れ物やっぱココやったかぁ~」


 ――鍛冶屋坂ーっ! 忘れ物ってハリセンかよぉおおお! 何でそんなの教室に置いてあるんだよぉおお!


 得意の武器? を持ち、目を輝かせた3人がオレの周りを囲んだ。オレは全身を縛られ身動きが取れない。もはや「まな板の上の鯉」だ。


「オイ、ブタヤロー! 女王様に謝りなサーイ!」


 〝バチーンッ〟


「うわぁごめんなさい! これからは間違えませーん!」


「先生、ついでに小泉八雲にも謝るっス! 」


 〝ビリッ〟


「うわぁ! そういや小泉八雲の父親はアイルランド人だった! 国語教師なのにごめんなさーい!」


「センセェ! 特に理由ないけどウチにも謝らんかーい!」


 〝パチーンッ〟


「何でだよぉおおおおおおお!」





 ああ……夏休みが楽しみだ、そして待ち遠しい! なぜなら……





 この「変態ども」の顔を見なくてすむからだ。


最後マデ読んでくれてありがとうゴザイマース! 次回までアナタを縛りマース!

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