5 夕陽ヶ丘は恐ろしいが……
「うふふ、全てお見通しですよ。上城さん」
「夕陽丘いつから……」
「最初からです」
夕陽丘は俺の耳元に囁く。
「そう最初から……うふふ」
「最初から」を強調した言い方をした夕陽丘の言葉に俺は背筋が凍りそうなほどぞっとした。
(まさか……)
「そう水橋さんが会話しているところからです」
夕陽丘を見るとうふふと微笑んでいた。
だがこれだけでは終わらない。
俺は夕陽丘の口から衝撃の事実を知る。
「あっ、ちなみになんですけど水橋さんが他の生徒と会話しているところあるじゃないですか?」
また俺の耳元に囁く夕陽丘。
「じつはあれ、私が仕組んだものなんですよ」
俺の元から離れた夕陽丘は「すごいでしょ?」と笑顔で言った。普通に見ればとても可愛らしい一面である夕陽丘。だがこの状況下でその笑顔は単なる夕陽丘に対しての恐怖心でしかない。
俺は言葉を失った。
そんな俺を他所に夕陽丘は淡々と話を進める。
「まぁそんなことより上条さん。お昼休みしっかり一人で来てくださいね。でなければ……」
「わかりますよね?……」と言った夕陽ヶ丘はあの写真をチラッと見せ脅してきた。
「ではお昼休み楽しみに待っています。ではごきぜんよ」
夕陽丘が上品に挨拶し終えたところでタイミングよく次の授業が始まるチャイムがなった。
結果、水橋と接触するチャンスもなくした。
俺にとっては災厄な展開である。
(あぁどうするべきなのか……)
手を打つことがなくなった俺は路頭に迷い授業の内容もあまり入ってこない。
そしてあっという間に4限目も終わり昼休み。
俺は夕陽丘が言われた通り食堂に向おうとした。
その時だった
「上条君ちょっといいかな?」
俺は声がした方を振り返った。そしてそこにいたのは水橋。
そう正真正銘 水橋 水樹である!
「べ、別にいいけど……」
水橋に会えたことがとても嬉しく今にも水橋に抱きついてしまいそうな俺。
だがクラスメイト達がいる前では陰キャラらしく水橋に接しなければならない。その理由がクラスの一部の視線が気になる。まぁ、クラス一の美少女が俺みたいな陰キャらに喋りかけている光景は「明日雨が降るのではないか」と思うほど珍しいから仕方がないかもしれない。
(それよりも水橋が俺に声を掛けてくるとは一体……)
「あのね、上城くん」
「は、はい……」
やたらと機嫌がいい水橋。
俺は機嫌のいい水橋を不気味に思いながら返答した。そんなことを他所に水橋は後ろからあるものを俺に見せこう言った。
「良かったら私とお弁当食べよう!」
この瞬間クラスがシーンと静まり返った。
そしてクラスメイトは驚いた表情で俺達をガン見している。
(あー!災厄だ!ものスゲー悪目立ちしている!)
「あ、あの……」
「大丈夫!上城君のために他の生徒がいない場所で食べようと考えているから!」
不意に俺の手を取り握る水橋。だが水橋の握るては「お前には拒否権がない」と言わんばかりにやたらととても強い。
「わ、分かったよ……一緒に食べよう……」
「じぁ!決まり。さぁさぁ早速行こう!」
「あっ、ちょ……」
お弁当の準備も出来てないのにそそくさと教室を後にした水橋。俺は急いでお弁当を持ち水橋の元へ行こうとするが途中で水橋を見失ってしまった。
「水橋の奴どこへ行きやがった……」
水橋を見つけるために俺は辺りをきょろきょろ見まわした。だが一向に見つからない。
そしていつの間にか俺はあまり人気がない廊下まで来てしまった。
「はぁ……さすがにこんなところにいるはずないようなぁ」
そう思った俺は元来た道に戻り改めて水橋を探そうと試みようとした。
だが次の瞬間俺は制服の裾を捕まれ引っ張られた。そして引っ張られた先は薄暗く人の出入りがあまりない教室。
そこで水橋が仁王立ちし俺を見下すように見下ろしていた。
「ねぇ信介。あなたどう言うつもりなの」
水橋の姿はなぜかご立腹見える。
一体、何が……
最後までありがとうございます!