1 幼馴染とは関わりたくない!
新しく投稿してみました。
よろしくお願いいたします。
俺 上城 信助の高校生活の願いは、誰にも相手にされないただただ静かな生活を送ることである。
なので俺は普段から極力人とは関わることはせず、基本的に一人でひっそり学校生活を満喫している。
だがそれを邪魔する者が一人いる。
「好きです付き合ってください!」
「ごめんなさい無理です」
即答で告白を拒否した。もうこのやり取り、この屋上での告白は一体、何回目になるのだろうか?
「もう!どうして毎回毎回、私の告白を拒否するの!」
顔をぷっくり膨らませ睨み付けてくる黒髪の女子生徒。最初は可愛いと思ったがもうこの光景も見すぎて見飽きた。
その女子生徒の名は水橋 水樹。
誰もが認めるほどの美少女かつ、学校の成績は常にトップクラス。完全無欠である水橋はこの学年の注目の的。水橋と一緒にいると周囲の生徒達にチラチラと見られ目立って仕方がない。俺にとっては一番関わりたくない人物である。
だが俺と水橋は幼稚園からの幼なじみであるそれ故、水橋はやたらと俺に絡んでくる。
そしていつの頃からだろう。
水橋は俺を昔から好きだったらしく、高校生になった今、青春らしいことをしたい!とか言うくだらない理由で俺に告白してくるようになっていた。
全くいい迷惑だ。
そう俺は思いながらいつものように水橋を振った理由を述べる。
「だってお前といると目立つじゃんだからその……」
だがこれでは引き下がらない水橋。
「はぁ?!別にいいじゃん!」
「いや、俺にとっては良くない!」
毎日このようなやり取りも行われる。もういい加減にあきらめてほしい。
そしてそう言っている合間にも屋上に生徒がやってくる危険が高くなる。そしてこれが見つかれば俺は後日注目の的になる危険がある。
俺はさっさと屋上から出ることにした。
「とにかく、今日はここまでだ!」
俺は屋上の扉、目掛けて走った。
だが、屋上の扉付近に差し掛かったとき目の前に水橋が立ち塞がった。
「どいてくれない?」
「嫌だ!」
「どいて?」
「嫌だ!」
「お願いします!そこどいてください!」
「お断り申し上げます!」
土下座をすればどいてもらえると思ってやってみたが上手くいかず水橋は満面な笑みを添えてこれまた丁寧に断ってきた。
これではこの屋上から出ることが不可能。
ならばやることは一つ!
「なら無理やりでもどいてもらうおうか水橋!」
「嫌!絶対通さない!」
力ずくで屋上から出ることにした俺だが水橋も俺を通さまいと抵抗をみせる。しかも水橋の力はなかなか強く普段から力を使わない、いんきゃらの俺は情けない話、力負けしそうだ。
それにしても今日の水橋はやたらとしつこい。
普段はこんなやり取りなんかせずに屋上から出してくれる。
そこで俺は水橋に聞いてみた。
「どうしてだ水橋!今日はやたらとしつこいじゃないか!」
「だって今日はホワイトデーだよ!ほら、前にチョコあげたじゃん!」
そう言えば今日は3月14日ホワイトデーだ。
確か俺は2月14日に水橋から強引にバレンタインチョコを貰った。まさか、あれのお返しをしてもらえてないからこんなことをしてくると言うことなのか。
そうなるとかなり面倒だ。
そもそも俺はホワイトデーと言うことすら忘れていた。勿論、お返しのチョコレートなんて持ってきてない。
これでは一向に屋上から出ることは出来ず、そのうちここにやって来た生徒達に俺達のやり取りを見られてしまう。
そうなれば俺と水橋が二人っきりでいた話題が学年中に知れわたり俺の静かに高校生活を送る願いは消えてしまう。
それだけはなんとしてでも阻止したい!
こうなったら正直、チョコを持ってないことを伝えるのみ。
「ごめん水橋、俺チョコ持ってきてないから」
「はぁ?今なんて………」
水橋の力が弱まっていく。
このまま上手くいけば屋上からの脱出も上手くいく。
俺は追い討ちにもう一度同じ事を言った。
「だからチョコレート持ってきてないから」
その言葉を聞いた水橋はついに力を抜いた。
だが水橋は下を俯き様子がおかしい。
「ど、どうしてなの?……」
水橋は顔をあげた。
だがその表情は涙で溢れていた。
その様子にこうなるとは思わなかった俺は慌てて水橋を慰める。
「ご、ごめん。だけど泣くことはないだろう」
「だって楽しみにしていたんだもん」
涙を拭う水橋。
もしこんな姿を他の誰かに見られたら俺はどうなるだろう。
そう思いながら俺は水橋が泣き止むようなことを考える。
だがいい案が思いつかない。
果たして水橋を泣き止やませるような打開策は見つかるのか!
続く